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バリ日記9日目(1/2)

2016年9月9日金曜日。バリ滞在9日目。前夜、夫と喧嘩をしたので(理由は忘れた。たぶん、すっごくくだらないこと)、一人で過ごすことにする。この辺りは、一人でほっつき歩いても楽しいんだい。

カメラと水と財布をバッグに入れて出発。向かうはバリのビーチだ! なぜか。バリに行く前に読んだ山田詠美さんの『熱帯安楽椅子』のビーチのシーンが美しかったから、見に行きたかったのだ。作品中のビーチはスミニャックという別の場所だったし、時間帯も夕方だったけれども。

ただ、ビーチには一人で行くなと夫に言われていた。かなり年上の夫だからか、ときどきこの人は、おかーさんみたいなことをいう。ビーチにはバリ人ではなく別の島から来たドレッドヘアの悪い男がいるから、危ないというのだ。

でも、ガイドのワヤンから、この辺には観光客をターゲットにした凶悪犯罪はないとも聞いていた。せいぜいが、スマホを掠め取るくらいだと。なので、心を強くして出かけることにする。なにせ、夫とは喧嘩中だ。

じりじりと照りつける日差しの中をペタペタと歩いてビーチに向かう。もしビーチがきれいだったら、宿に戻って水着をとって泳いでもいいなと考える。

ところが、ついたビーチにはゴミがいっぱい。場末感が漂っていた。あらーーー? そして、本当にドレッドヘアの男がいた! しかもいっぱい。
「ジャパニーズ?」
「ハウアーユー?」
むちゃくちゃ大勢に話しかけられる。やばい。何か売りつけられる。か、何かやばいことに巻き込まれる! 夫から「ビーチにいる悪い男は、自分の島ではしないような悪いことをする」と聞いていたのであった。

いや、別に極悪な顔はしていない。むしろ人懐っこい。ただ兄ちゃんたちは、「チャーンティック!」としつこくいってきた。「これはチーャンティックというものを私に買わせようとしているのだ!」と思った。やばい。私、物売り、超苦手!

ビーチから早足で退散し、ホテル街の道に戻る。歩きながら「チャンティック」の意味を急に思い出した。何かの小説に書いてあったのだ。それは、美しいとか、かわいいとかを意味する言葉だったはずだ。女・アラフォー、ビーチで兄ちゃん達にかわいいとか言われちゃったよ。ぜーったい、誰にでも言っているのだろうけれど、そう言われて悪い気はしない。道端でむっちゃ顔を緩ませる。そして、ここにも書いておく。むふふふふー(おめでたいのです。)

いい気になって、後で夫にも「ビーチでチャンティックって言われちゃったもんねー」と自慢した。そしたら、すごく叱られた。おかーさんみたいだった。

いや、そんなことがバリのビーチを見る目的ではなかったはずだ。もっときれいなビーチはないのか…… そして思い出した。泊まっていたタンジュンベノアという地区は半島だったはず。ものすごく小さい半島だったから横切れるかも!

ということで、反対側に行ってみた。たどり着いたのはペニンシュラホテルの前の静かなビーチ。物売りやドレッドヘアの兄ちゃんは皆無だ。小さな子どもが二人とお母さんらしき二人がゆっくりと水遊びをしている。地元の人らしき、質素なみなりの老人が、木の下に座ってじっと海を見ている。

白い砂浜、青い海……とは言えないけれど、青い空が静かな水面に写り、のどかでいい感じ。空気は暑くて動かない。サンダルを脱いで足をつけたら、ちょっと涼しくなるかな……

そう思って裸足になった途端、ギャー! ヘビがいる! 海の中に、ヘビがいる!! ウミヘビがいたのだ。魚をくわえて泳いでいた。初めて本物を見た。

バリ・ヒンドゥーの世界では、山には神々の住み、海には魔物がすむと言われているらしい。無理にビーチで遊ぶのはやめておこうと思った。

つづく 

▼ウミヘビ。初めて本物を見た。


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