■「本物は現実」の法則

「本物は現実」の法則(やすだのほうそく007)

リアリティっていうのでしょうか。ほんとに手軽に、そして低コストで良い音楽を聴ける時代になったと思います。特に「キレイな音」がありがたく思えるのです。

レコードからCDへ。雑音が劇的に減り、クリアな音になりました。FMラジオからインターネット配信へ。エアチェック(ラジオ放送を録音する)ためには、その曲の長さと同じ時間が必要だったのが、短時間でダウンロードできるようになりました。

録音して曲を残す媒体も、カセットテープからMD、そしてパソコンで扱いやすい mp3 というファイル形式へ。そうすると、再生する機器も、かつてはステレオシステムだったのが、ミニコンポ、ラジカセ、そしてデジタルポータブルオーディオ機器へ。

曲の残し方や再生の仕方も大事だけど、最後の「出口」であるスピーカーやイヤホンが重要であることに気付きます。だって、音楽を感じるのは私たちの耳だから。鼓膜を振動させるために、空気を振動させる機械こそがスピーカーやイヤホンだから。

すると、スピーカーやイヤホンを作る人は、キレイな音が出せるように、がんばって研究開発している人、ということになります。これは楽器を作っているのと同じ感覚なのではないかしら。例えば、本物のオーケストラの楽器と同じ音が表現できるように、と。

実際の演奏とさほどたがわない音を再生できるスピーカーやイヤホンができてしまえば、コンサートに足を運ばなくてもよくなってしまう。「すげーんだぜ、これ。本物と同じような音が出せるんだ」って。

ただ気になるのは、そのコメントを言えるのは、ほんとうの「本物」を知っている人だけだ、ということです。素晴らしいスピーカーができれば、コンサートに行く人は減る。コンサートに行く人が減れば、そのスピーカーの素晴らしさが分かる人が減る。そうすると素晴らしいスピーカーを開発できる人も減っていく…。

本物って、高級で高尚なものということでなく、きっと「現実」でありさえすればよいのです。
(やすだ)(初出は2010年4月17日)

■「やすだのほうそく」シリーズ設定の意図 はこちら
https://note.mu/science_air/n/ne466f10894b7

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