見出し画像

「愛って一人じゃ生まれない」(モノローグドラマ006)

「愛って一人じゃ生まれない」
■人物

■本編
女「愛って一人じゃ生まれない」

女「私は君に愛されたかった」

女「君に愛して欲しかった……」

女「でも、あの頃の私は、愛して欲しいとは言えなかったし、君も私を『愛したい』とは言わなかった」

女「たぶん、私たちは、まだ《愛》を信じられるほど、大人じゃなかったんだ。笑ってしまうほど悲しいくらい、うぶな子供だった。求めあう気持ちより、恥じらいが勝っていたのかもしれない」

女「実際、好きとか恋とかっていう感情の、その先にある《愛》を考えられるほど余裕はなかった。だから、お互い、気持ちが伝わることもなく、何も始まらないままに、自然と別れることになっていったこと……。今ならわかる気がする」

女「そんな君との恋の結末を後悔したこともあったけど。大人になってみて、君とはそういう運命でよかったんだ、って思えるようになった」

女「綺麗な青春の思い出みたいな、心の中にキラキラとした《君》という存在をしまっておける場所があるってこと。それって、もしかしたら、人生において貴重な事なのかもしれないって、そう感じているよ」

女「大人になればなるほど、傷つくことが増えれていくし、傷がふえるほど、君との思い出が憎たらしいくらい輝いて見えるのは、ちょっと厄介だけどね」

女「そんな私は、あれから、いくつかの恋を重ねてきた。だけど、本当の愛にはまだ届かないでいる」

女「それでも、私はいつかできるかもしれない《愛する人》を、ちゃんと愛せる人になりたいって、心の底から思っている」

女「だって。愛って一人じゃ生まれないから」

              (おしまい)

今後の執筆と制作の糧にしてまいりたいと思います。