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【ざっくり】松竹業績推移(過去5年間)

日本の3大映画会社と言えば、東宝、東映、松竹である。
今回は松竹について業績推移分析(トレンド分析)をしてみた。

【業績推移サマリ】
・過去2年間売上、営業利益はダウントレンド
・利益の半分は不動産事業(2018年度は全体の59%カバー)
・2018年度の映像関連事業は大幅減益(対前年比で約72%減)

■会社の特徴
松竹株式会社は、日本の映画、演劇の制作、興行、配給を手掛ける会社であり、他の映画会社と違う点は歌舞伎事業を持っていることである。創業は1895年であり歴史のある会社だ。

それでは松竹の過去5年間の業績推移(連結ベース)を見ていきたいと思う。以下は開示されている決算書のデータを参考に作成した。

会社の業績

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売上:過去5年の売上は横ばいのように推移しているが、過去2年間ではダウントレンドである
営業利益:過去2年間で下がり続けている。2016年度と2018年度を比較すると約40%減少をしているのがわかる。粗利率は改善傾向にあるものの、営業利益率は販管費の増加(人件費等)によって悪化している


■売上分析
まずは売上について見ていこうと思う。

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図にあるように2016年度に961億円を最高売上として、そこから過去2年間で売上が53億円ほど下がっている。

では、なぜ売上が下がっているか?
以下がセグメント別売上(ビジネス事業別売上)になる。

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2018年度セグメント別売上割合
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決算資料によると各セグメントの詳細は以下である。
映像関連事業:主要な業務は劇場用映画の製作・売買・配給・興行
演劇事業:主要な業務は演劇の企画・製作・興行、俳優・タレントの斡旋等
不動産事業:所有不動産の賃貸等

松竹の売上約900億円に対して、映像関連事業は約500億円、演劇事業は約250億円、不動産事業は約100億円、その他で約50億円である。 

過去5年間の変動幅に注目して見ると、不動産事業は事業の特性から毎年2~3億円程度の変動しかなく、演劇事業は毎年10億円程度の変動である。一番大きな変動は映像関連事業であり毎年30億円程度変動していることがわかる。

各セグメントのトレンドを見ると、過去2年で全体売上が下がっているが、演劇事業は2018年度は対前年比で改善しており、不動産については過去5年間で成長を続けている。一方で映像関連事業が大きく足を引っ張っており、全体で悪化したように見えてしまう。

まとめると
・演劇事業は改善傾向、不動産事業の売上は過去5年間増加
・売上50%以上を占める映像関連事業は過去2年間で減少
・映像関連事業の影響から売上全体では過去2年間で減少

ちなみに少し視点を変えると、むしろ過去の2016年度の映像関連事業の売上547億円が良すぎるのでは?という考え方もできる。

ということで、2016年度について調べてみた。

配給は「家族はつらいよ」「植物図鑑 運命の恋、ひろいました!」「HiGH&LOW THE MOVIE」「聲の形」等のヒット作に恵まれ、
興行は松竹の配給作品の他に「ズートピア」「シン・ゴジラ」「ファインディングドリー」「君の名は」など年間を通して多数のヒット作があった。

こうしてみると、2016年はあの大ヒット作の「君の名は」があり、少し良すぎた年であったと考えれなくもない。

■利益分析
売上に続いて、次はセグメント別利益を見てみる。

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2018年度セグメント別利益割合
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セグメント別利益は総務部門等管理部門(全社)の経費が含まれていないため、営業利益と一致しないが、ざっくり各事業のトレンドが把握できる。

図からわかることは、利益に関しては不動産事業が約60%を占めており、売上で53%を占めていた映像関連事業は利益では約10%しかない。
つまり、売上が大きい映像関連事業がメイン事業に見えるが、実際は利益のほとんどが不動産事業である。利益ベースで見ると松竹は不動産会社と言えなくもないということである。

不動産事業、演劇事業の利益は売上と同様に直近で対前年比で改善しており、不動産事業は過去5年で伸び続けている。一方で、映像関連事業については2018年度は対前年で約72%利益が減少している。

では、なぜ2018年度の映像関連事業の業績が悪いのか調べてみた。

配給は「曇天に笑う」が厳しい結果になり、「空飛ぶタイヤ」が大ヒットした。「パーフェクトワールド 君といる世界」「旅猫リポート」は目標に達成せず。興行は松竹配給作品以外では「アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー」「インクレディブル・ファミリー」「ジュラシック・ワールド/炎の王国」等、春先から夏休みにかけての興行が盛況だったことに加え、秋から冬休みにかけても「ボヘミアン・ラプソディ」を筆頭に多数のヒット作が公開されたようだ。
決算書の資料からではこれ以上の情報ないのであくまで推測であるが、恐らく配給で大きなヒットが出なくてうまく結果が出ず、軽微な影響として、それ以外のCS放送事業や映像ソフト、テレビ放映権販売なども横這い、もしくはやや減少トレンドであると思われる。
また時間のある時に各セグメントについてより詳細をリサーチしたいと思う。

以下、今回のまとめである。

【業績推移サマリ】
・過去2年間売上、営業利益はダウントレンド
・利益の半分は不動産事業(2018年度は全体の59%カバー)
・2018年度の映像関連事業は大幅減益(対前年比で約72%減)



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