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かまぼこ屋さんまで。

12時からのランチミーティングのために急いで仕度をしていた。自転車で行けば5分ほどで着く場所。11時55分に家を出れば間に合う。

バタバタと仕度を終え、犬を部屋に入れて11時55分ぴったりにドアを開けた。 途端にざざぁ〜と激しい雨。マズい、遅れる。歩いたら10分はゆうにかかる。

仕方なしに自転車を諦めて家を出て、歩きながら「すみません、15分遅れます」とメッセージ。すぐに返事が来る。「大丈夫です。こちらも遅れています。」

はぁ、よかった。ついてるじゃーん、と思っていたら、50mぐらい先におばあちゃんが雨に打たれながらトボトボ歩いていた。

買い物カートを両手で押しながら、そこには買い物をしたビニール袋を下げている。どんどん強くなる雨に急ぐこともできずにトボトボ歩くおばあちゃん。

思わず急ぎ足で追いつき、傘でおばあちゃんを覆いながら、「おかあさん、どこまでいらっしゃるの?」と聞いていた。

「あらあら、すみません。ありがとう。あのね、あそこにかまぼこ屋さんがあるでしょ。あそこまで行くんです。」

かまぼこ屋さん、そこは私が行く方面。でも、目的地より50mぐらい先。

「そうなんですか?!ちょうどそちらまで行くんです。隣にカフェがあるんですけど、そこまで。偶然!」

そんな、嘘でもないけど、正しくもない言葉が口をついた。

「あらぁ〜、そうなの?大丈夫?急いでないの?」「大丈夫ですよ。ちょうど今、予定が遅れることになったんです。一緒に行きましょう!」「はぁ〜そうなの!それはそれは。助かるわぁ。偶然ねぇ。神様がちゃんとやってくれるのねぇ〜」「お会いできてよかったです。こんなに雨が強くなって来ちゃって」「雨の日は出歩くなって言われているのよ。これがないと歩けないから傘がさせないの」「そうなんですね。なおさらお会いできてよかったです」

そんな会話をしながら歩くこと10分。かまぼこ屋さんについたら、お母さんが「ここで大丈夫よ。この道を入って行けばうちだから。」見てみると、あと20mほどのところ。「あそこまで行きますよ。」「ううん、いいのいいの。悪いわ。ここでいいの。」

なんとなく、家の前までは来て欲しくない雰囲気を感じ、「じゃあ、ここで。この後すぐに家に入ってくださいね。では、また!」「ありがとう。本当に助かったわ。本当にありがとう。」

おばあちゃんを見送って、そのまま50m戻って目的地に。

普段はこんないいこと的なことはあまりしないというか、機会がないというか。でも、家を出た途端に雨が降り始めて、自転車に乗れずに歩くことになって、歩いていたらおばあちゃんがいて、目的地がたった50m違うだけだった。そんな、なんとなく偶然のような必然。

こういうタイミングを体験すると、やっぱりなんというか、理屈とか理論では説明できない何かがあるように思う。いいことをしたなぁ、というより、今日は必然の流れに乗ったなぁという感じ。

これを端的にいうと、「神様の仕業」なんだろうな。

#雨の日 #おばあちゃん #偶然と必然  #cakesコンテスト

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