Q2:スタッフから「有休を使わせてください」と言われたら拒否できるのか?

A:有給休暇(有休)は労働者であるスタッフの権利なので、取得することそのものへの拒否はできません。ただし、状況によっては有休取得の時期をずらすことは可能です。

<解説>
オーナー、店長の皆さま。
あるとき突然、店舗のアルバイトスタッフから

「有休を使いたいんですけど…」

と言われて、ドキッとしたことはありませんか?また、思わず「それはムリだよ!」「アルバイトに有休なんかないよ!」と拒否をしてしまったことはありませんか?実は、そうした対応には多くの問題が含まれていることがあるのです。今回は、有休にまつわる対応について確認していきましょう。

そもそも「有休」というと、一般的には「年次有給休暇」のことを指します。年次有給休暇(以降、「有休」で統一)は本来、労働の義務がない日(休日)以外にその義務を有給で免除することで、身体や心の休養を取ってもらう…という意味合いがあり、労働基準法で保障されています。

有休は、店舗や本社など事業所に入社して6ヶ月後、ちゃんと出勤していれば、具体的には8割以上の出勤率で権利が自動的に発生します。その後も、入社後から1年6ヶ月、2年6ヶ月…といったタイミングで、条件を満たせば発生します。これは、正社員、契約社員、パート・アルバイトなど、名称に関係なく採用されて働く方全員が対象です。

発生する有休の日数も労働基準法で最低ラインが決まっています。例えば週30時間以上、あるいは週5日以上勤務している場合、入社後6ヶ月は10日で、その後、1年ごとに条件を満たせば11日、12日、14日…と増えていきます。ただし、週の勤務日数が短いスタッフの場合は、発生する有休日数もその分少なくなります(図表参照)。また、有休が発生後、その権利を使える期間は2年なので、2年経っても消化できなかったものについては、その権利が消滅します。

有休は、そうして法律で保障された労働者の権利ということもあり、通常はスタッフのタイミングで消化することになります。そのため、有休の権利を持つスタッフから「この日を有休にしたい」と言われた場合、その日がそのスタッフにとってもともと休日の予定でない限り、オーナー、店長は拒否することはできません。たとえ、有休を取る理由が「友達と遊ぶため」であっても、です。有休を使うことに、理由は関係ありません。

しかし、店舗がクリスマス、年末などの書き入れ時、あるいはスタッフシフトが満足に埋まっていない日に「有休で休みたい」と言われたり、同じ日に出勤するスタッフ複数名から有休消化を申し入れされたりすると、店舗の運営ができなくなってしまいます。そうしたときには、有休の取得時期を別のタイミングに変更してもらうよう、話すことができます。これを「時季変更権」といい、オーナー、店長に許された権利です。ただし、慢性的に人が足りていないから、とか、年中忙しいからどの日も有休は使えない、というのは、時季変更権の理由にはならないため注意が必要です。


それでは、実務的にはどのように有休の対応を行っていけばよいのでしょうか。

まず、スタッフの有休がいま何日権利として発生しているのか、ということを確認することが必要です。通常は入社後6ヶ月経過し、かつ、8割以上の出勤で初めて発生することになります。また、図表のとおり、シフトに入っている度合いで有休の発生日数も異なります。それらを正しく把握することがオーナー、店長には求められます。

そして、原則はスタッフが申し入れてきたタイミングで有休を取れるよう、店舗側が努力をする必要があります。そのスタッフの代わりに他にシフトに入れる人が本当にいないのかどうか、一人減ることで本当に運営が立ち行かなくなってしまうのかどうか、を具体的に検討し判断することになります。ただこれは、有休を取得するスタッフにできる限り早めに申告をしてもらう(1週間前〜1日前申告などをルールとして決めておく)、代わりに出勤できるスタッフを探す努力をしてもらう、さらに業務の引継ぎが必要な場合はしっかり行ってから休んでもらう、といった協力を事前に就業ルールなどで取り付けておくことで、店舗側の負担は多少軽減できるでしょう。

こうした努力を講じても店舗運営に支障をきたすと判断した場合には、時季変更権を使うことになります。ただこれも、有休を申し入れてきたスタッフに対し代わりの日や時期を指定する必要はなく、単に「その日はこういう事情だから有休は難しい」と伝えればOKとされています。

有休が本来発生していることをオーナー、店長が知りながら、それを隠してスタッフに伝えない…といったことをしていると、あとで大きなトラブルに発展してしまうこともあります。それぞれの権利を有効に行使行できるよう、普段からスタッフとの就業ルールを定めておき、こまめにコミュニケーションをはかっておきたいものです。


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