見出し画像

【古代ギリシャ語の効用の話つづき】デスクトップの「アイコン」は古代ギリシャ語のεἰκών(エイコーン)から

実社会で役立ちそうにない古代ギリシャ語というマイナー言語も、やっているといろいろ、いいことがあるんだ!というお話の続きです。

ブラウザの「クローム」が古代ギリシャ語源だった話や、エクセルやパワーポイントで活躍の「グラフ」も古代ギリシャ語源だった話など、コンピューター系が何度か続きましたが、今回は「アイコン」という単語もまた古代ギリシャ語からきている、というお話となります。

「アイコン」の語源はεἰκών(エイコーン)、新約聖書にも登場します!

カタカナ語でいう「アイコン」、英語でいうiconの遠い先祖は、古代ギリシャ語のεἰκών(エイコーン)となります。

たとえばこの語は、新約聖書の有名な「カエサルのものはカエサルに」というセリフの直前に登場します。

「ローマ帝国に税金は納めるべきなのでしょうか?」(=キリスト教徒は国家権力にも従属すべきでしょうか?)という問いに対して、

イエス:「そのお金とやらを持ってきてみなさい」

そして渡された古代ローマ帝国のコインを見て、

イエス:「このコインに鋳造されているのは誰の肖像か?」

それに対して「皇帝(カエサル)の肖像です」という答えが返ってくると、

イエス:「それならカエサルのものだからカエサルに返しなさい」

と告げる場面。

「お金のことと信仰は別だ」という宣言をしていると同時に、

なんとか口実を見つけてイエスを逮捕しようと見張っている連中は「ローマ帝国を肯定しているとも否定しているともとれる発言だから、これだけではアゲアシをとれない!」と地団太を踏む、政治劇的な緊張感もある名場面です。

ここでイエスが、コインの肖像は「誰の肖像?」と聞いているトコロが、古代ギリシャ語で、

Τίνος ἡ εἰκὼν αὕτη(ティノス ヘ エイコーン ハウテー?)

となります。アイコンの語源「エイコーン」が入っていますね

文字通り、「肖像」とか「似姿」とかいった意味となります。

※このセリフを含め、新約聖書における古代ギリシャ語の解説は、このようなとても詳しいサイトがあるので、是非参考にしてみてください!

ギリシャのキリスト正教文化ととにかくゆかりの深い「アイコン」

新約聖書の話を出しましたが、この「エイコーン」、古代だけでなく中世のギリシャ文化でも重要な役割を果たします。

ギリシャやロシアの正教に出てくる「イコン」、あれもまた「エイコーン」からきているのですね。

中世以降のギリシャは、いわゆるビザンチン帝国の支配下で正教文化の中心地となり、現代でもギリシャは敬虔な正教の国です。

驚くべきことに現代では日本でもamazonで普通にイコンを発注できるみたいですね。

以前に別の記事でも触れた通り、現代のギリシャ共和国という国に行ってみると、日本ではまだ馴染みの薄い「正教」という宗教文化に触れることになり、いろいろな驚きと感動があります。

イコンなるものも、その独特な描画法から初めて見たときは驚きがありますが、慣れてくると神々しさ・美しさを感じられるようになります。美術品としてのイコンというものに、だんだんハマッてきます

ギリシャ正教のイコンというのは、「聖なるものの似姿」として作られたもの。

あくまでイコンを通してその向こうにいる聖なるものを観想することが目的であって、イコンそのものを崇拝しているわけではない、ということが重要です。

ギリシャ正教のイコンとデスクトップアイコンをかける、そのココロ

ちょっと大胆な比喩かもしれませんが、イコンは日本仏教の「曼荼羅」のような、言語を超えたものに触れるためのツール、という理解がよいかもしれません。

まさに、デスクトップのアイコンと同じ。それをダブルクリックしたことによって発動する「力」のほうが真実であって、アイコンそのものが大事なわけではない、とでも言いましょうか。

アイコンをクリックすると、その向こうのプログラムが稼働する=イコンに向けて瞑想することでその向こうの聖なるものが稼働する

ちょっと大胆な比喩かもしれませんが。。。

ともかく、コンピュータのアイコンも宗教のイコンも、古代ギリシャ語で使われていた同じ言葉が祖先、というお話でした!

子供の時の私を夜な夜な悩ませてくれた、、、しかし、今は大事な「自分の精神世界の仲間達」となった、夢日記の登場キャラクター達と一緒に、日々、文章の腕、イラストの腕を磨いていきます!ちょっと特異な気質を持ってるらしい私の人生経験が、誰かの人生の励みや参考になれば嬉しいです!