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【声劇台本】060「ツバメは自由な空を夢見るか」

ついに60本到達。次第に、少女漫画系胸キュン路線から色々な青春の形に変化しつつある作品の流れも感じていただけると面白いかと思います。

「ツバメは自由な空を夢見るか」

■人物
久志君(17)高校2年生。
野沢さん(17)高校2年生。

■本編
久志君のMO「ツバメのように大空をびゅーっと風を切って飛び回れたなら。このパシリの人生のしがらみから、少しは自由になれるだろうか」

野沢さん「またパシられてんの?」

久志君のMO「校舎の端の自販機で大量のペットボトルを抱えている僕を君は笑った」

野沢さん「ホント、久志は世のため人のため尽くすよね」

久志君のMO「そういわれて僕は君に対して急に怒りに似た感情を抱いた。完全に八つ当たりだった」

久志君「野沢には言われたくない。お前だって、いつも俺とおなじ身分だろ!」
野沢さん「全然違うし」
久志君「どこが?」
野沢さん「私の場合はついでに買ってあげてるの。だから。使われてるわけじゃない」
久志君「ぼ、僕だって! これは優しさだよ」
野沢さん「優しさの無駄遣いだよ、それ」
久志君「確かに、僕はバカかもしれない。でも。これが僕だから」
野沢さん「本当なイヤなんでしょ?」
久志君「は、はやく行かないと!」
野沢さん「図星なんだ!」
久志君「(語気荒く)う、うるさい!」

久志君のMO「僕はペットボトルを落としてしまった!」

野沢さん「(あきれて)私にキレてどうすんの?」
久志君「(平静を取り戻して)ごめん……」

久志君のMO「僕は慌てて地面に散らばったペットボトルを拾い集める」

野沢さん「私も言い過ぎた。でも、久志見てると、我慢してるのがわかるからイライラするんだよね」
久志君「ほっとけよ……」
野沢さん「ねえ。そこ屋根にツバメの巣あるの知ってる?」
久志君「ああ、最近、親が雛に餌運んでいるの、よく見る」
野沢さん「雛ツバメのためにさ、親ツバメは一生懸命餌を探して飛び回ってて自分が本当は自由に空を飛べることを忘れてるんだよね」
久志君「そういうもんだろ」
野沢さん「久志は親ツバメなのかもな」
久志君「どういうことだよ?」

久志君のMO「君はそれ以上何も言わずに自販機で飲み物を買い、去っていった。僕は拾い集めたペットボトルの泥を払って、君の言ったことを心の中で反芻してみた。僕が自由に空を飛べる日は来るのだろうか。頭上を親ツバメが駆け抜けていった」
           
(おしまい)

今後の執筆と制作の糧にしてまいりたいと思います。