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結婚して子供を産むのが幸せ?できることを発見させてくれた 映画「ソニータ」感想

人の救われるドキュメンタリー映画だった。迷える日本人アラサー男女も救ってくれるかもしれない。
基本的には、ソニータというタリバンの迫害でアフガニスタンからイランへ逃げてきた難民の女の子が主人公だ。彼女の母は9000ドルで売ろうとする。16歳の花嫁として。これは児童婚という習慣で、母自身ももっと幼いころに売られた。16歳、というのも出生証明がないので定かではない。母も映画内で60歳くらい、と言っている。9000ドルは、ソニータの兄の結婚に使われるという。

予告編の時から心を掴んで離さなかったので公開早々に見に行った。
映画オフィシャルサイト http://unitedpeople.jp/sonita/

・料理教室に行って嫁に行くことが幸せだと信じているのは日本人女性の何%?
"料理を習って お嫁に行きなさい"
ソニータの母が言う。児童婚の言葉なのに、現代日本と変わらないことに戦慄を覚えた。戦争の恐怖を味わい、イランへ逃れ、保護施設で教育を受けるソニータは、EMINEMでラップと出会い、自分の思いを音楽で表現し始めた。同じく売られて結婚した友達の思いを聞いて、その場でラップにする。力強い音符。

(日本語字幕版)

(元のバージョン、コメントに注目)
https://youtu.be/n65w1DU8cGU

彼女の家族が生きるのは基本的には家族がいなければ生きていけない世間のだと思う。お母さんはイランではなく、アフガニスタンに残っている。
ソニータはお母さんに勉強がしたい、ラッパーとして生きたい、結婚はしたくない。と言う。そんなのが幸せだとは認めないお母さん。結婚して家庭を持つことが一人前、ソニータのお兄さんだってその規範の中にいる。

・従うべき規範の最小単位は家族なのだろうか?
ソニータは「(児童婚はしたくないけど)命を授かった恩にどうやって報いたらいいのかわからない」と歌う。
しかし親の期待を全部実現するのが子供の義務なのか?
結局、この家庭第一の思考回路、規範については自分をどこに位置づけるかがついてまわる。
日本でも、変わらない。家庭を持って一人前で、老後は子供に面倒を見てもらうのが当たり前なのか?

曲を作って、イランでレコーディングしようとしたソニータは女性だから、歌うことが許されない。スカーフを人前でとることも許されない。
最終的にソニータはこのドキュメンタリーの監督の手助けを受けてラップのMVをYoutubeで公開し、米国で奨学金をうけて学ぶことを実現する。夢を追うソニータが、パスポートを取りにアフガニスタンの首都カブールに行くシーン。出てきて11年経っても、爆発も銃撃も止まない現状。そんな国に家族を置いて米国に出る彼女に葛藤はあったはずだ。
しかし、彼女が強いな、と思うのは児童婚を告発するアクティビストとして、ラッパーとして生きることに迷わないこと。それは音楽の才能もあるし、言葉にはされていなかったけど「彼らは彼らで生きていけるはずだ」と言う家族への信頼があるからだと思う。

家族への信頼があればこそ、自分の道を進むことができるのではないだろうか?

(以下は予告や他のメディアで見なかったネタバレです)

・誰かを自分の正義で救うこと
Youtubeを見て、支援団体が動き、奨学金を学校が出し、「あなたたちの人生に幅と豊かさを与える存在です」と受け入れる。そんなことができる学校が今日本にどれだけあるだろうか。アメリカを礼賛したいわけではない。そもそもアフガニスタンが戦闘状態なのはさあ,,,とか色々あるし。
しかし、「家族を持って家庭を守る」という手段以外にも、「世界を守り、次に伝える」手段はあるのではないだろうか。例えば育児支援団体への出資、フリースクールでのボランティア、教育奨学金への出資...。
独身で子供もいない私は正直にいうと、この先の人口が先細るであろう日本に対して、私は人口生産では貢献できないだろうと考えている。そのことが原因で思い悩んだ時期もあるし、今もなんとなく親や”世間”に対して罪悪感を持っている。
でもそれは「家族」という単位を自分の考え方の規範の最小単位に持っているからではないのか。もっと広い単位で人を守ることは可能だし、テクニカルにそれが可能な社会になっている。そもそも子供を産むとか家族を養うなんていう機能は産まれながらにして持っていない人もいるし、身体的理由ではなく社会的理由で持っていない人も多いだろう。
  持てる人が持っているところを提供すれば良いのだ。
  
  勝手にそんなことを考えて、勝手に前向いて生きよっかなという気分になった。
  彼女はこの先、どんな活動家になるのかなあ。


<さらにメモ>
・彼女とその家族について、母も喜んでいると言う旨のインタビューが公開されていてホッとした
「『ソニータ』の監督が語る、映画以降のソニータとイランの音楽業界事情」
https://i-d.vice.com/jp/article/kzw939/see-the-world-through-the-eyes-of-an-afghan-teen-who-raps-about-forced-marriages

・米国でのインタビューで彼女はその強さはどこからきたの?と聞かれて、周囲のサポートがあったからだ、と答える。
https://youtu.be/hvEMtDbaBSc?t=8m47s

日本だって、女性の参政権は1945年から実現したものだし、男女雇用機会均等法は1986年から実現したものだ。いつの時代も、社会を進化させるために活動した先人がいる。
知り合いの言葉でとても好きだけれどなかなか実現できていないものがある「自分が生きたい未来の形を、自分が実践する」ということだ。作りたい未来のためには誰かが実践しなければならない。

・MIYAVIとの対話。なんかこう、双方の強さに圧倒される。あと、SONITAがちゃんと英語話せるようになってることに感動する。
https://www.youtube.com/watch?v=zD3UBTeTv48

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