少年野球傷害シリーズ TFCC

 三角線維軟骨複合体(triangular fibrocartilage complex:TFCC)は手関節小指側に位置する複雑な構造であり、手関節の安定性に寄与する。TFCCは手関節の荷重伝達の20%程度を担い、手関節の複雑な動きを可能にする一方で、この箇所が外傷や加齢によって痛めると、手関節小指側の痛みや手のひらを甲側に返したり、手のひらを上向きにしたり、する動作の時にぐらついたりする。
 TFCCの構造は主に円板状の三角線維軟骨(triangular fibrocartilage:TFC)を中心として、手のひら側、手の甲側の関節包(遠位橈尺関節ならびに尺骨手根間関節)、半月板類似体(meniscus homologue)、尺側側副靱帯(UCL)、手のひら・甲側の橈尺靱帯(RUL)、そして尺骨月状骨、尺骨三角骨靱帯(ulnolunate and ulnotriquetral ligament)へと細かく分類されている。一般にこれらの構造は、中心に位置する関節円板と、その手のひら側、手の甲側を対症的に取り囲む橈尺靱帯として解釈されていることが多い。
 浅層線維は、掌背側における遠位橈尺関節と手根骨を被覆する関節包、深層線維は橈骨掌尺側縁から、尺骨茎状突起の基部を通り、尺骨茎状突起にらせん状に付着する「橈尺靱帯」に対応している。
 このような交叉関係は膝関節でいえば前・後十字靭帯が同じく交叉関係にある。回旋可動域と制動性の相反する機能に合目的な構造をしている。手関節も同様に交叉関係の線維方向をもつことで回旋可動性と制動性の両方の機能を可能にしている。

引用参考文献
 坂なおみ他):TFCC損傷、臨床スポーツ医学、Vol.40、No.5(2023-5)、538-543

感想
 少年野球選手が手を怪我して、クリニックに通うことは少なくなってきたように感じる。道具の進化、現場での対応、基礎知識の充実などこれまでの現場トレーナー、メーカー、医療従事者の努力、行動の結果だと思う。今後もTFCCであったり、有鈎骨骨折であったり、スポーツ現場で起これば即時に対応できるように、常に知識をupdateしておきたい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?