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精神科訪問看護の未来を考えてみました

割引あり

有り難いことに精神科訪問看護に関する講演や執筆の機会をいただくことが多く、精神科訪問看護について考える機会も多いので、「この業界の未来ってどうなっていくのだろう?」という未来予想図を私なりにまとめてみました。

この先、メンタルヘルスの問題も深刻化している中、高齢化も進み、多くの同業者は「今のような形は崩れずに続くのではないか」と思われているかもしれません。

私も、この5年ほどは大きな変化は訪れることはないと思いますが、しかし、あと10年後に今と同じような形で残るということはないような気がします。

そう思う理由を述べていきます。

自立支援医療制度に支えられている報酬体系

まず、1つ目の未来予想図からです。

精神科医療は自立支援医療制度が使えます。自立支援医療制度とは、心身の障害を除去・軽減するための医療について、医療費の自己負担額を軽減する公費負担医療制度です。

基本的には医療費は1割負担になるということ、この1割負担が過大にならないよう医療保険での世帯単位での所得区分により、自己負担で支払う上限額が決まっています。つまり、その上限に達したら、それ以上の精神科でかかる医療費は国が負担してくれるということです。

加えて、自治体によっては自己負担分も保健種別によって、還付される助成があったりします(この辺りを詳しく知りたい方はお住まいの市町村のHPにて、自立支援医療制度を検索してもらえたら調べられると思います)。

この制度による医療費の軽減が受けられるのは、各都道府県又は指定都市が指定した 「指定自立支援医療機関」(病院、診療所、薬局、訪問看護ステーションなど)になります。で、精神科訪問看護を実施している事業所は基本的に申請し、指定を受けていれるので、自立支援医療制度が使えます。

誤解がないように先にお伝えしておくと、私自身は、この制度自体は、精神疾患をもつ人が継続的に医療を受けるために必要なものだと考えています。しかし、そのケアの質は問われず、精神科訪問看護の算定がとれる医療者(看護師、保健師、作業療法士など)が、訪問すれば精神科訪問看護基本療養費が得られるということです。

何が言いたいのかと言うと……
もう少し掘り下げながら、お伝えしていきます。

精神科訪問看護のレセプトが急上昇

今、訪問看護の中でも精神科訪問看護のレセプトがめちゃくちゃ伸びています。これは以下のサイトの訪問看護実態調査から確認することができます。

これだけレセプトが伸びているということは、利用者数も増えていること、そして、支援を提供する事業所も増えているということです。つまり、精神科訪問看護の普及という意味では、この数年でかなり進んだという見方ができるのですが、次に問われるのは質です。

では、その質とは何か?ですよね。

例えば、これまで何年もかけて研修を履修したり、自己研鑽を積み、実技をこなした看護師と、そうでない看護師であっても、その看護師が算定要件を満たしていれば、問題なく算定がとれるということです。

身体の方も看護師免許を持っていれば算定がとれるのでは?という指摘を受けそうですが、身体の方は、身体ケアや症状管理ができなければ、実際の訪問看護が成立しません。

一方で精神科訪問看護では、科学的根拠に基づいた医療やケアをに提供している支援者と、そうでない支援者の見極めは非常に難しいのです。

例えば精神科では対話が大事と言われていますが、コミュニケーション技術を用いたり、何らかのエビデンスに基づく対話と、自己流の対話の違いの違いは表面上はわかりにくいと思います。しかし、その訪問看護を受けている利用者さんからは、その質の違いは明らかにわかります。

あと、根拠に基づくケアを行っていれば利用者さんの生活の質も変化していきますので、その成果は時間と共に客観的にもあらわれてきます。

精神科訪問看護の質を考えた報酬体系はどうなっていく?

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