名前のない物語〜はじまり〜
この国が砂に埋もれるようになり、暑苦しい日々が当たり前になったのは2,300年ほど前からだ。
日中の暑さと極寒の夜に耐えられないか弱い者は簡単に命を落とす。激し過ぎる温度差だけではなく、砂の下に身を隠して人肉を狙う巨大モグラや愛らしい姿で見る者を魅了し、毒牙にかける狐、そして盗賊。
オアシスとオアシスを移動する際、死人が出ない方が珍しい。
砂と恐怖に囲まれた国にも名前はあったが、国民や外国の者は皆こう呼んでいる。
「シン-汚れた国-」
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