「無音の方が知的作業の学習効果が高いーー『無音』について考える」

放送の様子はこちら(下記サイトでは音声配信も行っています)。
「無音の方が知的作業の学習効果が高い〜『無音』について考える」(Screenless Media Lab.ウィークリー・リポート)
2019.6/14 TBSラジオ『Session-22』OA

 Screenless Media Labは、音声をコミュニケーションメディアとして捉え直すことを目的としています。今回は音がない状態、つまり「無音」ついて紹介したいと思います。

◾無音がもたらす効果

 私たちの生活は、就寝時等を除けば、毎日大量の音に溢れています。それが気づかないうちにストレスになっていることもしばしばあります。実際、音が私たちの生活に悪影響を与えることがあるのも事実です。WHO(世界保健機関)は1999年に「環境騒音ガイドライン」を発表し、交通騒音による健康への悪影響を伝えています。

 そのような生活の中で、時には無音状態を求めたくもなることもあります。耳栓をしたり、最近ではノイズキャンセリング機能が搭載されたヘッドフォンを用いても、騒音をカットすることもできます。

 またコミュニケーションにおいても、実は無音は多くの意味をもっています。例えば騒がしい教室の中で、教師がしばらく黙っている、つまり「無音」の時間をつくるだけで、生徒は自然とだまります。無音は音がない、だけでなく、無音であることもまた、重要なコミュニケーションになるのです。さらには音声認識システムにとっても、私たちの発する音がどこで途切れているか、つまり無音になるかを感知することが、文章を理解する上で重要な要素なのです。

◾無音状態は学習効率をアップさせる

 他にも、無音には様々な効果があります。その一つが、適度に無音の状態をつくると、実は勉強などの知的作業に有効である、というものです。勉強中に音楽や歌詞のないBGMを聴くという人も多いかと思われますが、それらは文章を読んだり記憶するといった複雑な作業においては無音状態に比べて作業効率が悪いという結果が出ています

 他方で、足し算をし続けたり文章を複写するなどといった単純作業をする場合には、無音よりもBGM(クラシック音楽)が有効に機能します。またスポーツや感情を扱う作業にも、BGMはプラスに作用します。BGMは気分を誘導する効果があり、喫茶店やスーパーマーケットといった商業施設では利用されますが、勉強のような知的作業には、必ずしも有効ではないのです。

 このように考えてみれば、音楽やBGMを流した方が勉強が捗るという人は、感情が高ぶることで効率が良いと勘違いしてしまっているだけで、知的作業そのものの効率は決して高くと言えるでしょう。ただし、気分の高揚はその後の学習意欲にもつながるので、学習効率全体を考えれば必ずしもマイナスな効果だけを意味するわけではありません。

 また、無音状態がずっと続いてしまうと、悪影響にもなることもあります。外の音を99.9%カットする特殊な部屋に居続けると、45分程度で精神に異常を感じてしまいます。無音空間では、自分の呼吸や心臓の音が大きく聞こえてきて、その音をかき消そうとして、幻聴が聞こえてくるケースもあります。

 これは極端な例ですが、無音だけでなく、適度な音がリラックス効果をもたらすことも事実です。そのため、集中やリラックスなど、目的ごとに音や無音を選択する必要があります。それはスマホのように、便利だけれども使いすぎがストレスの原因になるのと同じようなものかもしれません。用途に合わせた音、あるいは無音を、用途に合わせて適切に設計する必要があるのです。

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