トートロジー

トートロジー

駅の近くにある、ファストフード系・半セルフ方式うどん屋さんに入りました。お昼時だったので、とても込み合っていました。お気に入りのワカメうどんに、お約束のちくわ天をトッピングして、私は席に座りました。隣は、小学校に上がる前であろう女の子、その横にはお母さんがいました。

女の子はまだ小さく、椅子に座っていても、あんよがぶらんぶらんしていました。自分の顔よりも大きなどんぶりにふーふー息をかけながら、一生懸命うどんを食べていました。「あっつ、あっつ、おみず」と言って、お冷の入ったコップをお母さんから受け取りました。

ずずず、と女の子が水を飲んだ後、お母さんはこう声をかけました。「あ、コップはね、このトレイの中に置くのよ」と。「なんでぇ」「普通にテーブルに置いて、もしコップを倒してしまったら、隣の人とかにかかっちゃうからよ」

少し食べるのに飽きてしまったのかもしれません。女の子は「うどんっ、うどんっ」とお箸で麺をかき混ぜ始めました。「こらあ。だめよ、食べ物で遊んじゃ」とお母さん。「なんでぇ」「食べ物だからよ」

お母さんは、店内の混雑も気になってきたようで、女の子に早く食事を食べさせたい様子でした。しかし、女の子はそんなことお構いなしで、独り言ともお母さんへの問い掛けともとれるようなお話を展開するのでした。

「もー、おしゃべりばっかりで。おしゃべりは食べるのが終わってからにしてちょうだい。ほらあ、気をつけて。お箸が隣の人にぶつかっちゃうわよ」

「すみませんねえ」と言うようなお母さんの視線を感じ、「いえいえ、お互い様ですよ」という気持ちで軽く会釈する私。つい聞こえてくる親子の会話が楽しく、耳がダンボになっているこちらのほうこそ「すみません」です。

「ごちそうさま、でいいの」とお母さんがたずねた後、女の子がいったセリフが、かなりかわいかったんだよね。「ねー、なんで、うどんってうどんっていうの」
(やすだ)(初出は2010年9月18日)


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