バリ日記8日目(3/3)

いよいよクアッド(4輪の全地形対応車)に乗ることに。2人乗りでも1人乗りでもいいらしい。運転に興味がないから、私は迷わず夫の後ろに乗ることにする。

集合場所には、私たちを含め5組のカップルが集まった。足が汚れるらしく、半ズボンになるか、ズボンを膝上までたくし上げてレンタルの長靴を履く。ヘルメットを被り、半ズボンに長靴を履いて、みんな小学生男子みたいだ。

2組のカップルは、一緒に旅行しているらしき中東系。男性たちがかっこいい白黒のカフィーヤを巻いていたから、パレスチナ、ヨルダン、レバノン、シリアあたりの人かもしれない。お金持ちなのか、一人が「俺はクアッドを4台持ってる。手入れの状態がわかるぞ。だから俺に一番にクアッドを選ばせろ! 長靴もだ!」とクアッドのインストラクターに詰め寄っていた。おいおい、駄々っ子かいな……。

長靴を自分で選ぶことになるが、サイズが大きいものしか見当たらない。駄々っ子一味を除く3組は、なんとなく「こっちに小さいのがあったよ」等と優しくしあう。駄々っ子がクアッドを選び終わったので、私たちは譲り合ってクアッドに乗り込む。

1組はパキスタン人夫婦。もう1組は香港人カップル。唯一女性でクアッドを運転したのは、香港人カップルの女の子だけで「すっごい勇気だねえ」と褒め讃える。みんなバリが大好きになったようで「バリって最高じゃない?」と意気投合。おしゃべりしたり、写真を撮り合ったりして、出発を待つ。

駄々っ子がようやくクアッドを調整し終わったので、インストラクターについて出発。私たち、香港人の女の子、男の子、パキスタン人夫婦、駄々っ子カップル、駄々っ子一味カップルの順で走ることになった。

インストラクターがギアのモードを「1にして!」「2に変えろー」などというので、復唱して後ろに伝えながら運転する。しょっぱなからぬかるみを爆走することになって、悲鳴を上げたり歓声を上げたり、ついでに後ろの写真を撮ったり。香港人カップルは写真を撮られ慣れているようで、いちいちポーズがめちゃうまい。感心する。ものすごい美男美女だったので、モデルだったのかもしれない。

クアッドは車で入れない道を走る。農道のあぜ道を走りながら、明るいオレンジ色の夕日の中で田んぼ仕事をしている女性を見る。クアッドで観光客がはしゃぎながら爆音を上げる様子は、きっともう日常の光景なのだろう。くたびれた風情で、こちらを見向きもしないで働き続ける。

ガイドのワヤンが教えてくれたことを思い出した。観光客向けの施設などを村で受け入れるかどうかは、村人が総出で相談して決める、と。クアッドが騒音を上げて村中を走り回るということを、村人たちはどこまで想像できていたのだろうか。ちょっと申し訳ない気になる。

途中、森の中の民家の脇で、休憩をした。そこに住んでいる住民から飲み物を買った。子どもたちが数人いて、カカオの木から実を落としている。細くて賢そうな犬が3匹いる。一番下の4、5歳と思われる男の子は、最初は服を着ていたのに、いったん家に引っ込むと、なんだか怒りながら全裸で走り出て来た。なんだかのどかで笑ってしまう。

年かさの男の子が、カカオの実を「プレゼントだよ」と渡してくれた。後で割って、中を食べてみようと思ってありがたくいただく。香港人カップルが撮影に忙しそうなので、パキスタン人夫婦といろいろと話す。彼は三菱系の企業にお勤めで、オマーンで新婚生活を始める前にバリに来たらしい。

それまでパキスタンについて知っていることといえば、BBCやCNNのニュースで見たことのみ。「パキスタンでテロ」「パキスタンで名誉殺人(意に沿わない結婚を拒否する女性や自撮りで自分の姿を晒す女性を、イスラム法に法って殺す)」「10歳の少女が花嫁に」みたいな内容ばかり。その結果、「パキスタン人男性って怖い」「パキスタン人女性には自由はない」と正直思ってしまっていた。けれど、初めてあった本物のパキスタン人男性はそんなことをしでかしそうにもないし、奥さんはのびのびと楽しそうに会話していた。

もちろん、この数十分の出会いですべてを推し量れるものではない。彼らは「平均的なパキスタン人」でもないだろう。けれど、彼らとの出会いが、私たちの中のパキスタンの印象を大きく変えたのは事実だ。旅人は、その国の代表者でもあるんだなと感じて、実が引き締まった。私が変な日本人像を撒き散らしていなければいいんだけれど。

そんなことを考えながら再びクアッドへ。さすがの全地形対応車だけあって、ひっくり返ってしまうんじゃないかと思うような悪路も無事に通り過ぎ、クアッド体験は終了。パキスタン人夫婦と香港人カップルとはFacebookで写真を交換することにし、名前を教えあった。SNS、すごい。(でも、けっきょく写真はぶれぶれのものばかりだった。クアッドの振動、おそるべし。)

帰り道は、ガイドのワヤンとおしゃべり。バリとインドネシアの間にある緊張関係、政治家の汚職の話、バリの大規模開発への反対運動、自動車は高くて買えないのでバイクをローンで買うといった現地の人の暮らしなど、「文化を大切にしていて素晴らしいね」だけでは済ませられないバリの現在の話も聞く。

またバリに行く時には、連絡をとるよ約束してワヤンとお別れ。チップを渡したら「これでSIMカードが買える」と喜んでいた。

人との出会いが旅をおもしろくする。そんなことを感じた1日だった。

9日目につづく

▼カカオの木

▼ポーズがうまい


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FelixSayaka

バリ日記 (2016年9月1日〜12日)

2016年9月1日から12日までのバリ日記を綴っています。
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