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元号って何だ?

今まで、ほとんどの人は元号に興味を持っていなかった。が、「2019年に平成が終わって、新しい元号になる」というニュースで、急に元号に関心を持ち始めたのだ。
当然のことながら「早すぎる男」であるぼくは、すでに2015年「元号」に注目して、本を出していた。その頃はまだ、だ~れも元号に興味を持っていなかったので、あまり売れなかったけどね(世間で元号が話題になると、この出版社は急に「電子書籍にします!」と言った。素晴らしい)。

この本は、ぼくのアイデアを漫画家のもぐらさんが半分ほど漫画にしてくれた。世間的には漫画の本という認識だろう。にわかに元号が注目され、新聞に「元号を理解するための本」の特集が組まれると、難しい専門書に混ざって、この本も良書として推薦されていた。嬉しかった。

なので今回、小学館から「藤井さん、元号の本を書きませんか?」というお話があった時、「前に一冊出してますから、だいたいのことはわかってますよ」と、ぼくは珍しく余裕で応えたのだった。
そこで書いた本がこれ。

改元に向けて、元号関連本がじゃんじゃん出た。今も出ている。が、ほぼそのすべてが「247の元号を最初から順に紹介して、改元の理由や元号の出典を解説する」というもの。実はぼくが以前に出した元号本も、基本的にはそういう構成だった。だが、その本を書いたおかげで、
「このやり方では、読者は退屈する」
ということがわかっていた。

だってね、普通の人が知っている元号なんて、明治、大正、昭和、平成、それに応仁とか、建武とか、元禄とか…、せいぜい十個くらいしかないのだ。本を読んで「これも元号だったのか!」と気づくものを合わせたって、二十くらいだろう。その他のほとんどの元号はまったく知らない言葉なのだ。それを二百ばかりも、えんえんと解説されてもなあ……。
なのでこの本では、全247元号の簡単な解説は巻末に集めた。それよりも、珍しい元号、面白い改元理由、なんでこんなに元号が多いのか、なぜ権力者は改元したがるのか?…というきわめて人間臭い側面に注目したのだ。

「亀改元」「メルヘン改元」「イチャモン改元」などのネーミングは、ぼくが勝手に作ったもの。編集者の感覚というのはスルドイもので、
「面白いから、それを前面に出しましょう」
と言う。すると確かに、この本を取り上げるメディアはそういう言葉に反応するのだった。
元号は中央(京都とか江戸)に起因するものと思っているだろうが、意外に全国各地に「元号ゆかりの地」がある。今回、それを一章にまとめた。こういう視点で元号を扱った本は他にあまりないと思う。ぼくの「地方好き」(ということは中央コンプレックス)が出ているんだろう。

ところで、この本はまだ「令和」が決まる前に出した。でも、増刷時に新元号を入れればいいようには書いてある。もう少し売れてくれると、「令和入り」に改訂できるんだけどなあ……。

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