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17エアコンの値段

サイエンスエッセイ 17 エアコンの値段

 同じ畳数用のエアコンで同じメーカー、型番もほぼ同じでいながら値段が機種によって異なる。
 例えばダイキンのS253〇〇〇〇という4機種は、価格com.で44000円、72600円、91963円、108858円といった具合だ。いずれも「おもに8畳用」とされている。以下カタログによると、冷房能力は4機種とも同じ。9万円台の機種はあれこれ機能が豊富なので、それで高価だと思われる。
 では10万円台は何がちがうかというと、暖房能力だ。

 今でこそエアコンなどと呼ばれるが、昔は「クーラー」だった。冷房専用だ。原理は以下のとおり。冷媒と呼ばれるフロンなどの気体を圧縮すると液化する。今まで広い空間を飛び回っていた分子が狭い所に押し詰められるから、運動エネルギーが余るというか、熱に変わる。高音になったこの液体に風を当てて冷やす。冷えた液体を今度は広い空間に吹き出す。今まで狭い空間でぎゅうぎゅうになっていた分子が広い所を飛び回ろうとするから、その分の運動エネルギーを熱エネルギーから得るので、温度が下がる。
 つまり、エアコンはそもそも「冷やす」のが仕事である。
 この原理を逆に使ったのが暖房。上に「風を当てて冷やす」とあるが、その風は液体を冷やした分温度が上がる。これを暖房に使う。ということは、エアコンは夏は室内の空気を冷やし、冬は室外の空気を冷やしているわけだ。
 そこで考えてみよう。夏の室内の温度、例えば30℃の空気を冷やすのと、冬の室外の温度、例えば0℃の空気を冷やすのではどちらが大変だろう。当然、0℃の空気だ。エアコンにとっては夏に空気を冷やす方が、冬に空気を冷やすより楽なのである。ということで、エアコンにとって冬に空気を冷やす暖房機能は負荷が大きい。それができる部材を使わなくてはならないから、暖房能力の高いエアコンは高価になるというわけだ。

 この機構をヒートポンプといい、いわゆるヒーターを使った暖房よりエネルギー効率がいいと言われる。ところが、冬でも比較的暖かい地方では効率よく空気を「冷やせる」が、寒冷地の空気を冷やすのは難しい。それで寒冷地ではヒートポンプによる暖房はなかなか普及しない。とはいえ、技術は進歩していて、上記10万円台の機種は-25℃でも暖房できるとカタログにはある。カタログにそうあるが、どれだけ暖かいかは知らない。

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