好感度や信頼度は声にも宿るーー声に印象を与える「パラ言語」を考える

放送の様子はこちら(下記サイトでは音声配信も行っています)。
「低い声の方が信頼度が増す!?〜声に印象を与えるパラ言語」
(Screenless Media Lab.ウィークリー・リポート)

2019.4/19 TBSラジオ『Session-22』OA


 人を見た目で判断するな、とはよく言われますが、実は声によっても人は判断されています。音声をコミュニケーションメディアと捉え直すことを目標とするScreenless Media Labですが、今回は音声が人の印象を決定する、大きな影響力について考えます。

◾理想の声は存在する

 ところで、理想的な声とはどのようなものでしょうか。イギリスの言語学者アンドリュー・リン氏が2008年に行った研究によれば、映画『ハリー・ポッター』のスネイプ役で知られる、俳優の故アラン・リックマンの声が理想となります。研究では50人の声を、トーンやスピード、周波数に1分あたりの単語数、イントネーションといった観点から分析しています。

 その結果、理想的な声に関する方程式が現れます。それは、発話は1分あたり164単語以下で、文と文の間に0.48秒の間を取ること、さらに文末のイントネーションは落とす、といったものです。アラン・リックマンは、これらの方程式に該当していたことから、理想の声として選ばれたのです。

 もちろん、この研究は英語が対象となっていることから、日本語の場合はこの限りではないかもしれません。しかし、少なくとも実際に理想的な声を科学的に証明できることが、この研究からわかります。

 また、話し手が聞き手に与える印象のうち、トーンやスピード、イントネーションといった言葉の周辺情報は「パラ言語」と呼ばれています。話したものを文字起こしして読むのと、実際の声で聞くのとで印象が異なるのは、このパラ言語が関係しているのです。

◾声が選挙に与える影響とは

 このように、理想的な声には文法があることがわかりました。では声は私たちにどのような影響を与えているのでしょうか。一例を挙げれば、「好感度」や「信頼性」があります。

 人の印象を形成する非言語情報としては、音声(聴覚)よりも表情(視覚)の方に優位性があるといわれてきました(マガーク効果)。しかし近年の研究では、人の印象形成には聴覚の方に優位性がある場合も指摘されています。

 また、声は選挙の投票にも影響を与えます。党首討論で話す政治家の音声を、周波数を操作して聞かせたところ、低い声の方が好感度や信頼性が高いと感じられるのです。声の高低差で政治家の印象が変化するということは、つまり投票行動に声が影響するということです。

 見た目で人を判断してしまいがちだからこそ、巷では見た目で人を判断してはならないと言われます。ですが実際は、声によっても人は判断されているのです。私たちがあまり意識的に気づくことはありませんが、声は毎日発せられていることから、本人の印象に大きく影響を与えているのです。これは公平性の観点から考えてみると、なかなか複雑な問題を抱えています。

 「見た目で人を判断するな」と同じように「声で人を判断するな」というのであれば、例えば党首討論などでは、むしろ合成音声技術を用いて全員「同じ声」にした方が公平だ、という意見があってもおかしくはありません。なぜなら、政治はパラ言語によってもたらされる印象ではなく、実際に行われる政策内容で判断すべき点が、圧倒的に多いからです。声で損得が生じるのは良くない、ということです。

 また、近年の優れた合成音声技術を利用して、他人に気づかれない程度に好感度をアップさせた自分の声をつくる、といったことが可能になる日も、遠くないでしょう。すると、自分の声を信頼性の高い声に変換した上でインターネットにアップロードし、印象形成を行う、といったことも当たり前になるかもしれません。これは良いことなのでしょうか。

 こうしたことを、全て手放しで称賛することは難しいでしょう。音声の効果が注目されればされるほど、このような問題に対して、私たちはこれまで以上に様々な観点から考える必要があります。また、我々を取り巻く現状の環境を適切に認識し、問題を論じて行かなければならないのです。

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