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A Robot for Every Patient (医療費控除をRPAで効率化した話)

本記事は、UiPath ブログ発信チャレンジに参加しています。

1. 自己紹介

   社内RPA推進者
← 情シスの事務職(風)
← Javaアーキテクト(風)
← Oracle ERP 導入(兵隊)
← Oracle管理ツールの会社員
← OA機器メーカー社内SE

2018年5月から UiPath を使っています。最近はあまり職務でストゥーディオも触れず、Task Capture や Automation Hub を触ったり、情シスの雑用、あ、いや、本業に週に4日とか駆り出されたりしています。

情シスの事務職(風) → 社内RPA推進者への経緯はまたの機会に。

2. A Robot for Every Patient

2020年2月に、UiPath を使って医療費控除を楽にしましたという話です。
技術的に目新しさはありません。健保の医療費照会画面をスクレイピングしただけです。でも、技術は手段であって、大事なのはパッションであり、目的だと思うのです。(技術軽視ではないですよ)

一般には年度末である、2月や3月の休日の朝から晩までかかっていた確定申告書作成の中の目玉が1時間かそこらで終わり、いつもどおり家族との貴重な休日を楽しむことができた。RPAがもたらした新しい生活スタイルの一つでしょう。

社員誰もが皆使える、共通システムとして、健康保険組合サイトの操作は、学習と実益を兼ねた社内RPA研修の題材にも良いのではないでしょうか?

3. 医療費控除とは

​大雑把にいうと、自己負担10万円を超えた医療費が所得から控除されます。
この申告のために「医療費控除の明細書」作成が必要となります。

詳しくは、税理士または税務署へお問い合わせください。
所得税 No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)

4. 医療費控除の明細書の作り方

およそ3通りあります。
1. 医療機関の領収書を、確定申告作成コーナーのWeb画面に1行1行入力
家族が肩とか首が腰が痛くて、毎日整形外科にリハビリに行くとそれだけで毎日1明細です。現実的にやってられません。

2. Excelで医療機関・日付・金額等の一覧を領収書の内容を元に入力し、医療機関毎に集計
必要事項が揃っていれば自作フォーマットで大丈夫ですが、近年は確定申告作成コーナーにそのままアップロードできる Excel シートが用意されています。整形外科のリハビリなんかは同じ金額の日が多くコピペできるので、1行1行入力よりは楽ですが、領収書からExcelへの転記は苦痛です。

3. 健康保険組合の医療費通知を提出(平成29年(2017年)以降)
医療保険者から交付を受けた「医療費通知」を添付!!
転記いらなくなった!?
2016年までは、医療費通知は確定申告に使えませんと書いてありました。
2017年からは、医療費通知を確定申告に使えます!? 領収書の集計から解放される!

・・・と思いきや、そうは問屋がおろしません。
弊社の健康保険組合の医療費照会のページには、無慈悲な一言
  診療期間に選択できる最新月は3か月前のものとなります。
  (例:現在11月であれば、8月が最新データです。)
  データは毎月15日に更新します。

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(イメージです。実在する健康保険組合の画面とは関係ありません)

  つまり、
   2月15日であれは、11月が最新データです
   3月15日であれば、12月が最新データです

確定申告書の提出期間は、毎年2月16日~3月15日までの1か月間が原則で、それぞれの日付が土曜・日曜・国民の祝日・休日にあたる場合は、翌日(または翌々日)の月曜日が期限日になります。2020年3月15日は日曜なので、本来の期限は3月16日月曜です。

そうすると、1月から12月の医療費通知を納期内に提出するには、3月15日に医療費通知を取得して、当日か翌日に申告書を仕上げて、3月16日に申告!
ギリギリですね。何かあったらアウトですね。不明点があっても質問できる平日は1日ですね。税務署の人に質問できる休日の申告書作成会場も終わってますね。納期前日まで何もせずに待っているなんて、落ち着きませんね。
3月15日は日曜日ですが、健康保険組合のサイトで日曜日に医療費通知が作成されるかどうかもちょっと不安です。休日を避けて3月13日か16日に作成したりしないよね?

5. UiPath でスクレイピング

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医療費照会画面には、PDF ダウンロードや e-Tax 用データダウンロードというボタンも見えます。
これを開いているのは2月です。1~11月のPDF や 1~11月の e-Tax 用データがダウンロードできても、無用の長物です。このボタン何のためにつくったのかな?

嘆いていても仕方ないので、先ほどの、検索した一覧を UiPath でスクレイピングします。職業柄、表形式のページを見たら、スクレイピングしようかなと思いますよね。もちろん、利用規約を全文読みます。

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スクレイピングの詳細については、こんなところに素晴らしい資料が!私の駄文が恥ずかしくなってきました。奇遇ですね!なんと本日 2020/07/14 (火) 19:30 〜【オンライン】RPA勉強!RPALT UiPathトークvol.3復習編~ロボットを作ってみよう2~と銘打って懇切丁寧な解説! 当日まで参加者募集中!

あっという間に、1~11月の医療費一覧がExcelで出力できました。記事にするにあたって念のため動作確認しましたが、数百行程度のデータ量で改ページもないと本当に一瞬。うーん、今までの何年もの手入力は何だったんでしょう?
続いて手作業。小児医療助成分該当者を除きます。病院へ行くための通院費は自分で入力します。12月の医療費はデータがまだないので、仕方なく領収書から転記して、集計します。これで、転記の手間は前年比12分の1!
(※7月15日追記)仕上げに、確定申告作成コーナーにそのままアップロードできる医療費集計フォーム(iryouhi_form_v3.xlsx)の仕様(列の順など)に整形して、全体を1回でコピペ。

実際は12月データがないわけではないでしょう。どこで滞っているのか知りませんが、12月の医療費データが組合員のページに整形して表示されるのが3月15日。どんな事情か分かりませんが、こういうところがIT後進国だと感じます(勘違いならごめんなさい)。

皆さんが照会できる医療費は何日前のものですか?
コメント欄より回答お待ちしております。

6. 成果

2月や3月の休日の朝から晩までかかっていた医療費明細の作成が1時間かそこらで終わり、いつもどおり家族との時間を過ごせました。
スクレイピングですぐ出来ると確信していたので、納期に余裕をもって着手し、2月中に申告が終わったのは、精神的にとても清々しかったです。間違えられない作業、厳しい締切がある作業のストレス軽減はよくRPAの効果に挙げられますよね。

7. 悲報(朗報)

その後、2月27日、昨今の感染症の拡大状況に鑑み、令和元年分の申告期限は4月16日に延長されました。更に4月17日以降も「柔軟な取扱い」に・・・(お役所仕事というけど、やるときはやるな)。

結果論ですが、3月15日まで待っていれば、納期に1か月の余裕を持って、そのまま提出できる 1~12月の医療費通知を、PDF でも e-Tax 用データでも手に入れることができたことになります。

このスクレイピングは要らなかった。

・・・それでもいいんです。
それが僕には楽しかったから。
Learn&Grow!Enjoy, Enjoy, Enjoy!

8. 終わりに

RPAで1月~11月のデータ取得だけを省力化する、それは、決してベストな方法ではないと思います。
本来は、1月~12月のデータをせめて2月15日までに揃えてもらうか、逆に納期を初めから4月16日にしてもらって、納税者による加工の手間がなくなる方向で、社会の仕組みの側を変えたいものです。

会社の業務でもそうですが、現行の個人の手作業を、業務の見直しをしないでそのままチマチマ個人で自動化するのが、本当に最適解でしょうか?
前工程、後工程まで、広い視野をもって、業務プロセス改革を目指しましょう。

※記事の内容は、細心の注意を払い正確を期したものですが、記事を読んで行なった行為の全責任は読者に帰属します。税務申告に当たってご不明な点は税理士または税務署にご相談ください。

そんじゃーね!!




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