夏の終わり

夏の終わり

「好きな季節は?」ときかれたら、「それは夏。生まれた季節が真夏だったからね」とこたえていたのですが、さすがに今年の猛暑を体験してしまうと、今後、迷いが生じてしまいそう。

「冬のほうがいい」という人が私の周りには多い。寒くてもね、服、たくさん着ればいいじゃない、でも、夏は暑いから、服で調整するのも限界があるでしょ、と。なるほど、一理ありますねえ。そうなんだけど、夏の突き抜けるような元気さは、他の季節には負けませんよ。

とにかく暑かった今年の夏。汗だらだらで、かーっと暑くなきゃ夏じゃない、とは思うのです。でも、熱中症で体調を崩す人が増加するわ、熱帯夜続きでクーラーに頼らなければなかなか寝つけないわ、では、「暑いからこそ夏」なんて言っている場合ではありませんでした。

気温に関しても文句なく夏。猛暑日となった日数は、各地で観測史上最多を記録した模様です。かき氷タイプの棒付きアイスも飛ぶように売れ、常に品薄状態でした。そして、あまりにも暑すぎて、山や海のアウトドアよりも、美術館、博物館のようなエアコンの効いたインドアでの行楽が好まれたようでした。

空は晴れ渡り、洗濯物はすぐ乾き、布団を干しても気持ちよい。しかし、なんだか夏らしさがないような…。そうです、雨がほとんど降らなかったんです。もくもくと入道雲が立ち上り、夕立がやってくることがなかったんです。ひと雨が涼風を運んでくることがなかったんです。

夏と冬のあいだに秋がある。秋のはじめは秋だけど、夏の終わりは夏じゃない。たとえるならば、夏の終わりは、まるで全力疾走したあと、ふぅーってため息をついている感じ。なんだか今年の夏には「夏の終わり」がないみたい。別に、涼しい季節が恋しいわけじゃない。夏らしい夏が、やはり好きなんだ。
(やすだ)(初出は2010年9月11日)

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