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冷静と情熱のあいだの「不動産テック」 ~ 攻略難易度3つ その① ~

冷静と情熱のあいだの「不動産テック」ということで、初回は不動産領域をテック化させるにあたり基本的な難しさについて触れたいと思います。

■Summary

・不動産業界はレガシーで遅れているが、それは必然のソモソモ論。このソモソモ論の深い理解がまず大事。

・不動産業界は非日常領域であることが理由で、全産業の中で最も顧客最適化が起きにくい構造になっている。


■不動産テックが期待される背景とその処方箋

「不動産テック」が語られる背景はだいたいにおいて下記かと思います。

不動産会社は紙とFAXが大好きでなんて遅れているんだ!無茶苦茶非効率でなんてレガシーな業界なんだ!、と。なので、ITで切り込んで、プロダクトアウトでこの業界を大きく変革してやるんだー!、と。

で、現状のFACTとしては正しと思います。誰が見てもそうなので。紙は飛び交い、FAXがバンバン使われています。参考までに弊社で調査した業界の紙の多さを物語るFACTです。

但し、そのFACTに対し、「何でそうなっちゃているのか?」のソモソモ論を正しく答えている人がほとんどないように思えます。すると、その処方箋が非常に偏り、ITの組み合わせ方を間違ってしまうのではと思います。

少なくとも、「非効率が好きな人はこの世の中に存在しない」、「不動産業界だけITリテラシーの低い人が集まっているわけではない」と思います。にも関わらずこうなっているのは、「ソモソモ論」であり、必然である、これが私の回答です。水が上から下にしか流れないのと同じように、不動産業界がレガシーな状態になっているのは、なるべくしてなっている、と。それを、切り出しやすい(わかりやすい)不動産業界の”人”にフォーカスし、特殊人物の集まりであるかのように語るのは、若干ミスリードしているよね、ということです。

話がそれましたが、不動産業界を変革する難易度について書きたいと思います。難易度高いから、深い業界理解が無いと芯を食った変革ができないんじゃないか?=「深い業界知識×IT」で業界を前に進ませましょう!ということです。

■不動産業界の攻略難易度3つ ①非日常領域である

まず質問です。①今までに何回住まいを借りたり、買ったりしましたか?②今までに何回外食しましたか?

①の質問は恐らく即答できたのではないでしょか?他方、②の質問はどうでしょう?答えられる人は存在しないと思います。ランチも含めると膨大な回数の外食をしていると思います。

で、この回答に不動産業界が進展しない、且つ顧客最適化が起こらない理由があります。

私がよく例えに出すのですが、飲食店の店主は毎日プロを相手に商売をしています。他方、不動産会社さんは毎日素人を相手に商売しています。それはそうですよね。毎日1日3回必ず食事をし、幼稚園児すら美味しいものと美味しくないものを判断できるなかで商売している飲食店は、私からすると毎日プロを相手に戦ってます。他方、不動産は人生のライフイベントの中で最も出現頻度の低いイベントです。人生80年でたかだか5回くらいしか経験しないわけですから、不動産会社は毎日素人を相手に商売しているのです。

※参考)リクルートIRより出典

そうすると飲食業界と不動産業界がどちらが顧客最適化のスピードが早いか?答えは明らかですよね。日常領域の中でも最も出現頻度の高い(=行く回数の多い)飲食店は顧客最適化が起こりやすくなり、非日常領域の中でも最も出現頻度の低い(=行く回数の少ない)不動産業界は最も顧客最適化が遅れてしまう業界である、と。

また、ここもやっかいなのですが、出現頻度が低いということは、口コミが利きづらい構造になります。いい店を見つけ誰かに教えたくなって教えて「じゃあ、明日のランチはそこに行こう!」になる飲食店と、いい対応してくれた不動産会社さんを誰かに教えても「ふーん。家引っ越さないしね。」で終わる不動産業界です。要は良いサービスを行ってもリテンションが利きづらいので、顧客最適化のインセンティブが働きづらい、ということです。

何が言いたいかというと、不動産業界は顧客最適化が起こらない、起こりづらいのはアタリマエで必然である、ということです。構造上の問題です。なので、不動産業界を他の業界とのヨコ比較をはじめて「イケてない」というのはお門違いであり、顧客最適化の起りづらい(起こる必然性の無い)業界に顧客最適化を仕掛けていくのは少々難易度が高くなり、優先順位は実はそこには無い、ということです。※ここでは競合環境は省きます。飲食回りのスタートアップの競争環境はそれはそれで凄いことになってますよね。

※念のため記載しますが、不動産業界は顧客を素人と思ってんのかー!とか、顧客のために動いてないのかー!とか、そういう話ではなくソモソモ論(業界構造)について書いているので、不動産会社さんが今時そんなことをしている、ということではありません。


以上が不動産業界攻略の難しさの3つのうちの1つです。3つをまとめるとゲキ長文になってしまうので、3回に分けてお届けします。。


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