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【漫画の海外展開の話のつづき】フランスの専門家が賛美するマンガ家「平田弘史→大友克洋」の矢印から見えるもの

前回取り上げた、フランスの日本マンガ普及者、ドミニク・ヴェレさんの記事。

そのヴェレさんが賛美する日本の漫画家が、平田弘史先生でした。

(※平田弘史『人斬り』/レジェンドコミックシリーズより引用)

意外な名前!?、と最初は思ったのですが、よくよく考えると、フランス側から見たときの日本漫画の良さとはこういうところに期待されているのか、と納得するところもあり!今回はそのお話をまとめてみます。

平田弘史先生とは?有名なところでは「アキラ」の題字を描いた人!

私と同世代には、これがわかりやすいでしょう。映画アキラのロゴ、AKIRAのローマ字の上に載っている、毛筆体の「アキラ」部分を描いた人です。

このインパクトが凄すぎたせいか、その後もいろんなアニメの題字を毛筆で描かされていますが、先生の本職は書道家ではありません。

『座頭市』『黒田三十六計』『薩摩義士伝』といった時代劇を得意とするベテランの漫画家です。

まず、正直に申し上げましょう。私自身、この手の「時代劇漫画」というものについては、大判印刷でコンビニの奥で無造作に売られており、日本酒カップと競馬新聞を持ったオッサンがたまに買っていくもの、くらいの印象でした。つまり、イメージはよくありませんでした。ところが。

フランスでの受容を見て私の平田先生への印象も様変わりしました

ハイ、自分のことながら、人間の感受性というものは曖昧なものですね。

調べてみると、平田先生の作品は続々とフランスで翻訳されている状況!(参考:フランスのアマゾンの該当ページとなります↓)

これを見た後に、平田先生の漫画を買ってきて読むと、「たしかに、オシャレに見える!」w。

古臭いと感じていたはずの劇画タッチも、よく見ると、ものすごくディテールが細かくて(部屋の中の小物とか!)、実際の戦国時代や幕末の土くさい風物が、匂いまで嗅げそうなほどリアルです。

なんといっても、剣や弓を使っての「武術」についてのディテールが、すさまじく、細かい!

(※平田弘史『人斬り』/レジェンドコミックシリーズより引用)

もちろん漫画として誇張はされているのでしょうが、「実際に日本刀で人を斬る時は、こんなふうに見えるのかもしれないな」と唸らせるほどの迫力です。デザインとして、恰好がいいのですね。

勝海舟やら黒田官兵衛やらの話を海外で読んでもらっているとは、日本人としてはとても嬉しい話!

それにしても、司馬遼太郎や大佛次郎や吉川英治を読みふけって学生時代を過ごしてきた私としては、「勝海舟やら黒田官兵衛やらといった日本史の人物が説明もなく出てくる漫画が海外の方に読まれている」というのは、とてもうれしいことです!

薩摩藩やら長州藩やら、幕府方やら勤皇派やら、現代の日本人でも知らない人は知らない世界の話になっているというのに。

もちろん、平田弘史先生に行きつくフランス人なんてのは、よほどのマニア層だとは思いますが、それでも、こういう形で日本が紹介されているというのは、「ドラゴンボールやナルトが日本の風景であると勘違いされる」ことよりは遥かにありがたく、誇らしいことではないでしょうか?

平田弘史先生→大友克洋先生という2点のあいだを矢印で結んでみる

上掲した通り、平田弘史先生は書道の腕前も強烈で、アキラの題字を担当されております。

ここで出てきた二つの名前、平田弘史先生と大友克洋先生という、一見、遠そうな二つの点ですが、どちらもフランスでウケている、という共通項があります。

この二人の名前を結んでみて、「さらにこの先には、どんな作家が立つべきか」と空想すると、なんとなく、世界に押し出すべき日本漫画のベクトルが、模糊としながらも見えてくるのではないでしょうか?

少なくとも日本の精神表現は今後もぜひ広めていきたい

あわせて思い出すのは、一時期、テレビドラマになったおかげで有名になった「武士の娘」という本ですね。

幕末の長岡藩に育った武家の子女、杉本鉞子さんが、アメリカへ渡って生きた半生を振り返る自伝なのですが、

・厳しいながらも愛情のこもったシツケをビシバシ食らうことで精神的成長をする幼少期とか、

・英語を猛勉強することでめきめき海外の知識をつけていく根性の凄さのあたりとか、

現代日本人が読んでも「ハッ」と襟を正すようなエピソードがいっぱいです。で、恥ずかしいことながら、私はこの本を外国の方(合気道をやっているイタリア人の文通相手)から勧められて初めて知りました。よくこういう本を見つけるなと感心しますが。。。

こういうところ、海外の人は日本の漫画や小説に、どこかで「社会とか家族とか義理人情とかいったものについての、合理主義いっぺんの西欧主義とは違う考え方」のヒントがないか、と期待しているのかもしれませんね。

だからといって、「そうか! 平田弘史先生のマネをすれば、フランスでウケるんだ!」とか、「杉本鉞子を漫画化すれば海外でウケるんだ!」とかいうような単純な話ではないですよ

そういう期待に、現代の日本文化が生み出すマンガが、今でも応えられるのか、というお話です。

そして個人的な直感としては、平田弘史先生のような時代劇では「ない」形での、日本の精神世界の表現方法、まだまだポテンシャルはありそうに思っているのですが、、、いかがでしょうか?

子供の時の私を夜な夜な悩ませてくれた、、、しかし、今は大事な「自分の精神世界の仲間達」となった、夢日記の登場キャラクター達と一緒に、日々、文章の腕、イラストの腕を磨いていきます!ちょっと特異な気質を持ってるらしい私の人生経験が、誰かの人生の励みや参考になれば嬉しいです!