見出し画像

【SCC2021開催レポート】「子どものアスリートの指導において考えるべきスポーツマンシップ」


2021年1月30日(土)に開催したSCC2021の中の「子どものアスリートの指導において考えるべきスポーツマンシップ」の開催レポートになります。

一般社団法人日本スポーツマンシップ協会の代表理事で、自ら団体を立ち上げて
スポーツマンシップ教育を広める活動をされている中村聡宏さんと、
スポーツ心理学の観点からコーチングやウェルビーイングについて北米で研究され
日本に戻られて早稲田大学で研究と実践を続けられている木下敬太さんを迎えて、
スポーツマンシップの理解を軸に何のためにスポーツをするのかについてを考えました。このセッションからエッセンスを抜き出したレポートをモデレーターを担当した山本隼也が書かせていただきます。

■セッションの狙い

このセッションでは若年層のスポーツの指導において、いまだに少なくない罵声や暴言、勝つための指導者中心の指導のような子どものアスリート指導の現場で起こって問題に対して勝ち負けを追うだけではない、子どもの長い人生における成長についてを考えて何のためにスポーツをするのかを指導者自身が捉え直すヒントになって欲しいという思いで企画をしました。

セッションの冒頭で中村さんが話されていた「議論が勝手に活性化して、自分たちが啓蒙しなくてもいい世の中になればいい」というのは我々スポーツコーチングJapanとしても同じ思いだなと感じました。

■スポーツマンシップとは

中村さんによる日本スポーツマンシップ協会のスポーツマンシップの定義
「Good Gameを実現しようとする心構え」でそれ構成しているものが『尊重』『勇気』『覚悟』の3つに分解される。
尊重:プレーヤー・ルール・審判を大切に思う(対自分以外)
勇気:リスクを恐れず責任を持って決断し挑戦する(対自分自身)
覚悟:困難を受け入れ最後まで全力でやり抜く(自分自身と自分以外のバランス)

これが唯一無二の正解ではないし、今後スポーツをよりよく活用していくためにどう捉えるのがいいかは指導者と考えていきたい。この中で指導者も考えることで自分で考えられ子どもたちをスポーツを通じて育んでいければいい。

国際的にもアスリートがアスリートとしてだけではなく人としてスポーツを使って自分の人生をどう豊かにしていくかということ、アスリートが社会に対してどうインパクト与えていけるかは大きな研究テーマになっている。

■スポーツマンシップを高めると勝ちにつながるのか

スポーツの現場でも結果としてパフォーマンスが上がったという声があったという声は日本スポーツマンシップ協会のセミナーの後に実際に寄せられたということ。
科学的にもスポーツマンシップが高まると選手のウェルビーイングが高まるという研究結果とウェルビーイングが高まるとパフォーマンスは上がるという研究結果があり、勝てるか勝てないかは相手がいることなので、勝てるとは言えないが、スポーツマンシップを高めるとパフォーマンスが上がるということは科学的にも根拠を持って言えることだという。

■理解すべき子どものモチベーション形成の3要素

子どもに質の高いモチベーションを持ってもらうための3つの要素を満たすということをコーチ・保護者は考えて欲しい。
 自発性:自分でチョイスをして行動する
 有能性:自分が努力をすればできると自分のことを信じられる
 関係性:親やコーチとうまくいっている
選手に選択肢がある状態をつくる、目標とそこへの道筋を考えるサポートをコーチ・保護者が担っていけるように、選手が成長できているという感覚を得られるようにサポートをする。

■保護者が子どもに与える影響度の大きさ

スポーツマンシップをどう理解していくかを考えたときに選手とコーチだけでなく、保護者まで含めて、三位一体で学んでいくことが必要ではないか。
コーチと選手と関係よりも親と子の関係の方が強い。さらに子どもの年齢が低ければ低いほど練習時間よりも圧倒的に家庭での時間の方が長いので、その時間に対してもアプローチを考えていかなければその理解は深まっていかない。完全に一致しなくても目指していることの目線合わせクラブで考えていることのシェアは必要。

■スポーツマンシップはスポーツだけの話ではない

スポーツじゃなくてもスポーツマンシップは養うことはできる。社会の中で生きてく上でどのように考えていくかを身につける、正解のないものをみんなでコミュニケーションを取りながら考えていくということだから、必ずしもスポーツをやらなければ身につかないものではないが、勝ち負けのあるスポーツにチャレンジすることで生まれやすい。

その上で選手もコーチも保護者も勝ちと負けが出てしまうというスポーツの構造を理解した上で、それを受け入れながらどう成長していくかを考えることが大事。ほとんどの場合に正解などないにも関わらず、指導者の考えをさも正解であるかのように押し付けてしまって、子どもたちが考える機会や、本質的なスポーツの価値を奪ってしまっていないかは指導者は常に考えていたい。

■選手は指導者を本当に見ている

選手にとっては指導者が1番のモデルであり、すごく影響力のある存在だということを自覚したい。口ではスポーツマンシップが大事と言いながら、それを欠いた行動をとっていたり時の言動の不一致については選手は非常に敏感。指導者の考え方・行動・哲学は選手のスポーツマンシップに影響することは研究でも明らかになっているということ。
だからと言って指導者が完璧であることは不可能だし、その必要もない。常に学ぶ姿勢を持って子どもたちの成長に寄り添う人としてどうあるべきかを考えるといいのではと思う。

画像2

■最後に指導者の皆さんに向けて

単に試合に勝った負けただけではなく、スポーツを人間の成長ツールとして捉えてほしい。たとえば仕組みとして、選手同士の交流を促すラグビーのアフターマッチファンクションのようなことを他のスポーツでもできるといいのではないか。
(中村さん)

俺が教えてあげる、俺が育ててあげるではなく、一緒に成長するというスタンスでいることが大事。子どもにとって指導者は一生影響受け続ける存在であるということを認識して指導に臨んで欲しい。(木下さん)

■参考資料

中村聡宏さんの著書『スポーツマンシップバイブル』


木下敬太さんに出演いただいたSCJチャンネルのYoutube動画
「Well-beingとパフォーマンスの関係を考える」
https://youtu.be/8LVbmbuoiQQ


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?