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【SCC2021開催レポート】 『チーム作りにおける選手のリーダーシップとその育て方』

[登壇者]
・廣瀬 俊朗氏
元ラグビー日本代表キャプテン
株式会社HiRAKU 代表取締役
一般社団法人キャプテン塾代表理事

・鈴木 隆二氏
元U20フットサル日本代表監督
フットサル日本代表コーチ

[モデレーター]
・藤森 啓介氏
SCJメンバー
日本ラグビーフットボール協会ユース戦略部門
プロラグビーコーチ


■リーダーシップとは

廣瀬
自分がどんなチームを作りたいか、どんな人間になりたいかの軸を持つことが大事だと思う。ラグビー日本代表であれば『憧れの存在になりたい』リーダーはチームの原点かつ、行きたいところを確認して、周りの人に共感してもらう必要がある。キャプテンは一緒に戦う仲間なので嫌われない方が良くて、この人と一緒にやりたいと思ってもらえるような関係を築く必要が仲間とある。

鈴木
はじめに監督として、「勝利を呼び込むチーム」というスローガンを設定した。そして、チームの始動に当たって3つのチームフィロソフィーを示した。①「前のめりの姿勢」②「シンクロすること」③「ファミリーになる」ことである。全選手はこのフィロソフィーに沿って、リーダーに頼るU20フットサル日本代表の一員ではなく、選手1人1人がチームを引っ張っていくという精神力や表現力(リーダーシップ)を身に着けるように、フィロソフィーに基づいて意見や主張をしてもらうように土台や仕組み作りをした。そのリーダーシップとは『自分の主張を発信する力』と『仲間からの受信』の両方をしっかりできる選手になって欲しいとの思い出チーム作りをした。そのために環境作りに配慮する必要があった。

■チームに4人のキャプテンを設定

鈴木
1人の選手やキャプテンに頼るのではなく、4人のキャプテンがそれぞれの個性と主体性を持って、それぞれ自分のセット(4人)を引っ張ってもらうことを意図して4人にした。それぞれのリーダーシップは異なり、プレーで引っ張る選手もいれば、仲間と話し合ってチームを作るキャプテンもいるので1人に責任を大きく与えるのではなく、みんなでチームを作っていく仕組みにした。結果的にキャプテン以外の選手の主体性の発揮にも繋がったと思う。

廣瀬
共同キャプテンやリーダーズグループなどはラグビーにもあるけれど、4人のキャプテンは聞いたことない。むかし、関東学院ラグビー部が4人キャプテン制を実施したと思うけど、最終的には1人にしたと思う。

鈴木
日本人の主体性を引き出すためには1人1人の選手に『自分のチーム』としての実感を持ってもらう、感じてもらうことが重要だと思い、チームを3セット構成にしてそれぞれのチームにキャプテンを配置し、ゴールキーパーにもキャプテンを1人置いた。全てのフィールドプレーヤーが全試合出場できるように、3セット構成に監督としてチャレンジした。やはり選手が伸びるのは公式戦。試合に出て役割があることを実感してもらう仕組みづくりを大切にした。試合中の厳しい中で発揮されるリーダーシップや主体性が大事なので、厳しい試合の展開を全選手に経験し解決してもらうことでチームとしての経験値を上げていき、選手に乗り越えてもらうことにした。

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■出られない選手のモチベーションをあげるためには

廣瀬
2015年W杯ではリーダーシップグループというものを作り、そこには8人のリーダーがいてそれぞれのリーダーが選手3人4人とコミュニケーションをとることで、腐る選手や状況が少なかった。私がキャプテンを務めている時はバディー制度、メンター制度を作ることで元気のない選手の情報交換をしてアプローチしていた。1人のリーダーが全部やるのはきついけど、熱量や感度の高い仲間を作ることが大事でみんなに参画してもらう仕組みづくりで解決することが大切だと思う。

■リーダーは周りを巻き込む仕組みづくりと声を拾い上げる

廣瀬
リーダーは引っ張るイメージが強いけどみんなから助けをもらうことが大事。リーダーになりたてはなんとかしないといけないや全部自分でやらないといけないと思うけど、それでは空回りして周りから1人でやっているように見られてしまう。周りの人に当事者意識を持ってもらうためには助けてと言えることや仕掛けることが大事。私も東芝キャプテン1年目の時は前のキャプテンの虚像を追いかけてダメだった。その時にみんなからアンケートをもらうことで厳しいフィードバックを受けた。そこから自分が思っていることを言うようにしてついてきてもらうようになった。アンケートはきつかったけどとても良かった。フィードバックをもらうことは勇気がいるけど何かを変えないといけないモヤモヤ感で実施した。
結果的にはアンケートを答えた側が助けようと思うようになってくれたし、当事者意識を高めるためにはアウトプットをしてもらうこと。その中でリーダーは自己認識を行うことが必要。

鈴木
1人1人とコミュニケーションをとるように心がけ、マンツーマンで話す時間をとるようにした。直接コミュニケーションを取ることで、選手をより知ることができ、1人1人にあったメッセージを見つけ出すことができる。全体ミーティングでチーム力の向上を図り、1対1の個別ミーティングを主体性の発揮に繋げた。個別に話すことで、彼らから学ぶこともできるし、引き出すことができる。伝えながら問いかけていくスタイル。

■自主性と主体を育てるためにどんな環境を作ったのか

鈴木
代表としてのフィロソフィーを明確に3つ立てた。その3つは『前のめりの姿勢』『シンクロすること』『ファミリーになる』。
団体ボール競技はプレーしている最中に情報量が多く、フットサルはタイムアウトはあれど途切れる時間が少ない。その中でコントロールできないカオスの状況や厳しい状況に置かれても、一歩前に踏み出す前のめりの姿勢でいて欲しいと考えた。シンクロとは、フットサルはピッチが狭く、試合中に考える余裕がない。直感的、反射的なプレーの連続である。瞬時に味方と同調できるコンビネーションが試合を優位に進めることができる。その意味において『シンクロすること』をあげた。最後は、意見が違うことで収集がつかない場合でも、必ず元に戻ることのできるファミリーを前提にしたチーム作りをした。この3つを掛け合わせてチームを作っていく中で常にフィロソフィーと現状を合わせた問いかけを意識して指導した。

廣瀬
リーダー自身が周りをリスペクトすること。ラグビー日本代表は生まれてきた国が違う多様性のあるチーム。意識したのはそれぞれの国の挨拶。国の挨拶を覚えて寄り添っている姿勢を見せることで信頼関係を周りの選手と築いてきた。マイケルリーチは日本のことを覚えて欲しいと思って俳句の勉強をしていった。

■日本人と海外の選手の違いについて

鈴木
スペイン人は大人から子供までどんどん主張してくる。外国人の選手はそれぞれが意見を持っていて、集団になっても失われることがない。日本の場合はなくなるわけではないが、縦の関係がスペインよりも強く、集団になると主体性をオープンに出すのを遠慮してしまう傾向にある。
スペイン人は子供の頃から自分の考えを伝えることを求められるので、考えを言語化する能力も高い。何をしたいどう思ったかを積極的に出す。
選手とコーチの関係性もお互いにリスペクトがある中で、縦の関係よりも横の関係である。

廣瀬
日本ではコーチと縦の関係が多く、良い方向ではないと思う。縦の関係では考えない選手が増えてしまう。短期的に成果を出すには良いかもしれないが、その選手のその後の人生を考えると良くないと思っている。

■指導者のリーダーシップとは

廣瀬
学び続けながら、アップデートしながらは大事なポイントだと思う。選手に対して1人1人に向き合って思考力やモチベーション鼓舞することが大事で、時間はかかるかもしれないがその積み重ねの結果、その時には伸びないかもしれないが次のコーチがする時に生きていくので大事だと思う。2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦、最後のシーンでエディーさんと違う決断をしたけど勝った。自分の範疇の中でしか考えられないと自分の範疇にしかチームや選手はならない。自分を越えて欲しいとの思い、抜け出して欲しいと思える気持ちが良いのではないか。成功体験にすがりすぎないことも大事だと思う。コーチングする対象や環境も変わっていくのでアップデートが必要になる。

鈴木
学び続けることと、指導者自身が常に挑んでいくことが大事。強い思いから生まれる姿勢や態度は選手に伝わる。指導者は練習中や試合中に選手に見られている。試合では、準備してきたことを発揮するために前のめりの姿勢と、最後の責任は自分にあるということを示すことが大事。

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■キャプテンを選ぶ際に重視していること

鈴木
個性を重視している。声がよく出せて味方に意図を伝えることができるのも個性。ただ、伝える方法はそれぞれ。1対1で話す選手もいれば、プレーで引っ張る選手もいる。チームが苦しい状況に置かれても常に一歩前に出られる選手をキャプテンに置きたい。視察する時も、良い状況ではみんな良いプレーをしているので、厳しい状況の中でどのように振る舞い、プレーしているかを1番見ている。

廣瀬
悪い時にどのようにプレーするかと常に同じで言動を一致する軸がほしい。みんなを信じて一緒になってやって行こうとするのはラグビーにおいては大事だと思う。周りの人に対する愛と思いやりはとても大事。

■最後にメッセージ

廣瀬
リーダーの姿は人それぞれであり、おのおのが特徴を把握して伸ばすことが良いと思う。完璧なリーダーはいないので自分が信じて貫いているところで、いろんな人に助けをもらえるようにして進めていくとチームが良くなると思う。周りの動きが悪い時には自分に落ち度がなかったのかを学びながら自分に矢印を向けるのが大事だと思う。

鈴木
常にキャパオーバーの目的目標を持って挑戦する。できることを繰り返すのではなく常に新しいことに挑戦し、キャパシティーをオーバーしていく強さがリーダーには必要ではないか


■プロフィール

鈴木 隆二|Ryuji Suzuki
1979年5月7日生まれ。東京都出身。小学校でサッカーを始め、大学卒業後フットサルへ転向。2005年フットサル日本代表に選出。日本、スペインでプロ選手としてプレー。スペインサッカー協会フットサル指導者資格トップレベル3取得。14年以降スペイン2部Bリーグ監督、育成年代監督、U-12,14カタルーニャ州選抜コーチ。16年U-19フットサル日本代表監督就任、筑波大学大学院で博士前期課程を修了。現在はフットサル日本代表コーチ。

廣瀬 俊朗|Toshiaki Hirose
北野高校を卒業後、慶應義塾大学理工学部に入学し、ラグビー部で活動。高校日本代表、U19日本代表を歴任。高校、大学ともにラグビー部主将を経験。東芝ブレイブルーパス、日本代表でも主将を務め、2016年3月に現役引退。株式会社ビジネス・ブレークスルーアスリートアンバサダー、男子プロバスケットボール「B.LEAGUE」応援キャプテンに就任。一般社団法人キャプテン塾代表理事、株式会社HiRAKU 代表取締役。

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