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教育・学びの未来を創造する教育長・校長プラットフォーム2019年総会イベントレポート (前半)

教育・学びの未来を創造する教育長・校長プラットフォーム事務局

※当日のボランティアスタッフによる記録をもとに作成した概要ですので、詳細な表現やニュアンス等については実際のやりとりと異なる部分があるかと存じますが、ご容赦いただきますようお願いいたします。

 

 去る3月17日(日)東洋大学白山キャンパスにおいて、「教育・学びの未来を創造する教育長・校長プラットフォーム2019年総会」が開催されました。北は北海道から南は九州まで、総勢約150名(教育長・校長37名、教職員・公務員(右腕含む)約70名、民間企業・NPO等約40名)が参加し、質量ともに充実した議論を行いました。

1.オープニング

 冒頭、事務局より、本プラットフォームの趣旨等ついてご説明させていただいた後、それぞれのテーマ別ディスカッションのテーマ及びどんな方に来ていただきたい方の紹介を行い、参加者の皆様それぞれが、気になるテーマの教室へと移動して、テーマ別ディスカッション前半の時間がスタートしました。

2.テーマ別ディスカッション前半
※話題提供資料はこちら

(1)テーマ①「学力」(約40名)

 冒頭、秋田県大館市高橋教育長より、「大館市には社会貢献意識が高い人が多いので、その人たちに活躍してもらい、市民一人ひとりを先生にして子供を育てることは有効な手段。地域みんなが子供を巻き込むことで、子供の地域貢献意識を高めている。一斉授業だけでなく、グループワークやサークルなど様々な形態を組み合わせて教育を行うのが大事だと考えている。教師が子供を支えるという構図だけではなく、子供同士が支えあう、学びあうという手段が有効、その実現のために必要なのが共感性・協働性で、傾聴や共同作業を重視すべき。いかに優れた「講義型」もあらゆる「学び合い型」に及ばないと考えている。」と話題提供がありました。
 続いて、東京都足立区新田学園土肥校長からは、「小学校で基礎学力に課題があり、問題行動を繰り返していると、中学校での「怠学」傾向、高校での「退学」傾向に繋がるので、早期の学習段階で手を打って、負の連鎖を断ち切ることが大事。様々な施策を組み合わせて行っており、例えば、勉強の苦手な子を対象にした、中1夏季勉強合宿や、授業の型を提示し、それに沿って授業を行ってもらうなど。その結果、ここ6年で大幅な学力の伸びが見られた。昨年のプラットフォーム合宿の際に宣言したことだが、教育行政関係者、教員、民間企業、保護者が教育政策についてふらっと気軽に立ち寄り、議論を行うことの出来るふらっとフォームin足立区を立ち上げた。」と、話題提供をいただきました。

 続く議論では、「良い取組をどう横展開するのかは困難な課題。良い研修を行っても、全クラスでその成果を実行に移すのは至難の業。」「教員の感覚にズレがあることも要因。」「自治体の方針に基づいて、画一的に行うにはどうすればいいかも課題だが、トップダウンのやらされ感も課題。」等の課題や悩みが吐露され、これらに対して、「自治体の方針に形式上沿ってやってしまうのは問題。その意図を理解すること、子供にしっかり届くようにすることが大事なのではないか」「子供に学ぶことの意義をわかってもらうことが何よりの出発点ではないか。」「小学校は子供たちに学ばせるという風土だが、中学校は子供が置き去りにされがちなので、小学校の学びの風土を中学校に活かしてもよいのではいか。」「教科の指導は手段でしかなく、子供たちが将来身に着けるべき能力を身に着けてもらうという大目的を忘れてはならない。」といった意見が上がるなど、2つの地域の実践に、ディスカッションを通じたご参加の皆様のアイディアが加わり、大白熱の議論となりました。

(2)テーマ②「学校マネジメント」(約30名)

 冒頭、神奈川県横浜市立日枝小学校住田校長より「学校はブラックだと言われるが、そもそも人は、一人の人の中ですら多くの色を持ち合わせているものであるから、一面的に見るのではなく、それぞれの色を尊重し、カラフルな場所にすることが大切である。そのために、サーバント・リーダーシップを実践している。また、社会が持続不可能になっている以上、学校を社会の縮図にするのではなく、学校を持続可能とすることで社会を持続可能にする必要がある。」と、「円たくん」を活用したワークショップや職員室の一角をカフェスペースにするプロジェクトなど具体的な取組もまじえた話題提供がありました。
 
 続く議論では、「地域や保護者からのニーズは多様であるため、学校の業務を削減することや改革することが難しい。」「「礼儀正しさ」や「規律」を重んじ、画一的なルールのもとに学校経営を行うと、子どもたちがだんだん疲弊してしまう。」「学校の中で議論をしようとすると、教職員同士でぶつかり、話し合わなくなってしまうこともある中、多様性とまとまりをどのように実現するかに課題を感じている。」「教職員はあらゆる子供と向き合っている中、学校という非常に多様性のある組織をマネジメントしていくことは、世界で1番難しい問題なのではないか。」といった課題・問題意識が共有された上で、「管理職は、自由にやってもいいという空気を醸成することが大切。」「地域・保護者の理解を得るために地道に話し合いを続けていくことが重要。」「世界で1番難しい問題にチャレンジする前向きな集団こそが「学校」という職場である。」といった、”カラフル”な学校経営に向けた多様な議論がなされました。

(3)テーマ③「地域との連携」(約45名)

 冒頭、東京都杉並区井出教育長より、「2030年には学校がなくなるかもしれないということさえ視野に入れた大胆な問題意識のもとで、未来の学校の在り方を議論したい。学校がなくなるかもしれないと考えられる理由は2つある。①子どもが少なくなるから、②学校でやることが他の場所でもできるようになるから。学校の役割は半分になるかもしれない。地域人材を活用したいという議論をするにせよ、未来の学校像をはっきりさせた上で、地域と学校の関係がどうあるべきかをまずは考える必要がある。学校が、教育という大きな社会的役割を果たすハブとして機能するために、どうすればよいのか。学校の存続は切実な課題であるが、地域と学校の協働のあり方を話し合うことで、きっと解決の糸口が見えてくる。」と、参加者が前例や先入観にとらわれずに自由に考え議論するための大胆な投げかけがありました。
 続いて、長野県飯田市代田教育長より、「飯田市では、コミュニティスクールがどういうものかすらわからないという状況から、コミュニティスクールを作り始めた。田舎では地域と学校との繋がりは昔から構築できているが、その上にどういうものを積み上げるのかが課題であった。目指す子供像について学校と地域とが同じビジョンを持つことがコミュニティスクール作りに大切な要素だと思う。コミュニティスクールに対し、学校現場からも反発があったが、学校の運営を一方的な承認ではなく、相互承認とし、地域・保護者の役割分担を決めて、相互評価をする形を取ることで、やっとコミュニティスクールの形が見えてきた。社会教育との接点をつくることによって、地域の学校という機能も生まれた。」と、話題提供がありました。

 続く議論では、「寺を教育と地域との連携の場として活用したい。」「コミュニティスクールのプレーヤーとしてコーディネーターをもっと活用すべき。」「学校側のコミュニティスクールに対する意識改革が必要。第一歩を踏みだす為には大きなエネルギーが必要だが、学校側もその覚悟を持つべきである。」「コミュニティスクール導入のグッドプラクティスを全国的に共有すべきである。」「学校が地域のハブ(=学校の教育の中に多様なニーズを内包していること)になりうるためには、地域と学校との乖離を埋める必要がある。乖離が生じるのは、学校の中だけでは解決できないような、地域で共有すべきissue(介護など)が存在するから。両者をつなぐ役割を果たすのが、コミュニティスクールの未来のあり方である。」「学校現場はトライアンドエラーのエラーが許容されにくく、新しいことにチャレンジしにくい一因となっている。エラーが許容される環境として、コミュニティスクールを活用するのも一つの方策である。」といった、未来の「地域連携」に向けた活発な議論が行われました。

(4)テーマ④「産学官連携・協働や教育政策におけるEBPM推進」(約30名)

 冒頭、埼玉県戸田市戸ヶ﨑教育長から、「学校現場の現状として、3K(経験、勘、気合)で納得できてしまい、実践知や暗黙知が可視化されておらず、チョーク&トークの授業に固執する方々が多い。戸田市の教育改革のコンセプトは「つづける、つなげる、つかう」の「3つのつ」である。教育は新たなことを始めるより、続けることの方が難しく、学校同士・教育委員会同士、そして社会とのつながりが弱い。また、データが蓄積されてもそのデータが活用される機会がとても少ない。また、効率性・生産性も低い。そこで、戸田市では、学校や教室を実証の場(Class Lab)として提供し、成果を還元している。」という、戸田市の実践を共有する話題提供が行われました。

 続く議論では、「5年未満の若手教員が増えてきており、ベテランの経験値の伝承が必要となる今こそが、データの活用を取り入れるチャンスである!」「教員にとって、データ=テストのような認識しかなく、性格診断などもデータだという考え方はあまり浸透していない。」「教育現場には、データを活用するという意識が十分に浸透していないので、データを解釈する部分で企業や研究者に入ってもらうことが大事。」といった、EBPM・産学連携の促進に向けた前向きな議論が行われました。

(5)ふらっとタイム

 テーマ別ディスカッション前半を終えて、メイン会場で懇談したあとは、各テーマの話題提供の皆様から、前半を踏まえての感想及び後半はどのような方に来てほしいか、スピーチいただきました。
 これを踏まえて、テーマ別ディスカッション後半のテーマをどれにするか、参加者の皆様それぞれに決めて、ご移動いただき、テーマ別ディスカッション後半の時間がスタートしました。

                    ※続きは近日公開予定

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