ラスト・サマー・ラブ (モノローグドラマ001)

「ラスト・サマー・ラブ」
■人物
男子

■本編
男子のMO「強い風が吹いている。今年も夏がやってくる。そして、僕は思い出す。君の声、君の言葉、君の感触……失ってしまったものすべてを……」

男子のMO「君からの連絡が途絶えて、1年が経としていた……」

男子のMO「今思えば、僕たちは、付き合っているとは言えない関係だった。友達以上、恋人未満という短い距離を行ったり来たりする……。それはお互いにとても居心地がよくて、それがずっと続いていけばいいのにと思っていた。でも、それは僕だけが抱いていた幻想だったんだ」

男子のMO「去年の夏。君からの告白を、どうして僕は拒否してしまったんだろう……」

男子のMO「君が一歩踏み出した勇気をあの時の僕は受け止める事が出来なかった」

男子のMO「君の言葉は嬉しかった。心が震えた。生まれてきてよかったと思った。でも。同時に怖かったんだ。自分の本当に望んでいたことが叶う事が怖かった。もしかしたら、自分のせいで君を壊してしまうんじゃないかって……怖くて、怖くて」

男子のMO「僕は君から逃げたんだ」

男子のMO「だから、僕は、もう二度と君に連絡はできない。連絡はしない……」

男子のMO「あれから1年、君からも連絡は来ない。一度度切れてしまうと、二度と取り戻せない関係があるのだと知った」

男子のMO「僕は君が好きだったんだ。そのことにいまさらながらに気づくなんて。でも、そう気が付いた今でも、僕は逃げ続けている。本当はわかっている。自分が弱いだけだって事」

男子のMO「風が強く吹いている。今年も夏がやってくる。僕はこれからも夏が来るたび思い出すだろう。君の声、君の言葉、君の感触……そして、失ってしまったものすべてを……」

              (おしまい)

今後の執筆と制作の糧にしてまいりたいと思います。