私でいいの?

「みさきさん...ですか?」
「ハルトくん!」
「はい!今日はよろしくお願いします!」
初めてのレンタル彼氏で指名したのは、爽やかな笑顔と182cmの高身長が魅力のイケメン、ハルトくん。
写真よりも実物の方がカッコいい。
今日は、2時間のデートプランで申し込み。
19:00-21:00まで。
2時間でデート代含めて、2万円なくなるのは痛いけど、こんなイケメンと一緒にいられるなら、お金を払ったかいがあるかな?
「じゃぁ、バーに行こっか!」
「うん!」
事前にハルトくんに伝えていたように、私のお気に入りのバーでお酒を飲みながら、ゆっくりデートをする。
いつもの日常に、華やかさがプラスされるだけだけど。
私には、たまのご褒美。
「みさきさん、こっち」
「あ...ありがとう」
バーへ向かう途中、乱暴に走って来た自転車がいた。
その自転車から守ろうと、ハルトくんは腕をひいてくれた。
大きな手...
「大丈夫?ぶつからなかった?」
「う、うん...」
凄い。最初からときめいてる。
しかも、いつの間にか繋がれた手。
守るように、ぎゅって。
こんなことされたら、好きになっちゃう人はいるんだろうなぁ...
「みさきさん、こんなに綺麗なのに!付き合える人が羨ましいな!」
「ほんとー?お世辞でも嬉しい!ありがとね!」
バーに入って、小一時間。少しずつお酒が回り始めて、いい感じ。
ハルトくんは、お酒を飲んでいる間もずっと手を繋いでくれるの。
嬉しいなぁ、こんなデートがしたかったの。
体だけの関係もさっぱりしていて好きだけど、こうやってときめきを感じるデートは久しぶり。
たまには高いお金を使うべきね。
「みさきさんといると、癒される。なんだろう...男心を分かってるよね、本当」
「え...そう?そんなことないよー」
本当に男心は分からない。
だって、告白されて付き合っても、振られてばかりだもの。
少しは水商売の時の接客スキルが役に立ってるってことかな?
「本当に...」
私の目を捕らえた。繋いでいた手を強くギュっと握ってくる。
私とハルトくんは、見つめ合ったまま。
なになになに?!
この状況、凄くドキドキする!
「あっ...タバコ吸うね」
見つめ合うドキドキに耐えきれなくて、思わずタバコに手を伸ばした。
こんなイケメンに見つめられたら、何も考えられなくなっちゃう!
「みさき」
「...?」
ハルトくんから視線をそらして、タバコに火をつけようとした。
そしたら、いきなり呼び捨てされて。
顎をくいっとあげられて、唇が重なった。
え...?て思った。
ハルトくんは、レンタル彼氏で。
今日は初めてのデートで。
イケメンと手が繋げればいいかなぁなんて思ってたの。
それなのに...バーには他にもお客さんがいるのに。
唇が重なり合う。私の反応を確かめるように。私が受け入れているのか気にしながら、ゆっくりと舌の絡まない、ついばむようなキス。
「ハルトくん...?」
唇が離れて、少し間を置いたあと、どうして?という意味を含めて、名前を呼んだ。
「みさきともっと一緒にいたい...ダメ?」
私の手をぎゅっと強く握って、首を傾げて、じっと見つめてくる。
なになになに?
凄い営業!
こんなことされたら、好きになっちゃう...
「...ごめん、私、もうお金持ってないよ」
本当の話。
2時間以上、レンタルする気はない。
私自身の生活だってあるし。
「...プライベートだよ、みさきとなら」
そう言って、私の手にキスをした。
そしてまた、じっと見つめる。
「二人きりになれる所に行こう」
ハルトくんは、スタッフを呼んでお会計をお願いした。
私はタバコを吸いながら、お財布を開ける。
「出すよ」
「え...でも」
「いいから」
そう言って、ハルトくんは伝票を自分だけで確認して、支払いを終えた。
これって営業?
営業だとしても、嘘だとしても、今日だけでも。
ハルトくんの女としていられるのなら、幸せだと思った。
「行こう!」
ハルトくんは、にこっと微笑んで、爽やかな感じで、私の手を引いて、バーを出た。
幸せ。
この一瞬の嘘の女であったとしても。
ハルトくんと一緒にいるこの時間は、現実だから。


*****
(セックスシーンは面倒なので省略w)
*****

「...ん」
「おはよ」
目を覚ますと、ハルトくんが微笑みながら、私の頭を撫でていた。
程よく着いた筋肉のある腕を枕にして寝ていた。
どうしてこの人は...こんなにも女性の希望を叶えるのが上手なんだろう。
「おはよ」
私も微笑んで、挨拶をした。
「可愛い」
「ん...」
目覚めのキス。柔らかな唇が、私をとろけさせる。
舌を使わない、ついばむだけの優しいキス。
そう、こんな朝を迎えてみたかったの。
「!」
優しいキスがだんだん激しくなって来た。ハルトくんの舌が私の唇をこじ開けて、荒々しく口の中をかき回してくる。
次に私の足をハルトくんの両足で抑えて、固くなったモノを擦り付ける。
「みさきが可愛いから、また勃っちゃった...」
ハルトくんは私の上に覆いかぶさって、耳元で囁いた。
そして耳に舌を這わせ、私の体を犯し始める。
私は獣なハルトくんを抱きしめて、ただ受け入れる。
こんなにも私の性欲を満たしてくれて、こんなにも優しく愛してくれる人は今までいなかった。
嘘でもいい。営業でもいい。
それでも、私が感じたこと、思ったことは現実だから。

「みさき、俺と付き合ってくれる?」
「え...?」
朝の激しいシーンを終えた後、ハルトくんに後ろから抱きしめられながら煙草を吸っていたら、突然の言葉に思わず呼吸が止まるかと思った。
「一緒に話してて楽しかったし、みさきと体の相性もいいし。みさきが好きだと思った。ずっと一緒にいたいって思った。
付き合おう」
「...うん!」
ハルトくんの言葉を聞いている時、煙草の存在を忘れていた。
後ろから抱きしめていたけれど、体の向きを変えて、私の目を真っ直ぐに見つめて、付き合おうと言った。
断る理由はなかった。
ただ、ハルトくんと一緒にいたかった。
たったの二時間話しただけだけど、運命の人を見つけた。
何十年先も、ハルトくんの隣で笑っていたい…(#^^#)

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