見出し画像

「超江戸社会とクリエイティブイノベーション」

地域、日本、世界をクリエイティブにデザインする「ソーシャルクリエイティブ・イニシアチブ」というコミュニティを9月に発足して、11月と2月と2回のワークショップを開催し活動を展開してきました。今回は、4月に開校した武蔵野美術大学市ヶ谷キャンパスを会場にして、藤元健太郎さんに「超江戸社会」の話題提供をしていただき、クリエイティブイノベーションのアプローチについて複数名に話題提供してもらいました。
イベントページ:「超江戸社会とクリエイティブイノベーション」

新学科の3~4年次のキャンパスは、JRや東京メトロの市ケ谷駅(東京都新宿区)にほど近い8階建てのビル。ソニー・ミュージックエンタテインメントから買い取ったばかりで2021年に向けてリノベーションされています。

超江戸社会 〜テクノロジーがもたらす懐かしい未来〜

D4DR inc. 代表の藤元健太郎さん

まず最初にD4DR inc. 代表の藤元健太郎さんから本来日本はどのような社会だったのか、江戸の様子をご紹介いただきながらこれから私たちが目指すべき社会の姿をお話いただきました。

現在日本の幸福度は54位。江戸から明治政府が日本の仕組みを作り変えてしまったと話す藤元さん。江戸を学ぶということで、本来あるべき社会が見えてくると言います。江戸の町民は文化と生活を楽しみ、棒手振り、損料屋、銭湯などのシェアリングエコノミーが進み、リサイクルが盛んな循環型社会だったそうです。豊かな100万年の江戸。中央集権ではなく、コミュニティ社会循環型社会であった江戸は、文化の担い手は大衆で、それぞれが人生を楽しんでいたそうです。
これから日本が目指すべき社会モデルは「超江戸社会」であり、第四次産業革命が可能にするテクノロジーが、生産性高く、安心安全性の高い中世を実現するのではないでしょうか。

クリエイティブイノベーションのアプローチ

ソーシャルクリエイティブ・イニシアチブ発起人たちから、それぞれがどのようなクリエイティブイノベーションへのアプローチを行なっているか話題提供がありました。

山﨑和彦(Xデザイン研究所共同代表・武蔵野美術大学

2019年4月に設立した武蔵野美術大学クリエイティブイノベーション学科にて「創造的思考力」を実社会でも応用できる人材を育成するために、3つの構想を描き用意したといいます。

1:スタジオ構想
場づくりとして3つのスタジオで未来を提案する。ビジョンを描くためのビジョンスタジオ、プロトタイプをつくるためのプロトタイプスタジオ、リアル体験を作る共創スタジオ(MUJI com)です。

2:研究所構想
ビジョンとプロトタイプを研究し社会へ提案する。「日本をデザインする」「みんなのデザイン」「仕事と生活のデザイン」というビジョンを自らが掲げ3つのビジョンを融合する場として2019年4月に「ソーシャルクリエイティブ研究所」を設立しました。

3:地域コミュニティ構想
共創して、社会へのビジョンとプロトタイプを提案する仲間たち。それが2018年9月から活動している「ソーシャルクリエイティブ・イニシアチブ」です。働き方や生活のデザインを企業、大学、地域みんなでやろう!という活動です。直近では「地域の食文化のデザインを広げる」アイデアソンが開催されました。コミュニティはFacebookグループにて随時募集中です。

長谷川敦士(コンセント代表・武蔵野美術大学)

長谷川さんからのテーマは、日本ならではのビジョンアプローチはできるのであろうかという話です。欧米はトップダウン(戦略型)が言葉で明示化されることが全てというローコンテクスト文化です。一方日本は、ボトムアップ(ムード型)であり、組織の中で欧米風のやり方があり物事が進まないという特徴があります。そこで現在長谷川さんは日本の特徴を生かした、ボトムアップ ×ビジョン駆動型アプローチに注目しているそうです。不確実性の高い中で、新しいデザインを提供できる人材クリエイティブリーダーシップ教育の実践、不確実性のマネジメント、実践と教育を通して抽出していきたいと考えているそうです。

若杉 浩一 (パワープレイス・シニアディレクター・武蔵野美術大学)

デザインの立ち位置、経済は豊かでももう一つ社会を循環させていくデザインがあるのではないかと考えている若杉さん。武蔵野美術大学のクリエイティブイノベーション学科に参画しています。

「MUJI com 武蔵野美術大学は『大学のキャンパスに企業のテナントが入
る』という単純な話ではありません。企業や地域の課題解決に向けて学生
と企業が協働してプロジェクトを起こし、“圧倒的なプロトタイピング”を
経て事業の社会実装を目指します。また、実証研究の入口から出口までを
学内に設けられるという意味で、従来の産学連携の枠組みを超える環境に
もなると期待しています」
引用:市ヶ谷キャンパスに無印良品との共創実験店舗を2019年6月オープン

新しい働き方を模索し、地域の担い手になっていくかをクリエイターたちと模索していく予定の若杉さん。新しい仕事と学びの創造をしていく共生の関係を作り、ささえ、育むチーム作りを目指します。
みなさん一緒にやりませんか?

またイベント当日にソーシャルクリエイティブイニシアチブへの参画が決まり、登壇した木村さんと安武さんにも普段取り組まれているプロジェクトを紹介いただき話題提供いただきました。

木村博之(Tube Graphics)

インフォグラフィックスの仕事をする傍で、2年前から宮城県石巻市の鮎川小学校で「見える化を取り入れた授業」に注力している木村さん。その内容について紹介いただきました。
参考
インフォグラフィックス制作の考え方と手法
これまでの講演、活動について

空間認知能力、可視化能力を高める教育を実践、自分で考えたことを絵で表し、他人に分かりやすく伝えることを「見える化」と呼んでいるそうです。授業を受けた小学生に木村さんが「何をしているの?」と声をかけたら、その子たちは「見える化だよ!」と答えその習得の速さに驚いたそう。「見える化」は、算数や国語など学科別の縦割りになっている授業を、横方向に繋いでいく力となると木村さんは話します。
インフォグラフィックス、グラフィックレコーディング、グラフィックファシリテーションを組み合わせた取り組みを今後も行なっていく予定です。

安武 伸朗(常葉大学)

専門分野はサービスデザインとキャリア教育の2つを強みに常葉大学で教鞭を執る安武さん。今回は大学のカリキュラム内で、行政との課題解決型プロジェクトの実例を紹介してくれました。

デザイン教育の未来を模索する「未来デザイン研究会」 ──静岡でまちとわかものの接点を探る(前編)
目の前の事象に疑問をもち、自ら問いかける力を:常葉大学造形学部「インフォメーションデザインA」
常葉大学造形学部との共同研究結果の発表について

クリエイティブイノベーション学科の紹介

井口博美(武蔵野美術大学教授)

100周年に向けて創立90周年を迎える2019年4月に造形構想学部クリエイティブイノベーション学科を設立しました。武蔵美の伝統と革新の両立のため、とにかく志さえあれば実技試験を外した画期的な入学試験を用意しより多様な人材を受け入れることにしました。創造的思考力を鍛え、社会全体をリードできる構想力を持った人材育成を目指しています。
「ムサビ」、都心で勝負 旗振り役は元出光の剛腕社長
クリエイティブイノベーション学科
教育理念・目標と3つのポリシー
カリキュラム概要
リーダーを育成するだけでなく応援団を作り、巻き込むためみなさんにもどんな関わり方でも良いので社会的ムーブメントにするため「社会的イノベーションの共犯者になってほしい」と井口さんは語りました。

キャンパスツアー

ビジョンスタジオ

実は今回のイベントが開催された場所です。実践型のプロジェクトルームとなっているビジョン・スタジオ。社会へビジョンを提案するためのプロジェクトスペースを目的にし、授業や産学プロジェクトなどで、学生だけ、または学生と企業、行政が一緒にプロジェクトを編成してビジョンを提案するスタジオです。

プロトタイプスタジオ

社会へビジョンのプロトタイプを提案するMakeスペース。場所はスタジオの運営と連携をとり、空間はMakeスタジオ+サービスプロトタイプスタジオとして今後地下にも拡大される予定です。

全体的に木をふんだんに使った暖かな印象のスペース。授業もこちらにて開始しており、教授たちの研究室も同フロアにあります。
今後7月には1階に共創スタジオとしてMUJIがオープン。観察、評価、実体験などのリアル体験スペースを目的として、プロトタイプの観察、体験、シミレーション、評価の場として活用される予定です。オープンスペースやキッチンスペース、ギャラリースペースも設けられます。

懇親会

ソーシャルクリエイティブ・イニシアチブの目指す形の通り、学生、企業、行政など多様な人たちが集まり、懇親を深める時間となりました!

ソーシャルクリエイティブ・イニシアチブのオープンイベントは今後7/19、9/27に開催する予定です。席には限りがありますので、Facebookグループ、イベントページのフォローをお願いします!
一緒に日本をデザインしていきましょう。

Facebookグループ
https://www.facebook.com/groups/225734931327218/

Pearixイベント
https://social-creative.peatix.com/view

文:高野葉子(Goodpatch)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?