「知らない人んち(仮)」第一話脚本・応募作品

第1話の募集に参加します。

ドラマの続き……

■本編……

○シェアハウス・和室
   きいろ、慌てて鞄に絵を隠す。
   キャンがふすまを開ける。
キャン「どうしたの?」
きいろ「(戸惑って)い、いや……別に!」
   キャンの疑う視線。(なんか怖い)
きいろ「(言い訳を思いついて)バッテリー! スマホの充電危ないなー、ってなっちゃって! 充電器探してたんだけど見つかんなくって! それでバタバタって!」
キャン「それで。荷物まとめてたの?」
きいろ「いや、なんか、片付けながら!? 私って、どこか抜けてるんだよねー。ユーチューバーなのに充電器忘れるんだもんなーアイタタタ……」
キャン「そうなんだ」
きいろ「一回、家帰って取ってこようかな」
キャン「大丈夫だよ」
きいろ「え?」
キャン「うちにもあるから。使って」
きいろ「あ。そ、そうだよね。ありがと!」

○リビング
   机の上で充電されているスマホ。
   向かい合って席に座っているキャンときいろ。
キャン「きいろちゃんて、今までどんな動画撮ってたの?」
きいろ「ああ……なんか、『旅先で、バカやりました!』とか『居酒屋何軒はしごできるか頑張ってみました』とか?」
キャン「検索したらでてくる?」
きいろ「う、うん!」
キャン「きいろ、ちゃんって? ひらがな?」
きいろ「そ、そうだね」
   自分のスマホを取り出して、検索するキャン。
キャン「あーホントだ。でも再生回数……」
   キャンの見ている画面の再生回数32回である。
   きいろ、キャンのスマホを覗き込み。
きいろ「実は、まだ始めたばっかりだから! これからこれから! 私、なりたての新人ユーチューバ―だからさあ!」
キャン「なんでユーチューバー?」
きいろ「人生がけっぷちからの一発逆転的な! ね!」
キャン「そうなんだ。私、そういうの親近感かも!」
きいろ「え?」
キャン「昔、アイドルやってたんだけど」
きいろ「えー! やっぱりキャンちゃん、可愛いと思ってました!」
キャン「でも色々あって辞めちゃって」
きいろ「もったいない……!」
キャン「いいんです。人気も出なかったんですし。色々傷ついたりして……。それで」
きいろ「なんか、大変だったんですね……」
キャン「昔の話です! いまは、心機一転、一発逆転してやるぞ的な気分です!」
きいろ「そうなんだ。それでシェアハウス?」
キャン「……そう。そうなんです!」
きいろ「(違和感を感じて)……?」
   そこへアクが帰って来る。
アク「ただいま。いま夕飯作りますので」
   台所へ引っ込むアク。
きいろ「アクさん。本当にいいんですか?」
アク「このシェアハウスでは僕が料理担当なんで。全然」
きいろ「そうなんですね。素敵です!」
キャン「頼りになるんです。アクさんって」
きいろ「そうなんだ」
アク「男だって、簡単な料理くらいできないと女性に笑われますからね」
   アク、台所で料理を始める。(カレー)
   ジェミがリンゴとナイフを持ってやってくる。
ジェミ「リンゴでも食べない?」
きいろ「え。は、はい!」
   ジェミ、キャンの隣に座り、ナイフでリンゴの皮をむき始める。
   切られる、リンゴ。
   席について、見つめる、きいろ。
きいろ「ジェミさんって器用なんですね」
ジェミ「そうかしら」
きいろ「写真。やられているんですよね?」
キャン「あっ……」
ジェミ「そう。ね。写真」
きいろ「どんな写真撮っているんですか?」
ジェミ「神聖な写真です」
きいろ「へ?」
ジェミ「人が安らかに眠っている写真」
きいろ「ああ……眠っているところ」
ジェミ「違います。亡くなった人を撮るのが私のライフワーク」
きいろ「へ、へえ……」
ジェミ「人が一番本当の自分に還って、嘘偽りのない、顔を見せるそんな瞬間を写真に収めているんです」
きいろ「す、すごい。芸術のことは私よく」
ジェミ「リンゴ」
   ジェミ、切ったリンゴをきいろに渡す。
きいろ「あ。どうも」
   と、リンゴを食べようとする。
   が、なんだか視線を感じる。
   ジェミとキャンが凝視している。
   リンゴをかじる、きいろ、なんか困惑。
ジェミ「じゃ、夕飯出来るまで。私、暗室にいるから」
キャン「はーい。よろしくお願いします!」
   ジェミ、不敵に微笑んで、去る。
きいろ「(なんかモヤモヤと)……」

○2階・廊下・暗室・前
   ジェミ、暗室のドアノブに手を置く。

○リビング
   アクがお皿を運んでくる。
アク「できました。男の手料理」
きいろ「わー最高ですね! 男性の手料理なんて食べるのいつぶりだろー!」
アク「そっちのお皿がキャンちゃんとジェミさんに、それに俺。これが、きいろさん」
きいろ「あ。どうも」
アク「キャンちゃん、ジェミさん呼んできて」
キャン「はーい」
   キャン、去る。
   アクと視線が合う、きいろ、微笑。
きいろ「ほ、ほんと! 男の人が料理って素敵です!」
アク「無理して褒めなくていいよ。それに。どうせなら、食べてみてから」
きいろ「あ。そうですね」
   キャンが戻って来る。
キャン「ジェミちゃん。手が離せないって」
アク「そっか。じゃあ、三人で食べようか」
きいろ「い、いいんですか……?」
アク「ジェミさんは、そういう仕事だから」
きいろ「(戸惑って)そういう……?」
   席に着く、アク、キャン、きいろ。
アク「(料理を前にして)種を明かせば、レトルトカレーに。チンした温野菜を混ぜた、超簡単・具沢山カレーです! でも、ちょっとだけ隠し味、入ってますけど」
キャン「(きいろをみて)食べないの?」
アクとキャンに見つめられる、きいろ。
きいろ「(急に緊張しつつ)い、いただきます」
   きいろ、食べる。
きいろ「あ。おいしい! おいしいです」
アク「よかった」
   アクとキャンは食べていない。
きいろ「(食べたら安心して)なんか、私、疑っちゃったんです。すみません。なんかこの家不思議だな。って。玄関には子供の自転車とか。老司尿の杖とか。リビングに犬いないのにゲージあったりとか。2階の閉じられた部屋とか。変わってるなーって。でもそれがシェアハウスなんですね!」
沈黙。
きいろ「え? 違うんですか……?」
キャン「やっぱり……私たちのこと……」
きいろ「え? 違う。なんかきっと違う!」
アク「ちょっと昔話をしましょう」
きいろ「は、はい!?」
アク「(淡々と)昔々あるところに。仲良しの家族がおりました。普通の家庭。どこにでもある普通の暮らし。夫は浮気をし、妻も浮気をし。でも。普通の家族を装って暮らしていました。ですが、ある日……」
きいろ「(恐る恐る)何の話でしょう?」
アク「『サルとカニ』ってお話ですよ。知りません? 昔話」
キャン「いい話」
きいろ「え……?」
アク「仲間で力を合わせて、悪い奴を懲らしめるわけです」
きいろ「え。ええ。知ってますけど……」
アク「悪い者は懲らしめられなくては、ね!」
きいろ「あの……。今のお話を察するに……この家は……」
アク「知らない人のうち」
きいろ「……!」
アク「なんて、冗談ですよ」
きいろ「そうですよね。だと思いました。てってきり本気にしそうになりました! 私って、ホント抜けて(急に続かなくなる)」
   アクとキャン、きいろを見る。
きいろ「あっ……」
   きいろの手からスプーンが落ちる。
   きいろは立ち上がろうとするが、ふらっとしてその場に倒れる。      

   動けない。

アク「隠し味、入れすぎたかな」
キャン「あんなに食べるから……」
きいろ「な、な、な(なんで)……」
アク「君は、見てしまったかしれないから」

   きいろは、倒れたまま、意識を失う。

きいろのMO「私の人生の信号は、黄色から赤に変わってしまった、のかもしれない!」
                (つづく)

(備考)

シナリオ形式  約10分 (400文字換算・10枚)

今後の執筆と制作の糧にしてまいりたいと思います。