#234 閉ざされた心 

卒業式後、ラグビー部での3年生を送る会も速やかに終わり、解散となった。
監督も口には出さなかったが、どこか素っ気ない感じがした。
問題を起こし、停学になった者が出た影響で余韻に浸る間もなく、ひっそりと部を去って行く感じがした。

数日後、僕らのラグビー部同期と保護者が集まってのお別れ会が夜に市内の飲食店で行われた。
保護者テーブルと僕ら同期テーブルに分かれた。最初は他愛もない話でみんなで談笑していた。そのうち、今後の進路の話になった。
マネージャー含む同期13人のうち、ラグビー推薦で進学する者が4名。一般受験で大学合格して進学する者が3名。そして浪人及び未定の者が5名。僕はその時、気まずさや羨ましさや悔しさと言った様々な感情が入り乱れていた。
お別れの会の和やかな雰囲気に馴染めず、口を閉ざしてしまった。何を話したら良いのか自分の感情をコントロールする事が出来なくなり、終始無言で俯いたままでいた。みんなが話している中、僕は1人その様な態度を取っていたので明らかに異質な空気を発してしまっていたと思う。
自分でもこの態度は良くないと頭では分かっていながら、どうする事も出来なかった。
本当はみんなへの感謝だけでもきちんと伝えるべきだった。
空気を察した同期のお父さんが僕に声を掛けてくれ、「大怪我からの復帰良く頑張った。来年、大学受かったら合格祝いを必ず開催するから頑張って!」と励ましてくれた。
僕は自己嫌悪と嬉しい気持ちが複雑に絡み合い、心の中では泣いていた。
終わりの時間が来て会が終わり、解散となった。お店の階段を降りて、出口に向かっている時、必ず早稲田に合格してラグビー部に入部してやると強く自分自身に誓った。

僕は大怪我から復帰し、花園に出た事で有終の美を飾りラグビーはやらないのだろうという周囲からの空気を感じていた。そう思われているのが悔しくて、そうではない事を分からせ様と思っていた。僕にとっては花園での復帰戦が再スタートを意味していた。
僕は浪人生活への覚悟を決めて帰路へと向かった。

続く…

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?