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23 AIとボーカロイドと人間


ボーカロイドは人の代わりに歌ってくれるソフトウェアだ。ボカロと略されている。人の代わりとはいえ、やはり抑揚の少ない機械の音だ。だからゆっくりしたバラードのような感情たっぷりの歌には合わない。一方、めちゃくちゃ早口だったり音程が飛んでいたりして人には歌えないような歌は得意だ。とはいえ、機械的なだけなら面白くなく人間のボーカルに近づけようとする努力がされる。
  自室でコンピュータを駆使して曲を作っている人間には、スタジオや機材が必要なボーカルの録音は難しい。そんなわけで、一人で曲を作る人間の間でボーカロイドは多用されバックの動画も作成してネットには作品があふれた。人には歌えないような曲が多かった。
 ところが、その歌を歌っちゃうボーカルが現れた。「うっせえわ」のAdoや「アイドル」のYOASOBIなどなど。
 これは面白い現象だと思った。ボカロは人間ぽく歌おうとし、人間はボカロのように歌う。
 そうして、人間は人間には難しいだろうといわれる歌を歌えるようになった。ボカロによってできることが広がったのだ。
 今、ボカロはAIを搭載してますます人間ぽく歌えるようになっている。ボカロぽく歌う人間はますますボカロぽくなっていくだろうか。やがて、境界がなくなったりして。

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