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古代中世言語好きがオススメする歴史漫画

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古代ギリシア語や中世ラテン語にどっぷりハマり、リアル書店という場をこよなく愛する(というか自分でいつか経営したいとまで思っている)ライターが、古代・中世を舞台にした歴史漫画のオス… もっと読む
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【古代中世言語好きがオススメする歴史漫画(7)】暴虐の皇帝ネロを主役に据えた『我が名はネロ』(安彦良和先生)のラストに不覚なほど涙してしまいました

機動戦士ガンダムのキャラクターデザインで有名な安彦良和先生は歴史漫画の名作も多く手掛けており、このマガジンでも以前に『アレクサンドロス』を紹介させていただきましたが、 家族コンプレックスにまみれた男性を描くと筆が冴えに冴える先生が、あの皇帝ネロを主人公に据えたとなると、これは近親相関や家族殺しや嬰児殺しや性的虐待がしつこいエグい漫画になるだろうな、と思っていたら、ハイ、描写としてはまさにそのとおり。むしろ予想以上にウツになる陰湿さでした。 ところが本作『我が名はネロ』は残

【古代中世言語好きがオススメする歴史漫画(6)】惣領冬実『チェーザレ』の精緻な「中世ヨーロッパ解説」は並の世界史参考書を超えている!

別の記事でも告知させていただいたとおり、「惣領冬実先生の歴史漫画『チェーザレ 破壊の創造者』からチェーザレ・ボルジアの生き方を学ぼう!」というテーマの記事を、以下の漫画メディアに掲載いただきましたました!(こちらのバナーから対象サイトへ飛べます↓) この『チェーザレ 破壊の創造者』という歴史漫画、古代中世ヨーロッパ好きを標榜している私を完全に虜にした作品なのです! 上記サイトでは語りつくせなかったいくつかの補論を、こちらのnoteで展開させていただきます! 【中世マニア

【古代中世言語好きがオススメする歴史漫画(5)】『うたえ!エーリンナ』を読んで脇役のアルカイオスのほうに夢中になった私はやはり男だ

日本に、古代ギリシアの楽器奏者であり、古代ギリシア演劇の演出・出演もこなす、佐藤二葉さんという方がいます。古代ギリシアの魅力を現代日本に伝えてくれる方(ひょっとしたら古代ギリシアの詩の女神に選ばれた運命の方?!)として大注目の方ですが、なんと漫画も描ける人でした。マルチタレントすぎる。 百合ものです。少女漫画です。しかしそんな漫画を中年男性である私が見出し買ってしまった理由は、ここで再現されている古代ギリシアの風物が実に細かく、作者の古代理解の該博さがタダゴトなレベルではな

【古代中世言語好きがオススメする歴史漫画(4)】萩尾望都先生『百億の昼と千億の夜』を私なんぞがオススメするのも本来恐れ多いのですが:やはりススメたい!

古代ギリシア語やラテン語の勉強マニアであるという背景で、歴史漫画の紹介を何回かやらせてもらっており、 その勢いで是非『百億の昼と千億の夜』もオススメしたいと思ったのですが。 「さあこの作品の紹介文を書こう」として、はたと手が止まってしまいました。 この作品は対象として凄すぎて、私なんぞが何を書こうとしても、恐れ多くて腰が砕けちまいますな、、、! それにしても、果たして未読の人にはこの作品をどう説明したものか。 「手塚治虫の『火の鳥』シリーズ全体に匹敵するスケールを単

【古代中世言語好きがオススメする歴史漫画(3)】目の前で数万人が死んでも明るく前向きな人たち:『ヘウレーカ』に描かれた古代人像の不思議な説得力

岩明均先生が古代のシラクサ戦争を描いた『ヘウレーカ』は、古代最高の(ひょっとしたら世界史上最高の?!)数学者であるアルキメデスを描いた作品です。 ただし、アルキメデスの数学者としての事績については、ほとんど触れられていません。 シラクサ戦争における伝説、「この戦争にはアルキメデスも新兵器の発明でおおいに参戦した」という一点を掘り下げた、「古代の戦争にまきこまれたアルキメデスとその仲間たち」の物語です。 アルキメデスの「シラクサ戦争への参戦伝説」とは、西欧に古くから伝わる

【古代中世言語好きがオススメする歴史漫画(2)】『アレクサンドロス』のコンプレックスをちくちく突く「残酷描写」は古代世界の描写として正しいと思う話

古代ギリシア語などに埋没している私は、当然、古代ギリシア世界が好きなわけです。かといって古代ギリシアに生まれ変わりたいとは絶対に思いません。 だって、いかに古代世界が現代の私たちを魅惑する哲学や文学芸術に満ちていたとしても、彼らの実生活のほうは、現代人の我々の価値観からすると、とうていついていけない「陰湿さ」「残酷さ」に満ちていたことでしょうから。 戦争は当たり前。奴隷も当たり前。旅に出ることは強盗や誘拐に会うリスクと隣り合わせ。経済的な理由による赤ちゃん殺しや老親殺しも

【古代中世言語好きがオススメする歴史漫画(1)】『バビロンまで何マイル?』の図書室シーンは特に本を愛する人にはたまらなく魅力的!

古代ギリシア語や中世ラテン語にどっぷりハマり、リアル書店という場をこよなく愛する(というか自分でいつか経営したいとまで思っている)私のような人間にとって、少女漫画家の川原泉先生は熱烈リスペクト対象です。 「少女漫画だから」ということで敬遠している人がいるとしたらあまりに勿体ない! 最近読んだものでは、『バビロンまで何マイル?』がとてもよかった。 こちらはタイムスリップSFもの、ということになるのでしょうが、 川原泉先生の歴史や本に関するマニアックな知識が膨大なセリフの