非対称性2

不動産会社とカスタマの「情報の非対称性」のウソ①

前回に続き、不動産業界で誤って認識されていると思う「ウソ」シリーズの第二弾です。

■Summary
・不動産会社とカスタマの情報の非対称性は存在しない。むしろ、不動産会社が情報劣位になっている。

 

世の中には便利な言葉ってないでしょうか?私が思い浮かぶ言葉に「二極化」があります。「経済は二極化しています」、「お客さんは二極化しているんです」、「不動産業界は二極化しています」。。。ハッキリ言って、セコイですね、何も論じてない、猫だまし(2:44秒ww)です。

不動産業界について語られる時に、未だにこのワードが使われます。「不動産業界には業者とカスタマーの間に情報の非対称性があるんです。(エヘン!)」、みたいな。

が、ハッキリいいますが、少なくとも賃貸業界(借りるという行為)には情報の非対称性なんてもはやありません。(売買はあります。ポケットリスティング問題あるので。売買との比較はまたの機会に。)C向けのポータルサイト運営会社さんが「不動産業界」というザックリ大枠の中で語る時に賃貸業界も混ぜ込んで言われるのをたまに見ます。が、もう1度言います、賃貸業界において、「不動産会社⇔カスタマー」の情報の非対称性なんぞもはや存在しません。ソモソモですが、B(会社)とC(カスタマー)の間の情報の非対称性はどこまでいっても存在し、100%フラットになることはありません。賃貸業界においては、その非対称性はもはや縮まるところまで縮まっており、健全な状態か実現できていると思います。

■ポータルサイトによる情報提供

情報の非対称性が無くなった理由はやはりこれです。SUUMO・ホームズ・アットホームさんなどの大手3社に加え、それらの各サイトから横断的に情報提供を受けるスモッカ、スマイティーなどのアグリゲートサイトの登場により、カスタマーは圧倒的な情報にリーチできるようになりました。尚、業界NO1 であるSUUMOは、2009年に不動産ブランドをSUUMOに統一し(それ以前はバラバラの紙の媒体名)、ネット化にアクセルを踏み込みます。そこから既存各社は紙からネットにシフトし、以降、登場するプレイヤーは当然にネットオンリーで情報提供を行います。2009年から10年経過し、またスマホの登場により、カスタマーは、簡単に・大量の物件情報にアクセスできるようになった、ということです。(余談ですが、マーケットがガラリと変わるには10年要しますね。しみじみこの時間軸のヨミは大事だと思います。)

その結果、現在どれくらの物件数が各社に掲載されているかというと、上位サイトには600万件以上の物件が掲載されています。他方、対象となる母数の空家は約400万件です。(一般的に空家=800万件で語られますが、集客メディアであるサイトの対象件数は400万件とすべきです。800万件には300万件もの腐朽破損したボロ物件が混在しています。)

母数の1.5~2倍近い物件が掲載されている理由は、1つの物件が複数社から掲載されているからなのですが、いづれにしてもマーケットに存在している「住みたい」と思える物件(商品)は、不動産会社がかき集め、ネットにUPされていて、カスタマーは簡単に情報にリーチできている、と考えて問題ないと思います。

■情報優位は不動産会社ではなくカスタマーにある

「情報の非対称性」とは全く逆のことを言うのですが、上記の大量な物件提供により、むしろ情報の優位性はカスタマーの方が持っていると思います。

ここに非常に面白いデータがあります。ポータル各社が加盟する協議会があり、カスタマーにアンケート調査を毎年行っています。以下、経年で私がまとめたものです。ポータルサイトを見たカスタマが、「Aという物件を気に入り」→「不動産会社に問合せを行い」→「訪問し」→「その後その物件で契約までしたか否か」、を調査したものです。

まず上の表ですが、この10年で「契約しなかったカスタマ」が24%から倍の50%以上になっています。つまり、Aという物件が気に入って不動産会社A’に行ったが、最終的にはどの会社からも契約しなかったカスタマが10年で倍の半分になった、というものです。不動産会社からすればネット反響で来店した半分が最終的に自社以外でも契約しなかった、というのは「なんだそりゃ」、だと思います。これは、カスタマが簡単に情報にアクセスでき、簡単に不動産会社に問合せができる状態が出来がっている、ということであり、カスタマには良い状況ではないかと思います。(不動産会社からすればイヤな話かと思いますが)

続いて下の表が実は不動産会社からすると強烈で、必殺技が使えなくなった、ということを物語っています。(これまたカスタマ優位の定量データです。)「問合せをした不動産会社でネットで探した物件を契約した」が39%から75%という驚異的な数字になっています。つまり、契約した人の75%はAという最初に問合せた物件で契約している、ということです。(アタリマエですが)逆に言うと、カスタマは自分が探してやっと見つけた「このA物件」以外では契約しません!あなた(不動産会社)が紹介してくる物件はイヤです!、ということです。これは実は不動産会社からすると厄介な状態でして、「とりあえず来店させて他の物件を当て込む」という必殺の古典的営業スタイルwwは全く通用しなくなった、ということを物語っています。また、集客するためにはポータルサイトに掲載せざるを得ない、ポータルサイトへの集客依存度が高まっている、ということになります。ここは不動産会社さんは数字ベースでも理解していると思いますが、もう1歩踏み込んで、成約した物件と反響物件の突合せをされることをおススメします。このアンケート数字は多少高くでている気がしますが、本当にここまでの率であれば、私は経営的にヤバイ(ポータル依存度が経営的に赤信号)、と思います。

で、ここが言いたいことなのですが、この状態はもはや情報の非対称性どころか、カスタマ優位になっている、これが私の感想です。どうでしょう?不動産会社さん自身が既に「自分達の方が優位だー!」なんて思ってないはずです。思っているのはその周辺の方たちだけかと思います。

■不動産情報はNOWが大事

上記の情報量に加え、不動産情報は「NOWのステータス」が大事です。部屋は一物一価のため、その部屋の存在を不動産会社が知っていたとしても、その部屋が今空いているか=紹介できるか、今空いてないか=紹介できないか、の「NOWのステータス」を知ることが大事になります。

超わかりやすくモグラ叩きの図で解説しますww。モグラの穴がそのエリアの部屋数(10部屋)で、空いていて紹介できる部屋がモグラが頭を出している部屋(4部屋)です。この部屋しか不動産会社さんは紹介できないのです。(この一物一価という点は実は不動産を奥深くする正体なのです。また改めて。)不動産会社が10部屋のことを知っていても、今空いている4部屋の状況を知らないと意味が無いのです。10部屋はストック情報なので頭にインプットできても、4部屋は毎日変わるフロー情報なので頭にインプットできない、のです。(他社の物件ですから、ほぼ全て)

しかし、NOW、不動産を探しているカスタマーは、この4部屋を徹底的に調べまくって不動産会社に問い合わせる訳です。不動産会社は対応できるはずがありません。ちなみに、SUUMOで新宿の1Kを検索すると、3000部屋あります。毎日入れ替わる3000件をトレースし続けることは無理です。が、くどいですが、NOW、物件を探してるカスタマーは、この3000部屋の中から調べまくって問合せをしてくるわけです。たくさんのお客さんを相手にする不動産会社は、このカスタマ達以上に情報優位に立てるはずはありません。勝てないです、絶対。この、NOW情報のリアルタイム性も、ネットの出現によって実現されたことだと思います。

※ちなみに私はこの4年で事務所移転も含め5回部屋を借りていますが、私より情報の詳しい仲介会社さんに会ってないです、、。自分の望む価格帯で、ゲキピンポイントでエリアを絞り込み(駅とかざっくりでなく丁目とか学区とか徒歩〇分とか)、サイトというサイトを1クリックで渡り歩き徹底的に調べ上げ、「この物件内覧させてください。」と言うので。「その物件実はもうないです。」と言われれば、「そうですか。ありがとうございます。」でガチャですし、他の物件を紹介されても、「知ってます。ダメですこの物件。」、か、「その物件他社で聞いたらもう無いって言ってましたよ。」のどちらかです。これは、私が不動産関連の業務についているからではなく、経験されている方は非常に多いと思いますし、今後も確実に増えていくはずです。

■まとめ

ということで、この10年間のポータルサイト各社さんの努力によって、”NOWの物件が”、”大量に”インターネット上に掲載されることで、不動会社とカスタマーの情報の非対称性は解消され、むしろ、カスタマーの方が情報優位になっている、と。要は、ポータル各社さんが20年くらい前に掲げた情報の非対称性の解消は実現され、むしろマネタイズ先の不動産会社さんの方が劣位になってしまった、ということです。

話がそれますが、ということは、不動産会社から物件情報を吸い上げることはもはや限界に近づいており、白地は無くなっている、といことになります。私は、この前提でC向けのサービス設計をする方がイノベーティブなサービスができると思います。1つ案がありこれは結構イケそうな気がしています。(これも「情熱の不動産テック」シリーズにて語ることができれば。)

以上です、ただ、このパーツは実はこのことが言いたかったわけではなく、不動産会社間の情報の非対称性こそが問題である、ということを語りたかったので、それは次回に持ち越させて頂きます!

以上、日曜の晴れた日にスターバックス@大倉山店にて2本どりならぬ、2本書きをしていたら、すっかり夜も更けてきました。

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