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雨降る午後は、窓辺でケーキを。【AIGRE DOUCE (目白)】

 タチ、タチ、タチ。その日の雨はそんな音がした。「あ〜、降るんだろうなぁ」と伺える曇り空の下を歩くのは嫌いじゃない。そういう日に入るカフェはもっといい。窓の外をじっとみて、道行く人が傘を差し広げるタイミングを窺ったり、その中でも好きな色を見つけたり。軽い雨の日は窓の近くでゆっくりするに限る。差し込んでくる光はいつもより白く見えるし、雫が地面に打ち付ける音は聞き心地よい。そういう楽しみ方を知っていれば、多少の悪天候も平常運転で乗り切ることができるよね。美味しいコーヒー、もしくはミルクティーがあれば尚良し。そういう風に工夫さえすれば気を落とさずにいられるのよね。少なくとも、本格的な梅雨入りをして、雨水が心まで浸水するまでは。

 水曜日、授業後の空き時間にマイガールと一緒に、最近気に入っている場所へ行った。お散歩コースにあるケーキ屋さん。そよ風が気持ちよくて、陽のひかりが穏やかな週末は、まれに途中下車して目白周辺の住宅地をぐるりと散歩するのが好きなの。

目白駅の改札の正面に横たわる道沿いを少し歩くと目に入る、バイオレット色の洋風な建物。初めて通りかかった時 私はまだヨーロッパに行ったことはなかったけれど、パリにはこういう建物がたくさんあるんだろうなぁと安易に想像することができた。一瞬にして知らないはずの街並みが頭の中に広がる。


♡このお店はこんなひとにオススメ♡

・どこでもドアがあれば、いますぐパリに行きたいひと

・パティスリーでお茶をするパリジェンヌ気分を味わいたいひと

・ただ甘いだけじゃ物足りない、素材の味香りが引き立つ極上スイーツをカジュアルに召し上がりたいひと


 ショーケースの中には宝石のようなケーキの数々。ホールケーキもパウンドケーキも、焼き菓子もなんでも揃ってる。まさにスイーツの宝庫。しかもよく見てみると、生地やクリーム、フルーツの組み合わせに一捻り加えてあるものばかり。思わず目移りしてしまってなかなか決められず、注文を聞きに来た店員さんを「ごめんなさい、もう少し...」と待たせてしまう。だけど許して、オンナノコのケーキ選びは本気なのだ。


パクリと最初の一口で、生地とクリームの優しい甘さが口いっぱいに広がり、「おっ、これは...。」と喜びが込み上げてくる。その味わいは食べ進めるに従ってどんどん深まっていく。不思議なことに決してうっとうしくはならないし、物足りなさも決して無い。『上品な味』とはまさにこのこと。その量で満悦になれる絶妙な甘さと量の法則があるのかもしれない。

 

茶色い焼き菓子も食べてみて。私のおすすめは「バナナココ」。サクッとしたパイ生地と、あまーいバナナ&ほろ苦いキャラメルの組み合わせが最高なんだから。ケーキ類にはもっぱわ紅茶派の私だけど、バナナココに関してはコーヒーとよく合う気がする。


 フランス滞在中はよく雨が降った。にわか雨っていうやつかな。晴れていても、突然強い雨が地面と肩を強く打って、あっという間にびしょぬれになる。傘など持っていない時はもう大変、近くのカフェや雑貨屋さんに逃げ込むしかない。すぐ止む時もあるけれど、時にはしばらく降り続くこともあるから厄介だ。雨がしばらく続きそうな時は、そのまま席についてケーキやショコラショーをお供に、窓をつたう雫を目で追いかける。だってほら、濡れて帰ると風邪を引いちゃうかもしれないしね。

厚い雨雲が空を覆い街全体を灰色に染めてしまうと、心の中に灯る明かりさえも消えかかってしまうことがある。だけど、色のない日も、甘いケーキとその上にちょこんと座ったフルーツがあれば輝きを増す。だから雨の日は、カフェにふらっと立ち寄って、自分を甘やかしていいと思うの。上質なお味のケーキは、天気も気分もどんよりした日に効果抜群。それにね、このケーキやさんのイートインスペースには、大きな窓があって、白いひかりを浴びながら、道行く人たちの色とりどりの傘と雫を眺められるんだ。



AIGRE DOUCE(エイグル ドゥース)

〒161-0033 東京都新宿区下落合3丁目22−13

※定休日:毎週 月曜日・火曜日






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