「人工知能で自分用にカスタマイズできるーー進化する「補聴器」の最新技術 」

放送の様子はこちら(下記サイトでは音声配信も行っています)。
「人工知能で自分用にカスタマイズできる〜進化する『補聴器』の最新技術」(Screenless Media Lab.ウィークリー・リポート)
2019.7/5 TBSラジオ『Session-22』OA

 Screenless Media Labは、音声をコミュニケーションメディアとして捉え直すことを目的としています。今回は聴覚障害者のある方に向けた、「補聴器」の最新技術ついて紹介したいと思います。

◾補聴器について


 補聴器は、音声が聞き取りづらい聴覚障害者の聞き取りをサポートする器具です。音を聞くための手段としてはもう一つ、人工内耳もあります。これは手術によって人工的に音を聞き取る臓器をつくるもので、補聴器では聞き取りが困難なユーザーが利用しています。

 補聴器には単に音を大きくするだけでなく、ユーザーひとりひとりの聴力に合わせて音の大きさを調整したり、近年はノイズをカットするなど、様々な機能が追加されています。また補聴器にはユーザーの症状に合わせた機能面だけでなく、耳かけ型、耳あな型、ポケット型といった形、また近年は色やデザインなども多くの種類が存在しています。そのため、一見すると街中で見かけるイヤホンと見た目が変わらないものも多く、装着していても違和感のないものもあります。ちなみに値段も機能やデザインにもよりますが、両耳用で10万円程度〜数十万円するものまであります。

◾人工知能を利用した補聴器


 最新の補聴器の中には、スマートフォンから直を飛ばして直接通話したり、音楽を流したり、メッセージのやりとりを可能にするものもあります。


 中でも、人工知能を用いた機能も注目されています。人工知能と3Dセンサーを搭載した「リビオAI」という補聴器は、雑音カットやスマホとの連動機能などに加えて、身体や脳の健康を管理する機能や、27の言語をリアルタイムで翻訳する機能もあります。

 通常使われる健常者用のイヤホンでもこうした機能は搭載されはじめていますが、補聴器においても、同様の技術が用いられるようになっているのです。

 こうした最新技術によって、「聞く」能力を補完する以上の効果をもたらす器具も現れはじめています。例えば特定のノイズ音をカットすることで、騒々しい環境でも人の声だけが聞こえるようにしたり、将来的には聞きたい人の声だけを聞こえるようになったり、逆に、敢えて何も聞こえないような環境をつくることも可能になるでしょう。

◾イヤホンと見分けがつかないことも


 進化する補聴器ですが、デザインや機能性が高まる中で、一見すると健常者用のイヤホンと見分けがつかず、警察がイヤホンと補聴器を間違って補聴器ユーザーを注意した、という事例がありました。同様に、電車内などでも、補聴器ユーザーが音楽を聞いていると勘違いされ注意されることで、補聴器ユーザーが恐怖を感じる、といった痛ましい事例もあります。衆議院でも補聴器とイヤホンの混同について、議論されたこともあります。

 機能性やデザインに優れたことは補聴器ユーザーにとって歓迎すべきことですが、イヤホンと見分けがつかないことで、補聴器ユーザーが誤解を受けてしまうこともあります。聞こえが困難なことを示す「耳マーク」もありますが、まだまだ認知度が低いといった問題もあります。

 補聴器の必要性を訴えることと同時に、補聴器を利用していることを適切に伝える方法もまた、求められているのです。このように、音に関して困難を感じている人々が身近にいることを、私たちは忘れてはならないのです。

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