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ロックの冒険(最終回)

僕の名前は「ロック」。イソヒヨドリだよ。
森を目指してハシボソガラスのクロウと旅をすることにしたのさ。

「ギヤー!」という苦しそうな声を出して女王ミニベットが羽をばたつかせた。
ロックやミニベットの手下たちが一斉に女王の方を見た。
そこでは、ハシボソガラスのクロウがミニベットの首に噛みついていた。
「クロウ、何をする?お前は私を裏切るのか⁉︎」ミニベットが苦しそうな息で毒づいた。
「ミニベット、お前の命令で生きていくなんてもう嫌なんだ。ロックとここまで一緒にここまで旅をしてきてよく分かった。
ロック!オレの正体を黙っていてすまなかった。早くローリーを呼んで魔法を解く言葉を教えてもらえ!」
グリュンやグロスビーたちは、ミニベットを守ろうと一斉にクロウへの攻撃を開始した。
集団で襲われたクロウは、黒い羽をむしり取られて、ボロボロになりつつあった。
それでもクロウはミニベットへ噛みついたままだ。
「ローリー、どこにいるの?」ロックが叫んだ。
「おい、あそこを見ろ!」トビのミランが遠くに一本だけ伸びている一本杉の方を指した。
そこには杉の木のほとんど上の細い枝にフクロウがいた。
「ローリー!」ロックが再び叫んだ。
「お前たち、大勢になったのう。それだけいれば大きな声になるだろう。これからわしが言う言葉を皆で一斉に叫ぶんじゃ。それが魔法を解く言葉じゃ。いいな!」
「分かった。」全員がうなずいた。
ローリーが叫んだ「魔法を解く言葉じゃ!」
『リーベ!!』
『リーベ!!』
ロックたち全員が一斉に叫んだ。
シュラー、テイリーとウミネコの仲間たち、ミラン、スターリング、バートン、ブルース、皆が声を合わせて叫んだ『リーベ!!』

それと同時にアオゲラとイカルがクロウへの攻撃を止めた。夢から醒めたような表情を浮かべていた。
魔法が解けて石にされたシュラーの仲間のモズたちや、スターリングの友だちのティットが鳥に戻った。
魔法は完全に解けたようだった。
クロウはほっとしたように、ミニベットへの噛みつきを緩めた。
その隙にミニベットは「ピリリー」と鳴きながら逃げ出した。首は血まみれだった。

森に平和が戻った。ムクドリのスターリングはティットを大切なものを扱うように抱いた。シュラーは石から元の姿に戻った仲間たちと喜び合った。
ローリーは、いつのまにかどこかに消えていた。
その輪から離れた場所に、一人で寂しそうに様子を見ている鳥がいた。クロウだった。
「クロウ。。」ロックが話しかけた。
「ロック、お前にどう謝ればいいんだ。元々オレはミニベットの手下で、、」
「いいんだよ、クロウ。もう忘れよう。ミニベットはどこかへ消えたんだ。」
「ロック、、」
「さあクロウ、一緒に海辺に帰ろう。」
「そうだ、皆一緒に帰るんだ。皆一緒にだぞ。」ウミネコのテイリーが言った。
「じゃあお前たちとはここでお別れだな。」シュラーが言った。
「また会えるさ。冬になったら海に遊びにおいでよ。」
「ロック、クロウ、じゃあな。楽しかったよ。」

外は太陽が地平線に沈もうとしていた。
「さあ、いくぞ!」テイリーが先頭になって大空へ飛び出した。それに続いて鳥たちが飛び立った。
クロウは最後まで飛ぶのを迷っていた。
「さあクロウ、僕らと一緒に帰るんだよ。」
意を決したようにクロウもロックと一緒に飛び立った。
地平線の夕陽には海へ向かうたくさんの鳥たちのシルエットが浮かんでいた。

(完)

#小説 #冒険小説 #野鳥

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