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10月9日は「天空の日」だったということで…

嫁はやっぱり…!


noteでの投稿2作目でさっそく争いが勃発しそうなネタをご用意しました。皆さん、お覚悟はよろしいでしょうか?(ほぼ私自身に語りかけているような気もしますが)

兼ねてより私は「ドラゴンクエストシリーズ(以下、ドラクエと表記します)」をこよなく愛しておりまして、オンラインの「Ⅹ」を含めたナンバリングタイトルは制覇しました。いちばん好きなのは「Ⅶ」なのですが、石板探しやお馴染みのモンスターに遭遇するまでの道程が長いなどの批判が大半を占めた影響で、リメイク版はだいぶ端折られてしまい個人的にショックを受けたものです。あの未知なる冒険をしている感がよかったのに、ほかのプレイヤーたちは案外せっかちだ、と。

とまぁそれはさておき、ドラクエで天空といえばⅣ、Ⅴ、Ⅵ。特に中間の「Ⅴ」は、『たけのこの里vsきのこの山』と同等の不毛な論争が30年近くにわたって繰りひろげられているものがあります。そう、知る人ぞ知る【嫁論争】。途中でデボラが参戦して三つ巴になり、ますます白熱したしょーもない争いが令和をまたがっても続いております。

幼馴染のビアンカ、お嬢様のフローラ、その姉のデボラ。比率でいうならビアンカが圧倒的多数を占めて70%、次なるフローラが20%で、新キャラのデボラは10%だと思われます。

さて、私は初回プレイ時からずっと【フローラ】を選択しています。おそらくこれだけで大勢の人から顰蹙を買っていると思いますが、誰が何と言おうと私はフローラを選び続けます。


デボラを選んでみた


つい最近、X(旧Twitter)で意気投合したFFさんに「デボラと結婚してみてください」と告げられスマホ版で契りを結んだのですが、幾度となく心がへし折れそうになりました。今はとある展開により黒髪の嫁と離れ離れになっていますが、どことなく安心感を得たのはきっと気のせいではないでしょう。

単純に相性が合わないのだと思います。対等どころではなく、「足の裏を舐めあげよ」と言わんばかりの唯我独尊ぶりな態度に冷や汗を流すばかりで、落ち着きどころがいつまでたっても見つからないのは地獄そのものと言っても過言ではないでしょう。

たしかにデボラは自己肯定感が高く精神的自立は果たせているので寄りかかられる心配はいっさいないのですが、仕上がりすぎているせいで私がいなくても何とかなってしまいそうなオーラが常時漂っていて、ひとりでいるときが最も安心します。自己肯定感が比較的低い自覚がある人には彼女の存在はたいへん頼もしく見えるでしょうが、私の感覚からすれば「別にいっしょにいなくてもいいや…」となってしまいました。私は彼女の「イヌ」になりたくてともにいることを選んだわけではないですし、典型的なワガママお嬢様ほど付き合いに困るものはないです。生きる世界が違いすぎた。。


じゃあビアンカは…?

では、大多数のプレイヤーを虜にしたビアンカを選ぶかと来ればそんなことはなく、むしろ毛嫌いするくらい視界に入れたくないキャラクターです。
リリースされた年を踏まえると「メンヘラ」という俗語がまだ世間を賑わせていない時代でしたから、強がる彼女を多くの主人公は黙って見過ごすことなどできずに、「おれが守ってあげないと!」と瞬間的に結婚することを決めたことでしょう。

しかし私にはそれが彼女のあざとい手口に見え、多くの同性を術中に嵌めたように思えたのです。
しかもわずか小学5年生の身空で。

ビアンカとの出会いはサンタローズの自宅に帰った直後のこと。たがいの親同士が再会を分かち合うなか、「おとなの話は長いから2階に行かない?」と。ドラクエの主人公が口を利けるのは、選択肢の「はいorいいえ」くらい。個人的には後者を選びたいところを、なんとどちらを選んでも強引に2階の子ども部屋に上げさせられる始末。さらに頼んでもないのに絵本を読んであげると言って聞かず、適当な本を棚からとっていざ読み上げようとしたら、「難しくて読めない」と文句を垂れる。その前には謎の年齢マウント(彼女は8才。2つ年上というので、主人公は6才)。CDシアターの主人公も当時の私と同じ心境を抱いたようで、台風の目と意思疎通を図っているような感じになったらしく、

「何だったんだ、あれは…」

と呆然とするしかありませんでした。
彼女としては自分のほうが年上だからお姉さんっぽく振るまってみせたかったのでしょうが、「慣れないことはするもんじゃない」とリアル長子の私が毒づくには充分な痴態を見せてくれました。
気まずい(と思っていたかどうかはともかく)そのようななかで母親が階下から呼んでくれたおかげで息を吹き返し、「いい子にしてるのよ?」と言いながらその場を離れたビアンカに対して、「やっと嵐が過ぎ去った」と胸を撫でおろした齢10の私。

でもそれだけで終わらないのがドラクエの意地悪なところ。魔界のゴーストの群れつどう廃墟に赴いて悪霊を追っ払うミッションを任された主人公は、街中では威勢のよかった年上の女友達が背後に隠れて怖気づくのを呆れ見ながら、いじめられた子猫を助けるために果敢に挑みます。結果、親分ゴーストを涙目にすることができて、魔族に居城を乗っ取られた今は亡き王と妃を安心させ眠りにつかせることに成功しました。が、助けた子猫に名前をつけた後、あたかも名付けたあなたがその子を育てるのよ、と言わんばかりに強制的に引き剥がされ、後10年近く会わずに終わるのです。育てるのはいいとして、誰がどのように育てるのかの話し合いもなしに、「いいから育てろ」というのはいかがなものなのでしょうか。

SFCの技術でいろいろ文句を言われるのは手厳しい、という当時の開発者たちの悲鳴が聞こえてきそうですが、パッケージ、カセット、取扱説明書、攻略本と、「メインヒロインといえばビアンカでしょ!」と目白押しで彼女のイラストが出てくるほど、重要なポジションであることをプレイヤーに定着させたい開発陣の意図が嫌でも鼻についていやらしく感じます。

幼馴染の女の子との再会のさせ方も運命的なものにしたかったようで、結婚指輪のひとつを探す旅に出かけた際に水門の錠を開ける必要が生じて、近くの山村を訪れ管理人のもとを尋ねるとあのビアンカがうれしそうに登場するではありませんか。さすがに2桁以上の年月を経ての偶発的な出会いだったので話がさぞ弾んだことでしょう、主人公も饒舌になったようで、花嫁の薬指にはめる指輪探しに彼女が、「協力する」とのお達しが。

しかし彼女に対する印象が初対面のときからすこぶる悪く、厚意で申し出てくれているとはいえ視界どころか同じ空気を吸うのも嫌だった私は渋々了承するも、船旅のときはともかくダンジョンに足を踏み入れるときは同行を断りました。可愛らしくおねだりしてみせたところで私の決意は揺るぎません。いじけた様子を見せたところで面倒臭さに拍車をかけただけです。

花嫁用の指輪を手に入れたあと、さすがに水門の錠を開けてくれたことにすら杜撰に扱うのは違うと思ったので、彼女の自宅まで送り届けようとしたところ、

「ビアンカのことをよろしく頼んだよ」

と、育て親のダンカン。何、彼女ついてくるの??

婚約者(→だと小学5年生当時の私も今現在の私もそう思っていたフローラ)のもとへ急ぐ主人公(=私をはじめとしたプレイヤー)と、何故か村には戻らずに婚約者の待つ豪邸に闖入する幼馴染。これだけでもだいぶシュールなのに、そのまま水のリングを婚約者の父親に手渡して結婚間近なところまできて、

「でも、そちらの女性は……?」

と、フローラ。困惑するのも当然ですし、それを察したビアンカが紡ぎ出した言葉は、

「えっ? 私? 私はビアンカ。主人公とは幼馴染で…」

と、さりげなく古くからの付き合いであるというマウントをとり、

「さあてと! 用もすんだことだし、私はこのへんで……」

と、白々しさ全開で村に帰ろうとします。
無論そこで何も言わずに帰そうとするはずもないフローラが呼び止め、究極の選択を促すワンシーンのきっかけをプレイヤーにあたえるのです。


ビアンカかフローラか(はたまたデボラか)


このあと結婚前夜のイベントが発生するのですが、デボラは主人公のことを小魚呼ばわりして、フローラは気持ちよさそうに寝息を立てて、ビアンカは落ち着かなそうに風にあたっています。

デボラの小魚呼ばわりの真相は、フローラと結婚したのちにデボラのもとを訪れたときの仲間会話で判明します。つまり、デボラと結婚しても何でそう呼ばれるかがわからないままエンディングを迎えるわけです
ちなみにフローラ通の私ですら上記のことは知るよしもありませんでした。(デボラにまったく興味がなかったので)

次に誰もが選ぶであろう幼馴染のビアンカ。彼女は最初の出会いからプロポーズの瞬間に至るまで強がっていて、しかもわかりやすい嘘をついてまで主人公の気を引かせようとしてきます。それがわかりやすく表現されているのがまさに結婚前夜であり、何故そこまでして主人公を手に入れようとしているのか、長年わからずにいました。

しかしとあるエッセイを読んで、彼女の思惑がわかってきました。

すべての女子はメンヘラである

〝すべて〟だなんてまた大胆な表現を用いたな、と思わず手にとり熟読してみたのですが、女性エッセイストが脱メンヘラに至るまでの軌跡を書き記したそれは、多くのメンヘラが抱える感情の複雑さをうまく言語化した迷作であったことは頷けました。ただでさえ感情でものを訴えることが多い彼女たちですから、いかようにして言葉に作り替えて表現するかが、たいていの人はわからない。そこへスイスイさんという方が現れて一冊の著書にまとめてリリースしたことで、メンヘラの実態が如実にわかる日がきたわけで。

ということで、ビアンカはメンヘラです。そして彼女のことを放ってはおけん!と鼻息を荒くしながら求婚する男性の多くがメンヘラホイホイです。

「気は強いけれどとびきりの美人」という評は町人の言ですが、気は強くても芯が弱いので、肝心なところで日和る男性とほぼ同じタイミングで弱々しさが露呈すればおたがいにストレスが発生することは疑いありません。片方が上がってもう片方が下がればまだ良いのですが、終始強がっている幼馴染なので、男勝りといえば長所になりえなくもないものの、小心さまで瓜二つとなれば逆に不安になってしまうでしょう。

ビアンカを見ていると私自身を眺めているような気がしてしまい、気に食わないのです。いわゆる同属嫌悪というやつですね。恋人関係ならまだ平和的だったのかもしれませんが、夫婦関係となれば、

「特性の違う者が手をとり合って同じ方角をめざして歩んでいきましょう」

となるはずなので、性格から何からほぼ変わらない人種がそばにいると自分自身と付き合っているみたいで落ち着かなくなるのです。孤独でいるときからもうひとりの自分と付き合っているのに、さらに自分と何ら変わり映えのない他人が近くにいれば安心感よりも苛立ちが募るばかりです。

ビアンカを選ぶ理由のなかに、「フローラにはアンディがいる」という回答があります。たしかにそれはそうなのですが、ビアンカのことを度外視したうえでアンディとためを張ってみればわかることです。いかに彼が頼りなく見えてくるかが。

似たような事例でいえば、「ドラえもん」第20巻の『雪山のロマンス』でしょうか。人間は短所で愛されるというのはありますが、あまりにも短所の数が多すぎて話の終わりまでハラハラさせられますし、同性ののび太よりも異性のしずかちゃんの気持ちに共感してしまうほどです。

アンディは小さい頃から彼女のことを大切に想っていて、「お金も宝もほしくありませんが、彼女がただそばにいてくれるなら…」と愛の強さを物語ってくれる場面があります。初回プレイ時は「この人がフローラと結婚するのかな」と思いました。が、ルドマンに厳しい条件を言い渡された日の夜に彼のもとを訪れると、呪文を幾らか習得していることを誇らしげにアピールしながら、誤発動で寝床を燃やしてしまいそうになるさまを目撃します。それでも彼は、「負けません…!」と対抗心を剥き出しにしてきますが、まさか想い人のフローラに陰で「昔から弱虫だった」と囁かれているとは夢にも思わないことでしょう。

別の場面でフローラはアンディのことを、「兄のように慕っていた」と供述していますが、私がアンディなら恥ずかしすぎて彼女の前に立つことすら億劫になります。彼女のことを不安にさせたくない気持ちが完璧主義者のハートに火をつけ、醜態を晒すくらいなら主人公のことをすなおに認めてそのときを迎えると思います。悔しい気持ちは隠しえないでしょうが、実力が伴わないのに意地になって挑んだところで負けは確定していますし、何よりフローラに悲しい思いをさせてしまうことに耐えられそうにないです。

あんな奴とフローラをくっつけたくないし、ビアンカはメンヘラだし、デボラは結婚しなくても充分に幸せに生きてゆけます。
もっというと、ルドマンの娘に対する親心が空回っているのも問題でして、行動力と精神力の両方が備わった花婿を強く望むがゆえに、危険な旅を冒させることでいついかなるときもフローラを守れるような男かどうかを見定めて安心したかったのかもしれません。ですが肝心のフローラがそれを是としておらず、「私などのために危ないことをしないでください」と複数の花婿候補者に発信するありさま。彼としては面目丸つぶれかもしれませんが、フローラの側に立って考えれば、そもそも花婿を募集した段階でミスを犯していて、娘は乗り気ですらなかったでしょう。

そこへ、たまたま主人公がサラボナの町にやってきたことで彼女のなかの運命の歯車が動き出し、愛犬のリリアンが主人公に懐いたがゆえに赤の他人から気になる存在へと気持ちが昇華して、幼馴染のアンディに声をかける余裕がなくなるほど主人公に夢中になっていた。怪我の功名というべきか、結果的にルドマンの計画どおりに事が進んだわけです。

できたら私もそんなことはしたくない。だが逆に考えてみれば、条件はともかく、頑固で融通のきかない彼女の父親の期待にあえて応えれば今後余計な手出しはしてこなくなるのではないか。

そんな意地の悪いことを考えた小学5年生当時の私は炎のリングと水のリングを探し求めて、死の火山から滝の洞くつまで縦横無尽に駆け回ったうえで運命の瞬間を迎えるのです。そして――――!


私は人と結婚したい

どうも私はビアンカおよびデボラを選んだ人たちを遠くから眺めていると、鳥肌が立ってしまいます。何故かというと2組のカップルのどちらかが人以外の動物に成り変わっているように思えるからです。

まずはデボラ。これはわかりやすくて、プロポーズをした男性側がイヌになるんです。先ほども愚痴っぽく述べたとおりで対等な関係などろくに結べやしないと本気で思っております。

ビアンカはうさぎに見えます。何が何でも主人公といっしょにいようとしたり、「NO」と答えるとその気にさせようとするような素振りを見せたりして、どこかヤンデレっぽい雰囲気を感じさせてくれるおかげでデボラとは違った恐怖を覚えるのです。

消去法になってしまっていますが、唯一フローラだけが真人間として接することができて、私はとても安心します。シナリオの流れで彼女は8年間修道院にいたというのもあって、神の使いのように思えてくることすらあります。いずれにせよフローラとともにあることで心から安らげるので、私はこれからも彼女を選び続けることでしょう。

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