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オンライン講義にはじめて取り組む教員の方へ

前回の記事はいわば中上級者向けでしたので、今回は初心者の方向けにまとめてみます。ツールの使い方などは既に多くの方が解説されているので、もう少しメタな視点から。(文字オンリーですみません。)

1. まずは自信を持つ

講義デザインや学びの場づくりといったこれまでの経験の大半はオンラインでも「活きます」。こうして、わざわざ記事に目を通してくださる勉強熱心の方はきっと大丈夫です。ぜひこれまでの経験に自信を持ってください。

不安を無理に隠そうとすると、それはネガティブな空気として、受講生に伝わりますよね。学びの場とは、本来楽しいもののはず。新しいチャレンジを楽しむくらいの気持ちで臨みましょう。

2. 「はじめてのこと」であることに素直になる。活用する

不安は素直に口にすれば半減するものです。そして、活用しましょう。テクノロジーが得意な人(学生、生徒、同僚)は沢山居るはずです。その人達を頼ったり、巻き込んだりしましょう。釈迦に説法ですが、役割を持ってもらうことは主体性を引き出すことになりますし、頼り頼られるはラポールの基本です。「うちの生徒は、、、(主体性が無い)」という思い込みは教員サイドが創っていることも多いです。教員が弱みやチャレンジする姿をさらけ出し、そして生徒を頼ることで、気がつかなかった可能性が花咲くかもしれませんよ。

また、教員同士、お互いの講義を見たり、質問したり(ましてや口を出したり)という機会はありませんよね。もし、そういう雰囲気や組織文化を変えたいならば、今回のような時がチャンス!

3.  「差」を把握し、対応策を考えておく

オフラインとの「差」で大きいのは、ICTツールの使い方などテクノロジー面でしょう。特にトラブル発生時に講義という場が崩壊しないか、そこが一番心配では無いでしょうか。

テクノロジー面では、先に述べたように誰かに頼りましょう。これは、事前準備の段階だけでなく、講義本番もです。TAやアシスタント、あるいは受講生に役割を与えても良いでしょう。どんなに慣れた人でも、オンラインの講義は人手が多いに越したことはありません。特にトラブル対応時は、教員は全体の進行役ですから、全体が止まらないためにも重要です。

4. 最初からパーフェクトを目指さない

最初から、zoomだけで完結させる必要はありません。LMSも同様です。既に慣れ親しんでいるLINEやメール、学内の課題・成績システムなどで実現できることは、それでいいのです。講義資料を予め共有することや、当日講義で話す台詞を文字化したもの(トランスクリプト)などを配布するのは良いアイデアです。なお、PowerPointには、声を入れることができる機能があります。それらもオススメです。これらは、万が一、一部の受講生が満足に講義に参加出来なかった場合にも、リスクヘッジの材料として役立ちます。

5. 内容を詰め込めない(同じ時間なら)

「トランスクリプトなんて創るの?」という驚きがあると思いますが、最初のうちは作りましょう。オンラインとオフラインではびっくりするくらい尺の感覚が変わります。私も最初は、オンライン90分でオフラインの45分程度しか授業を進められませんでした。我々は普段、受講生の反応をみて、話すスピードや内容の詳細さをコントロールしているのです。講義時間内に終えられるように、トランスクリプトで練習しましょう。

6. トラブルシューティングの基本

途中で一部の人が接続できないといった状況になることは、とてもよくあります(^^;) その場合でも、学習機会という点でなんらかの代替手段や個別サポートが必ずあるという約束を受講生と結んでおき、安心を与えるようにしてください。

また、トラブルの状況に応じて、全体の進行を止めるか、トラブルシューティング役の人間に任せて全体の進行を再開するか、その基準を決めておきましょう。(例: 2分なら全体を止める。3人以上同時にトラブっていたら止める等)トラブルを共に乗り越えるのも、全体の学びです。全体の進行を多少止めざるを得なくとも、慌てずに対応しましょう。

7.トラブルシューティングの具体策

7.1 講義開始時に接続できない・不具合

まず、回避することが重要です。最も効果的な方法は、正規の講義開始時刻15-10分前には接続させることです。無事、接続したら、雑談でもしてもらい、マイクやカメラが正常に動作するか、他の人に音声や動画が届いているかをお互いにチェックして待っていてもらいます。

接続できないときのために、LINEやケータイなどトラブル時の代替連絡手段を持っていることも重要です。できれば、クラス全体のLINEグループやFacebookグループがあり、トラブル発生時もそこに書いてもらうようにすることで、教員以外の人が助けを出すことが出来ます。

マイクやカメラのトラブルが起きた際は、まず、zoom等を再起動(アプリの終了→再起動)し、会議室に入り直してもらいましょう。それでもダメなら、OS(MacやWindows, iOS(iPhone,iPad)Androidなど)の再起動で直ることがほとんどです。それでも直らない場合は、別のデバイス(PCでダメなら、iPhone)で参加してもらうのが妥当です。講義前の時間だけでは、本格的なトラブルシューティングは時間が足りないからです。

7.2 途中で通信が不安定になったとき

講義の途中で、音が途切れる、画面がカクカクになる、といった具合に、不安定になった場合は、通信環境に問題があることが大半です。その場合、まずは、ビデオをOFFにします。全体が不安定な場合は全員にOFFにしてもらいます。ビデオは音声に比べて桁違いに通信量が多いため、ビデオをOFFにして、少し待つだけで大抵は安定します。また、不安定さが増すと通信が切れてしまい、会議室から出てしまう場合がありますが、zoomの場合、再接続を試みますので、しばらく待ちましょう。

なお、教員等の進行役の人は、複数のネットワーク環境を持っていましょう。(例: メインのWiFi環境だけでなく、WiFiが不調なときの予備として、ケータイからテザリングできるようにしておくなど)

8. 顔が見えることは大事

先に、ビデオOFFの話をしましたが、つまりは、原則として常時ビデオONを強くオススメします。発言者は聞いてくれている人の顔の表情がわからないと想像以上の恐怖を感じるものです(経験豊かな教員ですら。笑)。また、顔が見えないと、受講生の参加意欲が下がります(他のこと、いわゆる内職が発生しやすくなります)。

ネットワークの不調でビデオOFFにせざるを得ないときも、講義の最初と最後は多少無理してでもONにしてもらいましょう。オンライン講義の場合は、ワークショップなどで行われるチェックイン、チェックアウトをオススメします。この際には、ビデオONにしましょう。

9. その他のノウハウ

他にも、すべての参加者にイヤフォンやヘッドセットを使用してもらうことも重要なポイントです。声の聞きやすさだけでなく、ネットワークの安定にも効果があります。

また、音声の品質は場に大きな影響を与えるので、進行役の教員や発言者は、できる限り背景が静かな場所から参加しましょう。PC内蔵のマイクではなく、別途マイクを接続して話すとなお良いです。

画面共有・ホワイトボード共有を積極的に使うことや、チャットの使い方、メモ書き(ノート)の共有や、資料の共有のために、Google Driveやその他、ファイル共有のシステムを併用するなど、よりアドバンスなオススメは沢山ありますが、それらはまた別の機会に(あるいは、沢山の情報がすでにWebにあります)

10. 最後に

はじめてのことに取り組むことは成長のチャンスです。教員としてのこれまでやってきたことを見直し、必要に応じて自己変革する機会と捉えられるといいですよね。また、先に述べたように、教員組織の組織文化が改善される機会になるかもしれません。はじめてのことを共に取り組むことは、学習する組織としてのクラス全体のレベルアップに繋がります。

また、ノウハウや気づきを近しい人で共有する機会をできればオフィシャルに作りましょう。今回のトライアルを一時的なものにせずに、これから先にも(組織として、学校として)活かしてゆくことに繋がります。個人の暗黙知を学校全体の知にするのです。

必要に迫られて場当たり的に対応するだけではもったいない。今回のことを機に、いままでの常識を疑ったり、したくてもできなかったことをやってみたり、新しい学習環境の可能性を探求する人が一人でも増えてくれると、この国の未来も明るい方向へシフトするのではと思っています。チャンスを楽しみましょう!

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