少年野球傷害シリーズ Sever病

疫学 

 Sever病は、1912年にJames Warren Severにより報告された踵骨の骨端症である。本疾患は8~15歳までのスポーツを行う男子に多く発症する。小児1000人あたり3.7人に発生していると報告している。踵骨骨端核にはアキレス腱や足底腱膜が付着しており、骨端核への持続的牽引力や踵への繰り返される衝撃、圧力といった機械的な微小外力により本疾患が発生する。また、肥満と高レベルの活動性が危険因子であると報告されている。
 患者は荷重時の一時的、あるいは持続的な痛みと運動後の踵痛を訴え、ときに踵に荷重を加えないようにつま先重心で歩行する。踵の内外側の疼痛に加え、踵からアキレス腱付着部にまで痛みを訴えることが多い。通常腫脹など炎症はみられない。アキレス腱は硬く緊張し、足関節の背屈制限を認める。成長期の前、あるいは最中に起こりやすく、新しくスポーツを始めたときやスポーツシーズンの始めなどにも発生することが多い。ランニングやジャンプをよくするスポーツ、特にサッカー選手に多いとされている。踵部の内側および外側の圧迫を伴うことにより疼痛が増悪する(squeeze test)所見は、他の疾患との鑑別診断に有用である。
 踵骨骨端核は、男児では7~10歳ごろ、女児では4~7歳ごろに出現し、12~15歳ごろまでに距骨体部と骨性に癒合していく。Sever病では、単純X線像にて踵骨骨端核の不整や硬化、分節化、扁平化などがみられる。しかし、この変化は起立、荷重により惹起される正常所見であり、無症候であっても同様の所見がみられることがあるため、特に有意な異常所見とはいえない。
 一般的に予後は良好で保存的治療が効果的であり、手術が行われることはない。安静や運動制限、冷却、NSAIDs投与なども有効である。また、踵部の補高を加えたインソールを作製することもある。成長期の早期には骨の成長と比較して腓腹筋とヒラメ筋、アキレス腱の延長が遅く、骨端核を強く牽引していることが多いとされており、ストレッチが有効であるとの報告もある。大抵の症例では2週間~2か月の保存的加療により症状の軽減が得られる。

筆者の経験

 2023年1年間で臨床現場やスポーツ現場でSever病と言われた選手が4名いた。野球が3名、サッカーが1名。小学4年生が2名、5、6年生に1人ずついた。決して珍しい疾患ではなく、子どもが、『踵が痛い』と言ってきたら気づいてあげたい疾患である。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?