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ロックの冒険(10)

僕の名前は「ロック」。イソヒヨドリだよ。
森を目指してハシボソガラスのクロウと旅をすることにしたのさ。

青の洞窟の入り口までやってきたワッグとロックは、その暗黒の穴に入っていくと思うと、怖気付いた。
ワッグはいつも以上にお尻をフリフリ、ロックも落ち着きなさげに羽繕いをしていた。
「おいロック、ここで逃げるなよ。」
「逃げたりしないよ。ワッグこそ震えてるんじゃないか。」
「そんなことはない。ロック行くぞ。」

2人は勇気を出して青の洞窟の中へ飛んでいった。
暗黒の中をどのくらい飛んだだろうか、前が見えないため2人は時々岩にぶつかりながら、とりあえず洞窟の冒険を続けた。
しばらく飛んだら前方に薄暗い光が見えてきた。
「とりあえずあの光のところまで行くぜ」ワッグが言った。
弱い光に向かって2人は飛んでいき、「その場所」に着いた。

そこは地底の中にある池だった。天井からポツポツと水が落ちている。その池が怪しい青い光を発していた。
「青の洞窟って、この池が中にあるからなんだね。」ロックは水面を眺めながら呟いた。
「だけどワッグ、ファフロツキーズなんか起きないよ。」
「そうだな、ここはただの洞窟、空から何か降ってきそうもない。ここには餌も無さそうだし、休憩してから、入り口の方に戻ろうぜ。」とワッグが言ったその時だった。

上の方は空はなくただの洞窟の天井なのに、茶色い泥のようなものが降ってきた。降ってきたというよりも、落ちてきたと言った方が正しかった。
茶色い泥は、次から次に落ちてきた。
「うわー、何だこれは?何が落ちてきてるんだ!?」
「ワッグ、あれを見て!」
ロックがクチバシで指した天井には、無数の黒い生き物がぶら下がって、2人をじっと見ていた。
ワッグとロックは、目を合わせて同時に叫んだ「コウモリだー!」
さっきから落ちてきている茶色い泥は、コウモリの糞だったのです。
その時洞窟の中で低く響く声が聞こえてきた。
「お前たちはどこから来た!ここは俺たちの棲み家だ。早く出て行かないと痛い目に合わせるぞ!」
声の後、天井にぶら下がっていた何百匹というコウモリが一斉に飛びたち、ロックとワッグに向かって襲いかかってきた。
「逃げろ、ロック!」
2人は懸命に羽ばたいた。後ろを見るとものすごい数のコウモリたちが追いかけてくる。
「やばい。急げ!」
必死にコウモリから逃げているうちに、外の光が少しずつ見えてきた。
「もうすぐだロック、急げ!」
そうしているうちにもコウモリの大群は2人との距離を縮めていった。
「もうすぐだ!」コウモリの大群が2人に追いつこうとした、まさにそのタイミングで2人は洞窟の外に出ることができた。

コウモリたちは、太陽の光の中で空中に散らばり、もうそれ以上ロックとワッグを追いかけてこようとはしなかった。
「おーい、お前たち大丈夫か?」その声はクロウだった。
「クロウ、待っててくれたんだね。」ロックが息を切らせながらクロウに話しかけた。
「それでお前たち、ファフロツキーズは起きたのか?」
ロックとワッグは、一瞬キョトンとした後、2人で笑い転げた。
「うん、洞窟には空がないのに、不思議な茶色の泥がたくさん降ってきたよ。」
ロックとワッグはずっと笑い続けた。

(次回に続く)

#小説 #冒険小説 #野鳥

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