見出し画像

教育・学びの未来を創造する教育長・校長プラットフォーム(第1回合宿)イベントレポート(後半)

≪第二部≫

~真夏の教育大激論会~ 

● 日時:2018年9月16日(日)15:00~18:15
● 場所:デジタルハリウッド大学
● 主催:教育・学びの未来を創造する教育長・校長プラットフォーム事務局(NPO法人ETIC.・文部科学省若手職員有志)
● 参加人数:約105人

(概要)
● 冒頭、事務局からのプラットフォームに関する趣旨説明を行った後、以下のプログラムを実施した。

第一部の火種の共有として、教育長・校長等からのプレゼンテーション

井出教育長、代田教育長「可能性~未来の学校未来の教育/見えてきた近未来をどうとらえるか~」:近未来の「知の共生」時代の到来に向けて、未来の学校教育が持つべき方向性は、個別の知を人間性や生き方に統合する「知の再編」である。「知の再編」は生涯続くものであるから、生涯教育を可能とする学びの場が必要となるだろう。そのためには、これまで単なる物理的な場・特定の学校種や段階を表すにすぎなかった「学校」という概念をアップデートし、学びを通じて地域社会と連帯する場へと転換する必要がある。具体的なアクションプランとして、学びの場を構成する「教師」の概念を、単なる免許制ではなく、あらゆる専門性を包摂する新しい概念へとアップデートすることが第一に挙げられる。学校の「多様な地域文化のアーカイブ」としての価値を活かすとともに、地域への愛着をはぐくむ場として、学校とまち、地域の関係を転換していくことが今、求められる。
江添教育長「地域連携/地域創生」:江添教育長が注目したのは、地域の独自性を強みとしつつ近年求められている「新たな教育」の手法をどのように取り組んでいくか。その地域の持つ産業や伝統を活かすには、まずその地域の現状を知るためのコミュニティ及び地域外へのネットワークを充実させる必要がある。また、都心との教育格差を無くしかつ子どもの学習意欲を高めるには、AIをはじめとする最新テクノロジーを用いることが重要。そこで、議論においてはいかなる学習形態が子どもの能力を最大限に伸ばしうるか、それを推進するため有効と考えられるプログラムについて話し合

小高校長「共創~人生100年時代を支える学び~」:全ての人を笑顔にするために、地域と共に創る、「共創」がテーマ。子ども、教職員、地域、カリキュラムが自律的・自発的に「動く」学校創りを目指している。学ぶ主体性、論理的説明力、創造性のある子どもを育て、創造的な問題解決能力を発揮する教職員、地域と学校の壁を壊し、教科の壁を壊し、地域と共に創る学校を目指す。そのために、コンピテンシーベースの授業改善研究を共に進めてくれるひと、社会の課題と直結したリアリティ感をもって課題解決していく総合カリキュラムを共に開発する企業・大学、資質・能力をセンシングする研究を一緒に進めてくれるひとを募っている。
尾上校長「地域を学校に取り込む~里山を学校に~」:地域と共に変化し続ける学校を目指し、①今まで変化し続けた学校を記録し、50年後に繋いでいく、また、②横浜市内に子どもの未来を創る官・民のネットワークを構築、その中心的な役割を目指す、そのためにも、③①学校の記録を、②のサポーターに広く公開する、ということを宣言。具体的には、①は、冊子「校庭里山の楽しい学校」を作成し、②は横浜子どもの豊かな体験を通した学びのネットワークを来年1月に開催、③は「学校が地域の子どもの居場所となる日」リビング・ラボを来年2月に開催する予定。

坂本副校長「これからも~サスティナブル/ESD~」:横浜市立永田台小学校では現在、ESDの取り組みを推進しているが、近々教職員が4割以上入れ替わってしまうため、従来のESDの取り組みを新体制でも継続していけるかが懸念点である。今後は一層力を入れて「これからもサスティナブル」を意識してESDを進めていく。そのために地域、教職員、子ども、保護者が「問い続ける・対話していく」学校教育を目指す。
菅沼校長「第三極としての新しい総合学科」:2年前に長野市立長野中学校ができ、市立長野高等学校と中高一貫校になり6年間で探求型の学習を習得させるべく、中学校卒業までに探求基礎の授業を設定したり、善光寺ウォークという善光寺に来る外国人を観光案内したり、信州大学の学生にサポートしてもらったりする取組などを行っている。探求型学習では、生徒に課題を与えるのではなく、生徒の中に課題発見や課題に取り組む姿勢を築けるように仕組むことが必要。なお、探求型学習は教師の力量に寄るところが大きく、知見が個々の財産に留まってしまっているという課題がある。最後に、第二部参加の皆さんに、PBLの実践をされている方の参加を呼び掛けた。
住田校長「ブラック⇒カラフルな学校」:学校が「ブラック」と言われているが、「カラフル」な学校を目指さなければならない。カラフルとは教職員がそれぞれの持つ固有性(カラー)を活かすという意味である。そのために教職員が日頃の業務以外にもワークショップなどを行う機会を設ける。また教職員だけではなく、子どもも多様でなければならない。多国籍児童の受け入れ体制を整えることで世界に通用する学校を目指す。
高橋教育長「教育による地方創成/キテン」:教育による地方創成を目指す。大館市がそのキテンになる。まず人材育成が「基点」である。現在、大人が自信を失っている。そのような状況下で希望を生み出せるのは教育だけである。また、全国教育ネットワークの「起点」として大館市が一翼を担う。

高橋校長「2年間での働き方改革/学校が社会のモデルになること」:2年間での働き方改革を行い、「限られた時間で結果を出す」働き方を目指す。その為に、ICT導入によって授業時間の圧縮などの教師の負担軽減を行い、それによって生み出した時間で教師の地域貢献活動を推進する。加えて、学校が社会のモデルとなるようにコミュニティースクールの充実化などを図る。
戸ケ﨑教育長「サスティナブル/未来社会に向けた教育の推進/SEEP」:戸田市では教育を基盤としたサスティナブルシティーを目指し、未来社会に向けた教育を推進する。そのために、職人の技に頼るだけではなくデータサイエンスの活用や科学的根拠に基づいた教育に転換することを目指す。具体的な施策として「戸田市SEEPプログラム」と銘打ち、STEM教育、EdTech、EBPM、PBLに力を入れる。

土肥校長「教育委員会と校長会の共創」:教育委員会と校長会が共創を理想像として、①足立区の施策理解の上、校長が現場を踏まえた施策提言をしていくこと、②地方教育行政を担う教育プロパー職員の育成をすすめること、③足立区の教育を支えるサポーターを発掘することをアクションプランとして掲げた。また、「教育委員会が言ってるから…」「いままでこうやってました…」等NGワードを設定し、①②③に掲げたアクションをとっていくことを宣言。また、スクールプラットフォームならぬ「スクールフラットフォーム足立支部」を発足し、足立区の未来を考え、共に足立区の未来を担う者で早速12月に会合を行うことを決定した。
増渕校長「みんなが輝ける学校」:増渕校長の就任当初、市ケ尾高校の目の前にある区役所とも繋がりがない状態だったが、生徒の学びのフィールドを広げるために地域とともにある学校づくりを進めた。市ケ尾高校のある青葉区は、社会の一線で活躍してきたシニア世代の方がたくさんいる。そんな多様な経験・スキル持つシニア世代を中心とする地域の大人をサポーターとし、中高生の豊かな発想でまちの課題解決や魅力アップに取り組む活動を創出した。中高生も大人も生き生きと活動している。また、地域に住む学校運営協議会委員の一人が、本校生徒のために「グローバル・リーダーシップ講座」を開講してくれている。来年度から先行実施する「総合的な探究の時間」では20の分野を設定し、生徒たちは自分の得意や興味・関心、進路等に応じて探究活動に取り組む予定だが、そこでも各分野で活躍した経験を持つ地域の大人や保護者の力を生かすことで、生徒も大人も輝き、より充実した探究活動を実現していきたい。
水野教育長「個の学びの機会~子どもたち1人1人の個に応じた教育~」:東神楽町は、500人弱の児童が通う学校から、山村留学として移住してきた児童ばかりが通う10名程度の学校まで、規模・バックグラウンドが多様な小・中学校があるが、だからこそ全ての子どもに、いつでもSpecialな教育を提供することが理想像。学校だけでなく、既に設置されている放課後児童クラブや放課後デイサービス等様々な教育機会を有機的に連携させること、児童生徒1人1人の個に応じた教育を提供することをどのように進めるかが目下の課題。それぞれについての知見を持つ人を求めている。

三好教育長「のびやかで創造性のある学校」:福山市では「のびやかで創造性のあるカラフルな学校」をコンセプトに「教科横断・学年縦断的カリキュラム」の編成を行う。教科で子どもの学びを規定するのではなく、教科・学年の枠を超える子どもの学びに即した授業づくりを進めていく。また、すべての子どもが自分のままでいられる学校づくりを目指し、不登校ゼロを目標とする。

村松教育長「そもそも~目的に戻るための原点回帰を考える「チコちゃん教育版」~」:逗子市教育委員会は「教育を応援してくれる市民」と「民間の力」で繋がることをサポートする。その上で、ICTを活用したカリキュラムマネジメントや広域いじめ相談などの事業に取り組む。また、「チコちゃん教育版」を作り、教育の「そもそも」に原点回帰を行う。

● 気になる教育長・校長の机に集まりディスカッション①(主なもの)

江添教育長テーブル:議論において、参加者が現在行っている取組及び事業に関する紹介があった。ある参加者は、地域の強みや伝統の発見及び幅広い年代間の交流促進を目的に、様々な地域の中高生が地方に赴き取材活動を行うインターンシップを実施していると述べた。また、不登校や病気等何らかの事情を抱えている学生に対し、通信教育プログラムを提供しているとの話もあった。具体的には、時間割編成及び教科は生徒に一任されていたり、通学用の教室で教師への質問及び他学生とのディスカッションの場を設けていたり、評判の良い教師の授業をオンラインで受講可能等の特長があるという。江添教育長は、これに対して各生徒のレベルに合った柔軟な教育システムの推進及び地域間の教育格差是正に効果的と考えられると評価していた。
尾上校長テーブル:校庭を里山にする活動について議論。横浜市の飯島小学校では学校を楽しい場所にするために地域の力、先生たちの力を借りながら、校庭の里山化に尽力してきた。また、人事への要望、地域交流室の設立等で課題の解決を図るほか、地域行事への協力、学習環境整備への協力、授業への参入、防犯・安全確保等に取り組んだ。また、活動を校長が宣伝することで、協力者のモチベーション維持に繋がるとの事例もあった。議論の中では地域の人の常駐状況などに質問が及び、また、全体を通じて、特に学力以外の部分に効果(自己肯定感の養成。子どもたちの表情。)が顕著に表れたり、学校を核とした地域作りができてきつつあることが話題になった。
※なお、尾上校長の活動は何度もテレビ番組で取り上げられているため、興味がある方は是非ご覧ください。(最近では「ダーウィンが来た!第557回-都会で発見!絶滅危惧種ウナギ-」で取り上げられました。)

菅沼校長テーブル:2年前に長野市立長野中学校ができ、市立長野高等学校と中高一貫校になった。6年間で探究型の学習を習得させるべく、中学校卒業までに探究基礎の授業の設定などを行っている。課題としては、大学入試がどのように変わるかはっきりしない不安などから、高校側に探究活動に対する消極的な姿勢もあり、中高間の連携・調整に難しい点がある。提案として国際バカロレアの活用や玉川大学付属で作成され市販されている問いの立て方などが学べる教材の活用が挙げられた。また、各学年で県の募集事業に応募するような優秀な学生が1,2名はいるため、その生徒らを参考にすると良いという意見もあった。
住田校長テーブル:住田校長から、「学校はブラック」といったイメージが定着してしまった中で、「カラフルな学校」をつくるための工夫をお聞きした。大事にしているのは「ケア」という概念で、それは思いやり、助け合い、安心感といった空気感である。教育は「子どもが主役」と言われるが、子どもの前に立つ教師をまずは大事にしたい。そのために教師を「ケア」できる職員室づくりを模索している。さらに保護者の協力も必要不可欠であり、PTAの強制加入を廃止して保護者が関わりたい分野に携わってもらうことで、保護者の活動が活性化した事例について紹介があった。

高橋教育長テーブル:秋田県大館市で始めたふるさとキャリア教育も開始後8年が経過し、様々な効果や取組実績が蓄積されてきた。議論で盛り上がった「子どもハローワーク」は小・中学校で土日の職業体験受け入れ先が掲示板に列挙され、それを希望した児童生徒が職業体験をするというものである。中学生の参加率は80%ほどで、参加回数が多い児童は年間20回を超える。ふるさとキャリア教育を通じて、非行補導件数の減少、高校生の暮らしやすさ満足度、自己肯定感を示す指標の向上にもつながった。
土肥校長テーブル:土肥校長のプレゼンについて、参加者それぞれの立場からアイディア出しや質問の他、意見を交換した。後半は、東神楽町のグループと合流して議論を行った。教育機関の連携や、教育機関における中核的人材の育成等に話が及び、「いきなり輪を広げるのではなく、まずは中核となる人たちをつなげることが重要」という指摘に納得の声が上がった。

増渕校長テーブル:はじめに市ケ尾高校のコミュニティ・スクールとしての取組が紹介され、参加者それぞれの立場からのアイディアを共有した。まず、集まった参加者の共通の関心事として、自己肯定感の重要性が話し合われた。増渕校長たちは学習意欲を高めるためにはまず自己肯定感が重要だとしつつ、近年、生徒の自己肯定感が低く、失敗を怖れ、できること、できそうなことの枠の中に留りがちであることが指摘された。それに対し、参加者であるメンタルトレーナーの方や飲食業の方が、それぞれの会社の自己肯定感を高める取組を紹介した。また、生徒の自己肯定感を高めるために、まず先生たちの自己肯定感を高める必要があることが確認され、そのために普段心がけていることが増渕校長から提供された。
水野教育長テーブル:「個に応じた教育」ということから、特別支援教育の関係者を中心とした方々が集まり、議論が行われた。学校と他機関の連携という観点から、「いかに教師が個人として外部とつながろうとする意識を持つか」ということや「システムとして学校と他機関が連携できるようにする」ということの重要性が話し合われた。
村松教育長テーブル:村松教育長からいじめ対策に関して、LINE@を用いていじめ相談の実験を行なっているとの実践例の紹介があった。また、シニアや学生のボランティアと協力し、塾に通えない児童生徒へのマンツーマンの学習指導や不登校のサポート、更には体験学習施設の利用者拡大のためへの活動を行なっているとの紹介もあった。体験学習施設に関してはこども食堂として活用される場合もあるとのことだった。

フリーテーマディスカッション②:引き続き気になる教育長・校長の話を聞くも良し、移動するも良し、新しくテーマを立てるも良しの自由なディスカッションタイム。新しく、参加者の発案でテーマに上がった「いじめ・不登校」については、参加者からテーマに関する取組などを簡単に紹介し、不登校生徒への支援策を中心に質疑応答を行った。

クロージングは、それぞれの感想を自由に共有した他、戸ケ﨑教育長から事務局を務める文科省若手職員へのエールが表明され、また、続いて、共同事務局を務めるNPO法人ETIC.代表宮城よりプラットフォームの今後の展開について説明したのち、事務局を代表して弓岡、栗山より教育・学びの未来をともに創造するご参加の皆様へ感謝の意をお伝えして、無事第二部を終了した。

≪参加者アンケートから主なコメント≫

第一部参加者より

参加の動機・期待:「全国の自治体の長の皆さんとのネットワークを結びたい。皆さんの経験を語り合う中で新たな取組を見出して行きたい。」「新しい視点・発想の発見。」「会議ではない場で教育長、同志が話す場を求めて参加した。」「まっすぐな思い(言葉)をもった人との出会い。」「文科省の若手職員が教育の未来のためにアクションを起こしたことに共鳴をして参加した。」「教育に対する信念と志を持った方々との交流による教育観の深まりと視野の拡大。」
改善点:「型にはまらずとらわれず、様々なワークにチャレンジしてほしい。」「計画の変更は辞めた方が良い。」「最初に企画の全体像と個々の取組、それぞれの目的が示されると良い。」「会の流れそのものを参加者の意見を聞き、柔軟に対応できる力が素晴らしいと思った。」
今後への期待、意見・要望:「もっと多くの方に参加していただけるものとなると良い。そのためにも、地方単位で開催があると嬉しい。」「持続可能な活動に!」「カラフル!」「○○市でも官民産学、一体となったネットワークやアクションを模索中。それらの地域での挑戦をプラットフォームに繋いでいってもらいたい。」「各方面にネットワークを広げる機会を作ってほしい。」「火種を拡げていくこと、新たな火種を蒔くこと。」「このプラットフォームから出発して、新たな取組が展開されること、それをサポートする仕組みができること。」「参加者数が増えすぎると発表だけで時間を要する、今回くらいの規模がちょうど良い。」

第二部参加者より

参加の動機・期待:「全国の意欲ある先生、関係者とのネットワーキング。」「教育議論の最前線に触れたい。」
イベントを通じて自らが教育現場等で実践してみたいと思ったこと:「アセスメントの結果をベースとした教育の実証実験。」「地域を巻き込むこと。」「子どもたちの多様性(教育的ニーズ)に応え得る教育システムが既にできていて実践している地域もあるのに広まっていない。知ることができて良かった。」「教育者としての在り方。」
特に印象に残ったこと:「参加者の皆さんの改革を志すモチベーション。」「全国に良い火種がたくさんあること。」「事務局の熱意。」「教育の仕事は、常に笑顔でいること、暇でいること、という話。」「志ある人との出会い。」「うねりを作り、巻き込むこと。」「カラフルな学校。」「学校、教師の在り方。」
改善点:「事前に資料を共有してもらえると良い。事後にでもFacebook等にアップしてほしい。」「テーマ別での議論がもっとできると良い。」「もう少し少人数制の方が議論が深まる。」「議論を深めるためにもう少し長く時間がほしい。」
今後への期待、応援メッセージ、連携アイディア等:「定期的に継続することが重要。今後もぜひ続けてほしい。」「火種を増やし、広げていってほしい。応援したい。」「Facebook等で、今後の、各地域、市、学校での取組や実践などを紹介してほしい(例えば、足立区のフラットフォームの様子)。」

前半の第一部はこちら

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?