136.コメンテーター

「セントピーターズバーグ」
 たぶん、アメリカのどこかにある田舎町なんだろう。この付近で唯一の大学があって、それは青い空と緑の芝生の中に時計塔が建っているようなキャンパス。ここで学ぶ若者の中に「ニューヨークに出てチャンスをつかみたいんだ」という青年がいる。彼は同級生の恋人と別れてグレイハウンドバスで旅立っていく……なんていう、懐かしのニューシネマの舞台みたいな町を想像してしまう。
 が、これ実は、ロシアのサンクトペテルブルグの英語読みなんですね。
 セントピーターズバーグは「トム・ソーヤの冒険」にも出てくるけど、それは架空の町。実在する例としてはフロリダ州にある。が、ここはサンクトぺテルブルグから命名されたというから、やっぱり出自はロシアなのだ。
 ロシアの「サンクトペテルブルグ」じゃ、青い空や芝生や青春映画のワンシーンは想像しない。学生のカップルがいたとしても、きっと彼らはなにか思想上、政治上の問題など抱えているに違いないではないか。ロシア語特有の重々しさ、とっつきにくさがそう思わせるのだ。
 同じ言葉でも、呼び方が変わるだけでイメージがこんなに異なる。

 そこで、「コメンテーター」なのだ。気になっていたのだ。いつ頃からか、各番組はゲストのことをこう呼びたがるようになった。
 しかしそう呼ばれるわりに、コメンテーターはスタジオでVTRを見てただ笑っているだけだったりする。おいおい、コメントはどうした? それって「ゲスト」でいいんじゃないか? 
 そしておなじく「パネラー」は「解答者」で、「MC」は「司会」でいいんじゃないかなぁ?

【モンダイ点】
◎そんなに重々しくしたいのなら、すべてをロシア語読みにしてみたら?

(ステラ/2000/12/6)

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