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~伏在神経・内転筋管(Hunter管)に注目して!~

膝の圧痛点
 成書より前面、内側、外側、後面の4方向を以下に掲載します。

膝前方の圧痛点


膝内側の圧痛点


膝外側の圧痛点


膝窩部の圧痛点

 この中でも、一番重要視しているのが、内側の大内転筋腱周辺です。


伏在神経が通る内転筋管がある大内転筋腱周辺

今回は、伏在神経が通る内転筋管(Hunter管)についてまとめてみます。

伏在神経由来の疼痛
 伏在神経は、大腿神経から分枝する知覚枝であり、大腿動静脈と並走してHunter管(内転筋管)に入り、さらに遠位では、膝蓋下枝、内側下腿皮枝にそれぞれ分枝して、膝前内側および下腿内側の皮膚知覚を支配する。Hunter管は、前内側を内側広筋、後方を長内転筋、大内転筋、内方を縫工筋によって構成されている。さらに、Hunter管の前方には、内側広筋と大内転筋の腱部の一部が合流し腱膜となる広筋内転筋板が存在し、同部を伏在神経が貫通するため、絞扼性神経障害を呈しやすい。
 黒部らは、伏在神経膝蓋下枝の走行として、鼠経部ですでに分岐し、縫工筋腱を貫くタイプ、Hunter管の近位で分岐し縫工筋を貫くタイプ、膝蓋下枝がHunter管を通過した後で分岐し縫工筋の上を通過するタイプの3つに分けられたことを報告している。一方、広瀬らは、膝前内側部痛と同部の知覚鈍麻を呈し、圧痛が大腿脛骨jtの内側関節裂隙から近位10㎝付近に認め手術に至った例を提示しているが、内側広筋と縫工筋間に薄い被膜様の筋膜を認め、同部の切開にて症状の消失、軽減に至っている。
 これらの報告からわかるように、伏在神経膝蓋下枝単独で絞扼性神経障害を呈する例も存在し、症状が膝前内側部痛であることから、他の膝関節痛との鑑別が必要である、治療として収縮を抑制するためのアライメント調整が必要である。また、縫工筋自体のストレッチングや大腿遠位部を中心とした縫工筋周囲の柔軟性改善が有効である。さらに、股jtの内外転と膝jtの屈曲、伸展を組み合わせた伏在神経の滑走を行う。

赤点:伏在神経 黒枠:内転筋管

内転筋管(Hunter管)
 内転筋管は、内側広筋と内転筋群で囲まれた領域で、その中を伏在神経と大腿動静脈が走行する。

内転筋管(伏在神経は▼)

 内転筋管の近位端は大腿三角の頂点で縫工筋が長内転筋と交差する場所とされ、

内転筋管の近位端

 遠位端は内転筋裂孔を覆う広筋内転筋板(vastoadductor membrane)までとされている。

内転筋管の遠位端

 大腿神経が最終の筋枝(内側広筋枝あるいは縫工筋枝)を分岐する位置が伏在神経の起始となる。竹内らは日本人の伏在神経の起始を調査した。その報告によると、約90%が鼠経靱帯下縁から広筋内転筋板上縁までの間の上部1/2に起始している。伏在神経は下行膝動脈伏在枝とともに大内転筋腱を乗り越えて下行する。
 伏在神経膝蓋下枝は縫工筋または縫工筋腱部を貫通するか、

伏在神経膝蓋下枝

縫工筋をまわり前方に向かうか、縫工筋下を前方に向かうかに分類されるが、その走行には変異が多い。起始、分枝の高さ、縫工筋との関係は個人差が大きく、また同一個体でも左右で異なることがある。
 伏在神経膝蓋下枝は縫工筋または縫工筋腱部を貫通したり、筋後縁を回るなどの神経障害を起こしやすい解剖学的素因をもつ。また、膝蓋下枝の障害は膝蓋骨部の打撲後や膝jt術後にも発生し、膝jt前方部の主訴の原因となる。
 中瀬は伏在神経ブロックを行う際には内転筋管内に局所麻酔薬を注入し、伏在神経の滑走障害と診断した場合には圧痛点への局所注射を行っている。圧痛点への局所注射は大内転筋腱部、縫工筋と内側膝蓋支帯直上へ行うことが多いが、その際、超音波ガイド下で伏在神経質が下肢の走行する層を意識して注入している。

コメント
 伏在神経は、確実に痛いです!膝関節は、大きく大腿脛骨jtと膝蓋大腿jtから成りますが、大腿脛骨jtの内側が大事です。
 屈曲時に、内側がスムーズにすべり転がり運動、つまり、屈曲時のscrew home movementが起こらないと、可動域制限や荷重時痛に繋がります。
 今回、伏在神経や内転筋管についてまとめてみましたが、膝jtを勉強したい方は、まず内側の筋や軟部組織を整理して、もう一度膝関節の運動学について考えてみてもらえれれば幸いです。

引用参考文献
中瀬順介執):膝エコーのすべて 解剖・診断・インターベンション、日本医事新報社、2020
中宿伸哉:高齢者の膝関節痛の原因、PTジャーナル、医学書院、2021、Vol.55、No.1、P19~25

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