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「遠くの空に、君を想う」(モノローグドラマ010)

「遠くの空に、君を想う」

感傷的な青年のドラマです。


■人物
青年

■本編
青年のMO「入道雲が山並みの様に連なる青空に飛行機雲がビューンと伸びていく。ああ、今年も夏はやってくるのか、と僕は思った……」

青年のMO「君と付き合って2年目の、遠距離恋愛が始まったのは、去年の夏のことだ。僕たちは、二人の関係が絶対的なものだって自信に満ち溢れていた。遠距離恋愛は難しいって世間では言われるけど、僕たちは通じ合っている、わかりあってる、だから、絶対に大丈夫だって、そう思っていた」

青年のMO「だから将来の夢を追いかけて海外留学を決めた君の背中を僕はためらいなく後押しした」

青年のMO「真夏の飛行機雲は君の夢に続いている。そんな予感さえした」

青年のMO「でも……」

青年のMO「会いたい気持ちは募るばかりなのに、連絡は時差で思うようにとれない。なんだか別世界を生きる人間同士になってしまったようで、苦しい日々が続いた」

青年のMO「それにお互いに日常が忙しくなってきて、僕も君も徐々に連絡が1日おき、2日おき、って……間隔が開いていった」

青年のMO「そうして、夏が終わり、秋が過ぎ、冬になる頃には僕たちは本当に別世界を生きる関わりのない人間同士になってしまった」

青年のMO「君との関係はこのまま消滅してしまうのか。言葉がなくてもつながりは保てるなんて幻想だったのか。言葉を交わしていないと、心の距離は遠くなっていくばかりで。それなのに、なんて切り出せば君にこの想いがちゃんと届くのか、確かな言葉が見つけだせない」

青年のMO「遠くなった心の距離はそう簡単には取り戻せない。結局、言葉を探しまわって、君を見失った僕は、ただ、遠くの空に君の面影を追いかけることしかできないのだった……」

              (おしまい)

今後の執筆と制作の糧にしてまいりたいと思います。