見出し画像

【声劇台本】065「水たまりフィロソフィー」

「水たまりフィロソフィー」

■人物
森下計くん(16)高校1年生。
安達未来ちゃん(16)高校1年生。

■本編
森下のMO「雨上がりの下校時刻。校庭で水たまりをじっと見つめる君がいた。また不思議なことを考えているのだろうか……」

森下「安達、今日は何してるんだ?」
未来「森下君。お疲れー」
森下「お疲れー」
未来「水たまり見てたんだよ」
森下「へえ。水たまり? 何か発見あった?」
未来「うん。水たまりって不思議なの!」
森下「え? なにが?」
未来「だって……水が平面的に集まっただけなのに、どうして、鏡のようになるのか。その構造、森下君は知ってる?」
森下「いや、わかんないけど。反射じゃないの?」
未来「ただの反射じゃないよ。地面にできた水たまりに空が映ってて、それを覗き込めば私の顔が見えててさ」
森下「まあ……」
未来「例えばね、もし鏡とかがなかった時代に生まれたことを想像してみてよ。その時、自分の存在がどうなっているのかなんてわからない、そんな時代に、水たまり覗いて、そこにいるのが自分だ! とかって、わかったりするものなのかな、って」
森下「なんかの学問か?」
未来「でも。そう考えると、水たまりと言う、構造、これは実は自分を映すものとしての機能を持ったものとして重要だったのではないか……そもそも自己存在の把握とはどこから生まれて来るのか……」
森下「俺は、ただ晴れたからよかったなくらいにしか考えてなかったけどな」
未来「それはそれ。これはこれ。気になるから図書室行こ」
森下「え、帰らないの?」
未来「私、気になるので」
森下「……じゃあ、俺も。行こうかな」
未来「え? 森下君も興味ありますか!? この現象!」
森下「な、なんか、謎を出されて答えがないのって、すげえ気持ち悪いから……」
未来「じゃあ、一緒に調べましょう。二人で取り組めば、効率アップです!」

森下のMO「楽しそうな君を見て、俺は思う。俺の場合、一番の謎は君なんだけどな、と。水たまりが青く輝いていた」

              (おしまい)

今後の執筆と制作の糧にしてまいりたいと思います。