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第2章 微生物叢と妊娠合併症3

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今回は、メルマガ52号(2022.06.08)の配信内容です。

SECTION⒈  Pregnancy and fetal life
Chapter 2.   The microbiome and pregnancy complications

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4.感染症

妊娠中の合併症には内的要因だけでなく外的要因も関与する。

微生物による感染症は、妊娠合併症の主な原因であり、細菌、ウイルス、原虫、および真菌がある。特に細菌に着目してみよう。

胎児・胎盤感染は、主に次に2つの経路を介して起こる(図2.2)。

  • 血液媒介による感染:病原体は、母体の血液循環から胎盤に到達し胎盤に感染する。

  • 上行感染:膣または子宮頸管から子宮へ、そして卵膜の感染を引き起こすものである。病原菌は、絨毛膜炎から羊水感染を引き起こし、胎児が吸引すると胎児死亡となる可能性もある。

胎盤での細菌コロニー(集落)が形成されると、局所で炎症誘導性サイトカインが放出され、卵膜の損傷および胎盤循環の途絶をもたらす。

図 2.2 細菌感染の経路

脱落膜で発現するトール様受容体(TLR)は、脱落膜間質細胞のアポトーシスおよびサイトカインの放出による免疫の活性化を引き起こす。細菌由来のリポ多糖によるTLR4は、ヒト羊膜上皮細胞において炎症誘導性サイトカインやプロスタグランジンE2の産生を引き起こす。実際、IL6、IL8、およびTNFαのレベルの増加が、絨毛膜炎患者の羊水中で測定されている。

プロスタグランジンが分娩を誘発することはよく知られているが、サイトカインに誘引された好中球およびメタロプロテアーゼは細胞間の結合を弱めて、子宮頸部の熟化および絨毛膜の脆弱化および破水をもたらし、早産を引き起こす。

また早期発症の子癇前症患者の胎盤の栄養芽細胞および血管内皮においてもTLR4の発現増加が観察されるので、子癇前症にも細菌感染が関与している可能性がある。

5.食品媒介病原体

近年、食品や汚染物質に関する知識が増えて、妊娠初期に摂取が推奨されない製品リストが生まれている。例えば、一部の魚種は大量の水銀を蓄積する可能性があり、メチル化されると母親の神経や免疫細胞に有毒であり、子供の発達上の問題を引き起こす可能性がある。腸内微生物叢は、水銀のメチル化(有毒化)および脱メチル化(無毒化)を起こすと考えられている。妊娠中に腸内微生物叢が変化するにつれて(第1章:健康な妊娠における微生物叢を参照)、水銀処理が妊娠中に変化するかもしれない。

また魚は、リステリア・モノサイトゲネスやサルモネラ菌などの細菌汚染物質の潜在的な供給源でもある。妊娠中の女性は、健康な非妊娠者と比較してリステリアに感染する可能性が17倍以上高い。これは、リステリア菌が上皮細胞および免疫細胞を介して侵入および拡散することができ、その根絶が細胞性免疫に依存しているためと思われる。

したがって、免疫不全の患者、高齢者、および胎児耐性期の妊婦は、この細菌を除去できない。リステリア感染症は妊婦では一般的に軽症であるが、細菌は胎盤障壁を通過することができ、胎児に深刻な害を及ぼす可能性がある。リステリア感染症は、感染症例の最大40%で早産、流産、死産を引き起こす可能性がある。

リステリアに加えて、サルモネラ菌、ブルセラ菌、およびカンピロバクターはすべて、有害な妊娠転帰を引き起こす。これらのすべてが体内で同じ感染経路を持っているわけではなく、すべてが同じように破壊的だというわけでもない。サルモネラ菌の感染は非常に一般的であり、胃腸炎または腸熱を引き起こすが、他に移すことは少なく一般的に自己限定的である。妊婦はTh2免疫状態(免疫寛容な状態)のためにより重篤な感染症を経験するかもしれないが、感染率は一般集団と変わらない。

サルモネラ菌の胎盤/胎児への垂直感染が起こると、胎児の損失が起こることがある。しかしよく「生卵を食べるな」と言われる割には、サルモネラ腸炎の垂直感染はまれで、報告された症例はごくわずかである。

カンピロバクター属菌は、胃腸炎を引き起こす別の自己限定感染物質であり、胎盤を通過して胎児の損傷を引き起こすことが知られている。しかし、ここでも垂直感染は少数の症例でしか報告されなかった。対照的に、妊婦におけるブルセラ症の妊娠合併症(自然流産、早産または胎児死亡)は、10%〜45%と高いことが報告されている。

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