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葬送の後日談

家族が一人居なくなってしまっても、遺された人たちの日々は続いていく。

祖父が亡くなって1ヶ月ほど経った頃、実家の母から電話が来た。
その少し前に、祖父の四十九日の話を両親揃って電話してきたばかりなのに何だろう?
あの人の事だからまた、当日色々と手伝わせるつもりなのかなどうせ…などと思っていたら(四十九日に関係する事ではあったけど)、予想もしていなかった事が起こっているのを知らされた。

母の実家には、うちと違ってそれなりの額の財産があった。
祖父が亡くなって、その遺産の相続争いが起きたのである。
詳しい内情は省くが、母の妹たち(私の叔母たち)が二人で仕組んで、母に遺産相続を放棄するように説得しろと祖母に詰め寄った。
当然祖母は、なぜ本人と直接話し合う事もせずに自分にそんな事を強要しようとするのか困惑し、親としても我が子のうちの一人だけに放棄させる事なんて有り得ないと突っぱねた。
それを聞いた母も、ちゃんと司法書士等に依頼して正式な手続きを踏もうかと提案したところ、思い通りに事が運ばなかった叔母たちは逆上して相続の放棄を宣言し、四十九日が終わったらもう実家の敷居は跨がないと言い放った。

まさか自分の身内がそんなドロドロの相続争いを起こすなんて思いもしていなかった私は驚いた。
叔母たちの今までの言動から、母に対して余り良くは思っていないのだろうなという気はしていたけれど…個人的な感情なのかお金に目が眩んだのか両方なのか。

そんな状態で迎えた四十九日当日。
兄弟たちが遠方に住んでいて参加出来ないので、私が母の子供代表で参加することになった。
_まあ、昔からめんどくさい事は当たり前のように私に回ってくる。

祖母は話に聞いていた感じから予想していたよりも数倍怒っていた。
母の母親なので、我が子に楯突かれる事がそもそも不愉快なんだろうとも思うけれど…。
生きてきた時代的にも、本当に苦労してきた人だろうし、話を聞いていたら怒り以上に、とても傷付いているのだと思う。
自分の子どもたちが、もう孫も居るような歳になって、自分たちの父親が亡くなってすぐのタイミングで、特定のきょうだいを除け者にして財産を自分たちの物にしようとしている事に。

_母も母で、自分の妹たちと今更腹を割って話そうとか、それぞれの気持ちを理解したいとかは思わないらしく、ただただ自分の今の平穏な暮らしを守りたいように思う。
私がどうこう言う事でも、言って変わるもんでも無い事は解っているけれど、それが私からすると少し残念ではある。

集まってきた親族たちに、祖母が事前に今回の叔母たちのことを伝えていたので、叔母たち一家は針のむしろのような状態の所にやって来た。
叔母たちは自業自得だけれど、いとこたちは気の毒だった。
(親族がハッキリと何か言ったりしたりする事は無かったけど、雰囲気がもう……)

四十九日を最後に縁を切るとまで言っておいて、当日になっても叔母たちは自分の家の家具やらなんやらを祖母宅に置きっぱなしで、鍵も所有したままだった。
その有り様からして、どうせ中途半端な覚悟で敷居を跨がないだの言ったんだろうなーと思った。

祖母から鍵を返せ、置いてある家具は各々持ち帰れと言われて、叔母のうちの一人が逆ギレして墓場で取り乱して騒いだため、一時騒然としていた。
納骨の為に来ていた業者さんにもそれを目撃されて、親族としてはとても恥ずかしいと共に、業者さんにも申し訳ない気分がした。

まあ祖母も墓場で言わんでも…と後からは思うものの…納骨も済んだら四十九日の法要も終わりだし、忘れないうちに言っとこうと思ってのことだろうけど。
言われた方も、縁切りを言い出しておいてそういうことを言われないとでも思っていたのか、そもそも場所を選んでもらえると思っているのが甘いというか…。

結局四十九日が終わると叔母の一人は祖母に捨て台詞を吐いて出て行った。
もう一人の叔母は私の連絡先をこっそり聞いてきて、捨て台詞を吐いた方に引っ張られるようにして退場した。
それぞれの夫たちは終始空気。
いとこたちは申し訳無さそうにしてた…。そしてみんな家を出たがっている事をこっそりと私に話した。

きっと叔母たちは、自分たちの家庭が今うまくいってないから、余計に遺産などに執着したのかもしれない。

後日、連絡先を聞いてきた叔母と一度電話で話したけれど…動機や理由が何十年前の話?と言いたくなる出来事を引きずっていたり、とにかく言い訳ばかりで自分たちのした事については全く触れず、あろうことか私から両親、特に母の弱味になるような事を聞き出そうとしているように思えた。
しかもこの叔母、私が祖父の危篤状態に駆けつけた時に言い放ったセリフが失礼極まりなかったのに、謝るどころか一言もそれについて触れない。
(内容は伏せるが、数年ぶりに会う姪っ子に言い放つ言葉とはとても思えない)
この人も変わってしまったのだなあ…と思った。どうしようもなく残念な方向に。

なんというか…アホだなあと思う。
穏便に済ませていたら、遺産の半分の額の等分、_3人なので3分の1_は確実に手に入っただろうに。
(目的は金だけじゃないのかもしれないけど)
自分たちの個人的な欲や感情で、周りの人たちを巻き込み、傷付け、悲しませ、怒らせた。
それが自分の親族な事が私はとても腹立たしい。

(正直、母にも少しイラつく。)

まあ、別に関わらなくても私が生きるにあたって大して困らないし。
二度と会わなくてもこっちは構わないのだけれど。
なぜ姉妹で話し合って平和的に解決出来ないのかと、残念で仕方ない。

叔母たちの事はもういいけど…親元に残っているいとこたちが無事に家を出られる事を密かに祈っている。
きっと、一人でやってみて初めて気付く、今までの暮らしの良さも悪さもあるだろうけれど。

_更に後日。
葬儀の時に来ていた従妹が流産したことを知った。
元々一人目の子供の妊娠中も危なくなりかけたので、恐らくそうなりやすい体質なのかもしれないけど…。
そんな大事な時に祖父の葬儀に参列させられて、その上親が揉めてて、こんな結果になってしまった事は本当に気の毒だと思った。(普通に過剰なストレスがかかったんじゃないかと思う…)

_誰かを失っても、遺された人たちはその後も生きていかなきゃならない。

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