■ジャム瓶のフタの法則

■ジャム瓶のフタの法則(やすだのほうそく001)

開かなくなってしまったジャム瓶。フタの部分を握りしめ、うーうー、力を込めてもなかなか開かない。そうそう、こんな時、役に立つのが、あった、便利グッズ…って、でも、これを使っても開かないよう。

フタの部分を温めたり、コツコツ叩いたり、ありとあらゆる工夫をしてみてもなかなか開かない。「私にちょっとかしてみて」と声をかけられ、託してみると、ポコっ、あっさりとフタが開いてしまったじゃありませんか。

すごーい、あれだけがんばって開けようと努力したのに、あなた、一回の挑戦で軽くクリアしてしまうなんて。ねーねー、どうして開けられたの、と尋ねたら、「タイミングの問題かもね」といたって冷静な反応。

た、タイミング、力を入れる時の、ですか。スナップを効かせるとか、瞬発力を使うとか、なの。やっぱ運動神経、必要なのね。「ううん、そんなんじゃなくて、いうなれば ”声をかける” タイミングかな」だって。

解説しよう。フタの開かないジャム瓶に遭遇した場合、人は開封に向けて様々な方法を試みる。複数名の助っ人の手に渡ることもある。そのような過程を経ると、自然と、少しずつフタが緩んでくるというのだ。

その緩みがピークに達すると、あとは駄目押し、最後の一押しだけなので、その頃合いを見計らい「私にちょっとかしてみて」と言えばよいのだ。もちろん、絶大なるパワーも、高度なテクも必要ない。

これぞ名付けて「ジャム瓶のフタの法則」。

フタが開かないと困っている人へ。努力を続けていれば、いつかは開きます。諦めずに、いろいろなアプローチを試してみましょう。全く歯が立たないと感じても、少しづつ緩んでいるはずだからです。

フタが開かないと困っている人を見かけた人へ。初期段階から手伝ってあげるのも悪くないですが、当人の努力を尊重し、声をかける機会を待ちましょう。一発で開けられたことで、場合によっては尊敬されます。

開かないよう…とがんばっている間に、少しずつフタが緩んでくるので、それを見計らって、いいタイミングで手伝ってあげればよいのですが、声をかけたまではよかったが、その時、まだ、フタがかたくって、開かなかったら…との懸念もわいてきます。

でも大丈夫。開かなくても、そもそも開きそうもなかったフタなのですから、「なんだよう、開かないじゃないか」ってクレームを言われることは、まずありません。結果的に開かなくても、親切にも協力した、ってことでよしとしましょう。

逆に、必ず開くように、ぎりぎりのタイミングを待っている間に、ご本人があっさり開けてしまうこともあるかもしれません。その時は、その時。陰から、そして心の中で「やったね、おめでとう」と言ってあげましょう。

フタが開かないと困っているご本人にとって、一発で開けてしまう”救世主”は、本当にかっこよく見えるものです。しかし、「ジャム瓶のフタの法則」によると、すぐにあきらめて投げ出してしまう人には、救世主は現われません。また、当然ながら、誰にも頼らない人に対しては、救世主は出る幕がありません。つまり、すぐに人に頼るのも、ひとりで努力を貫き通すのも「ほどほどに」、となるわけです。

中には、意識的に「救世主になりたい」と思う人が出てくるかもしれません。しかし、そうなるためのノウハウを「ジャム瓶のフタの法則」が指示しているわけではないのです。ご本人の努力を見守ってあげて、いいタイミングを待ってあげて、手伝ってあげるとか、そおっと応援するであるとか、そんな感覚は忘れないでいようねっ、と語りかけているのです。
(やすだ)(初出は2010年6月19日)

■「やすだのほうそく」シリーズ設定の意図 はこちら
https://note.mu/science_air/n/ne466f10894b7

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Yasuda Kazuhiro(安田和宏)

国立科学博物館 認定サイエンスコミュニケータ https://twitter.com/science_air
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