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ロックの冒険(11)

僕の名前は「ロック」。イソヒヨドリだよ。
森を目指してハシボソガラスのクロウと旅をすることにしたのさ。

翌日ワッグと別れたロックとクロウは、田園地帯をさらに川上に向けて進んでいった。
途中で枯れた木が立ち並ぶ林があった。
林の中に1本の枯れ木があり、その枝をチョコチョコと登っていく小さな鳥がいた。羽は白黒のストライプ、動きからしてキツツキの仲間だった。
「おーい、お疲れさん、君は何をしてるんだ!?」クロウが聞いてみた。
白黒のストライプの鳥は相変わらず、枝から枝へチョコチョコ動いていた。
「おーい、聞こえないのか?」クロウがもう一度聞いてみた。
「うん?」白黒ストライプの鳥がこっちを振り返った。
「何か用?」
「ここで何してるの?」ロックが聞いた。

白黒ストライプが枝から降りてきて2人そばに寄った。
「私はコゲラのピグーさ。君たちは?」
「僕はロックで、こいつはクロウ。2人で旅してる途中なんだ。ピグーは?」
「あそこの穴を見てよ。」
ロックとクロウは白く枯れた木の幹の小さな穴を見た。
「あそこに私の息子がいるんだ。もう飛べるようになったはずなんだが、外に出るのを怖がってなかなか穴から出てこようとしないんだ。
それで私は穴を出て、飛び移りやすい枝を探してたって訳さ。」
ピグーは穴に向かって叫んだ「おーい、怖くないから飛び出しておいで!隣の木のあの太い枝なら飛び移れるだろ?さあ、勇気を出して!」
その時、穴からピグーの息子がちょっとだけ顔を出した。まだあどけないコゲラの子どもだった。
ピグーの息子は、すぐに顔を引っ込めてしまった。

「やれやれ困ったもんだよ。」ピグーは"お手上げ"のポーズでクチバシを横に振った。
ロックが言った。「ピグー、僕が手伝ってみるよ。」
「本当かい?助かるよ。」
ロックは穴まで飛んでいき、ピグーの息子に言った。
「ねぇ君、大丈夫だよ。僕と一緒に飛んでみないか?」
「嫌だよ。怖いもん。地面に落ちたらどうするの?地面には猫とか怖い生き物がたくさんいるんでしょ?」
「心配ないよ。落ちないようにしてあげるから、隣の木の枝まで飛んでみようよ。」
ピグーの子どもは最初は怖がっていたが、ロックの心配ない、という言葉に安心したみたいだった。
「落ちないようにするって、どうやるのさ?」
ロックは笑顔を作ってこう言った。
「君が飛ぶとするでしょ?そのすぐ下で友だちのクロウと一緒に見張っているよ。もし君が落ちそうになったら、僕とクロウが君を捕まえて上の方に羽ばいて引っ張り上げる。そうすれば安心だろ?」

しばらく不安そうな顔をしていたピグーの子どもは、意を決したように穴の入り口で深呼吸した。」
「さあ、飛べ!」クロウが言った。しかしまだ飛べなかった。
「大丈夫だよ、さあ、飛んでみて!」今度はロックが励ました。
そして、、、、
ピグーの子どもは穴から飛び出した。初めて外の自由を手に入れた。
ピグーは、誇らしげに息子の姿を見ていた。

(次回に続く)

#小説 #冒険小説 #野鳥

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