読解力向上には音声を聴くことが効果的だーーシャドーイングについて考える

放送の様子はこちら(下記サイトでは音声配信も行っています)。
「『読む』ためには『聴く』が大事!?〜シャドーイングの効果とは」(Screenless Media Lab.ウィークリー・リポート)
2019.5/10 TBSラジオ『Session-22』OA

Screenless Media Labは、音声をコミュニケーションメディアとして捉え直すことを目的としています。今回は、音声における学習効果について考えてみたいと思います。

◾読解力にはリスニングが必要?

 文章を読んで理解する読解力については、1986年にPhilip B. Gough(フィリップ・ゴフ)とWilliam E. Tunmer(ウイリアム・タンマー)によって提唱された、「The simple view of reading」が有名です。それによれば、読解力を構成する要素として、文字を認識して音声化する力(decoding)と、会話などの一般的な話し言葉を理解する力(listening comprehension)があります。

 重要な点は、この両者が合わさることで、文章の意味や文脈の理解、つまり読解力(reading comprehension)の向上に寄与するという点です。音声を聴くことは、文字を読む読解力を高めるための大きな要因にもなるのです。

 私たちは日常的に物事を学習するとき、それを「読む(reading)」のか「聴く(listening)」のかについて、注意して区別しているわけではありません。ですが、実際は本の内容を読むにも、文字を音声化し、また音声の内容を理解する力が必要とされているのです。

 実際に、語学学習においても、英語字幕を読みながら英語を同時に聴くことで、学習効果が高まることが知られています。昨今流行りのオーディオブックなども、本の内容を音声として聴くことで、学習効果が更に向上することを意味するのです。


◾声を発するシャドーイングと読解力の関係

 読みながら音を聴くことと同時に、自分自身で文章を声に出して読むことにも学習効果があります。英語学習で取り入れられる、音を聴きながらその音を追いかけて発音する「シャドーイング」はその一例です。

 シャドーイングには、音を聴いてそのまま真似る通常の意味のシャドーイングと、音声を聴きながら文字も同時に読む「テキスト提示シャドーイング」がありますが、これらはリスニング能力を高めるものとして広く知られています。

 シャドーイングはまた、言葉のリズムや強弱、イントネーションなども同時に学習することができます。そして、シャドーイングをした後では読解力の向上にも寄与したという研究もあります。人は文章を読む時脳内で複雑な作業を行いますが、語彙の確認といった基礎的な作業が音声を通して自動化されることで、文章の意味内容の確認など、複雑な作業に脳が集中できるということです。いずれにせよ、声に出して読むことは、読解力を向上させるのです。

 このように見ていけば、一人図書館にこもって本を黙読するよりも、自宅で音を聴くと同時に声に出して学習した方が、読解力の向上につながると考えられるでしょう。事実、古代ギリシアでは、本は声に出して読むのが一般的でした。私たちもまた、小学校などで教科書を声に出しながら読むことを教えられてきましたが、そのような方法は正しかったということです。

 しかし現代社会においては黙読や、大学でも精読を行うものが大半で、文章を声に出して読む機会は圧倒的に少なくなっています。ですが、音を「聴く」ことによる学習効果が解明されている中では、上述のオーディオブックやポッドキャストなど、「聴くこと」による学習について、もっと多くの時間を割く必要があるように思われます。

 昨今のインターネット環境では、読むことや書くことが主流になり、聴くということがおざなりになりがちではないでしょうか。しかし、聴くことや声に出すこと、つまり音声には大きな可能性が秘められているのです。

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